アサヒGHDが英蒸留大手の東アフリカ事業を買収、株価下落の要因は?
2025年12月20日 17:59
●アサヒGHDが英蒸留酒大手の東アフリカ事業を買収
飲料メーカー大手のアサヒGHDが、英蒸留酒大手のディアジオ社から東アフリカ事業(EABLなど)を買収すると発表した。
【こちらも】日本生命によるMDV買収、その狙いは?
取得価格は30億ドル(約4654億円)で、ケニアなどの東アフリカ市場の人口増加と拡大する経済への期待がある。
買収発表後の18日のアサヒGHDの株価は、7.5%の大幅下落となった。
少子高齢化や若者のアルコール離れで国内アルコール市場は先細りになる中、新興市場の開拓は株価上昇要因になるはずだが、なぜ市場からは歓迎されないのだろうか?
●サーバーアタックによる財政への懸念
アサヒGHDでは、2025年9月末にランサムウェアによると見られるサイバー攻撃を受け、システム障害が発生。国内の生産・受注がストップし、大きな損害が出た。
2026年2月に正常化することを目指しているが、直接損害額は90億円と見られている。
アサヒプロマネジメント事業をアクセンチュアに売却し、20億円のコスト削減を見込んでいるが、財政への懸念は根強い。
●メリットも大きいが不安が上回る
アサヒGHDにとって、東アフリカ(ケニア・ウガンダ・タンザニア)などで強いブランド力や販売ネットワークを持つEABLの買収は、成長余地を感じさせる。
今回の買収は初の現地支配プラットホームであり、アジア・欧州・中南米に続き、アフリカも海外事業のポートフォリオに加えることができる。
ディアジオブランドを現地で供給・流通し、新製品の開発の可能性も期待できる。
期待感も大きいが、それ以上に不安要素が大きい。
約4654億円の巨額買収であり、他の酒類販売業と比べて割高との指摘もある。買収資金を手元資金と借入金で賄うため、2026年12月に予定されている自社株買いの延期と財政悪化による株主還元への悪影響も懸念されている。
それに東アフリカという地域は、スーダンやコンゴ民主共和国東部などの紛争地域を抱えており、東アフリカGDPの40%を占める経済大国ケニアでも、2025年7月に大規模な反政府デモが発生するなど、地政学リスクが高い。
リスクに似合う投資なのかという疑問点も、市場からは歓迎されていないと見られる。
財政不安を払しょくする強いメッセージが必要だろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)