収益回復傾向も、日本国土開発の投資妙味に一抹の「?」を覚えざるをえない理由
2025年10月31日 14:29
日本国土開発(1887、東証プライム市場、以下日本国土)。重機土工事(重機を使って地形を整える工事。インフラなどの基盤工事向け)に特色、とされる。
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そんな日本国土だが、歴史を振り返ると波乱万丈。
1951年(昭和26年)。当時の吉田茂内閣下で、土木工事の機械化による施工・普及施策が打ち出された。これを受け、実業家:高木陸郎氏による国策会社として産声をあげた。
そして1957年に持ち味:重機土工事を決定づける、「リッパ工法」を打ち出した。この工法は、「土木工事作業の現場でブルドーザーが後部に取り付けられた器具(リッパ)で1本~複数本の爪を使い、(軟)岩の掘削」を行う工法。米国から輸入したリッパを使用、東京電力横須賀火力発電所の工事で実践された。それまでは、「発破」を使った掘削が行われていた。その後も、例えば水中ブルドーザーなども導入している。
そんな「国策企業」として歩みを始めた日本国土は、1964年に東証第1部に上場。がバブル崩壊に伴う「受注激減」「不動産価格下落」を背景に1999年1月、会社更生法の手続きの開始を決定。2003年3月、上場廃止。2019年に東証1部に再上場という、厳しいステージを踏む事態を潜っている。
日本国土を覗こうと思ったのは、ここにきてようやく収益動向に「明るさ」が見られ始めたからだ。再上場後の推移は、2019年5月期の「7%営業減益、32円配」以降こんな具合だった。「1.9%増益、8円減配28円配」-「28.9%減益、26円配」-「24.7%減益」-「43.6%減益」-「43.6%減益」-「94億400万円の損失、22円配」。対して前5月期は「23億1800万円の営業利益」に転じ、今5月期は「6.2%増収(1310億円)、51.0%増益(35億円)」計画。
前期の決算資料をチェックした。こう記されている。
<土木事業>: 工事代金の回収懸念から貸倒引当金の計上、大型案件で突貫工事等による工事費の増加、追加契約協議の難航に伴う損失計上等でセグメント損失45億5000万円。
<建築事業>: 売上高は前期比15.4%減も、利益は不採算工事竣工で25億8200万円の営業利益を計上。
<関連事業>: 販売用不動産の売却により、前期比187.2%のセグメント増益。
いまいち、釈然としない部分が残る。
本稿作成中の株価は、500円台前半。予想税引き後配当利回り3.2%水準。増益転換とはいえ年初来の株価動向は、高値578円(10月27日)-安値432円。あえて投資妙味云々とするには二の足。時価の予想PBR0.61倍が果たして材料視できるだろうか・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る)