増加基調に転じた大学発ベンチャー企業に期待

2020年1月31日 15:00

 昨年12月26日・27日と、ソレイジア・ファーマ(がん領域主眼の創薬ベンチャー)の株価が(2日間で10%余り)大幅に続伸した。「エディトフォースと、がん領域での医薬品の共同研究・開発契約を締結した」というニュースがキッカケだった。

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 久方ぶりに大学発ベンチャー企業の存在を確認した。エディトフォースは九州大学発のベンチャー企業(2015年設立)。ゲノム編集・RNA(リボ核酸)編集技術をその持ち味としている。

 経済産業省の調査では、大学発ベンチャーの設立が100社を超えたのは1995年度。1000社の大台に乗ったのは2004年度。08年度には1807社に達したがその後、低迷基調。がここにきて回復を見せ、18年度には2278社となっている。

 知られる様に、大学発ベンチャーが上場企業となったケースも少なくない。知られるところでは「サンバイオ(慶応大発)」「CYBERDYNE(筑波大発)」「ユーグレナ(東大発)」「ペプチドリーム(同)」などがある。

 例えばユーグレナの創業者社長:出雲充氏は「大学時代に訪れたバングラデシュで目の当たりにした深刻な貧困が契機だった。僕はミドリムシで世界を救うことを決めた」としている。昨年2月21日現在の大学発ベンチャーの上場企業数は64社。時価総額は約2400億円(経産省)。

 大学発ベンチャー企業が再び増加傾向に転じた。また、大手企業と大学との連携も活発化してきている。

 前者では「東大発ベンチャー:トラストスミス/AI自動搬送ロボット開発」や、イノフィス(東京理科大発/装着型ロボット開発実用化)が「新製品の開発に向け、35億3000万円を(ブラザー工業等向けの)第三者割当増資で調達した」と伝えられた。大手企業が「連携効果」を意識し始めた証しといえる。

 後者では、「大阪大学と中外製薬が免疫学にかかわる包括連携協約(中外が10年間に10億円を拠出、研究成果の第一選択権を取得)」「京都大学iPS細胞研究所と武田薬品工業が、iPS細胞技術を用いた創薬・再生医療の共同研究契約を締結」等々がある。

 大学発ベンチャーとの協業や産学連携は、今後ますます求められよう。経産省では「大学発ベンチャーは大学に潜在する研究成果を掘り起こし新市場の創出を目指す、イノベーションの担い手」とする。

 それには大学発ベンチャーを育成する「体制」整備が、大学側にも求められる。「知的財産を研究者にライセンスとして供与する」というのが、これまでの主たる支援の枠組みだった。

 だがここにきて、「ギャップファンド(大学が研究者に対し試作品開発等に対し資金を提供、基礎研究と事業化間の空白を埋める)」を導入する大学も出始めている。

 大学発ベンチャーを活かした先駆けともいえそうな存在を知った。磁性材料:フェライト(磁力が強く電気を通しづらい)の事業化でその存在感を広めてきたTDK。そもそも創業者の斎藤憲三氏が東京工業大学教授の加藤与五郎氏、武井武両氏が開発したフェライトの事業化の為に立ち上げた企業である。社名の頭「T」は、東京工業大学を意味している。

 日本経済の今後を占う上で「欧米に比べて低い」とされる起業率の上昇が求められる。その為にも大学発ベンチャーを生み出す体制整備、産学連携の土壌づくりの促進策が求められる。再び増勢傾向を見せ始めたいまこそ、その好機といえるのではないか。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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