穂発芽を起こさないよう小麦を遺伝子改良 岡山大などの研究

2019年8月1日 13:05

 収穫前の麦が雨に濡れるなどして発芽してしまうことを穂発芽という。岡山大学と農業・食品産業技術総合研究機構の研究グループは、この穂発芽を起こしにくい遺伝子改良をされたコムギを生み出すことに成功した。

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 穂発芽は農家にとって頭の痛い問題である。北欧などもそうなのだが、日本のようにコムギの収穫期に雨が多い地域においては、穂発芽はとくに起こりやすい。近いところで言うと、2016年、北海道で総額140億円にのぼる損害を出したという例がある。

 ちなみに、種を利用する穀物であれば起こるため、日本人に馴染みの深いところで言えば稲も穂発芽を起こすことがある。トウモロコシにも同様のことが言える。ただ、コムギの場合とくに休眠が長い(≒穂発芽に耐性がある)品種が、何十万というコムギの品種の中でもほとんどないという問題があった。

 今回の研究では、ゲノム編集のために用いられる微生物をコムギのゲノムの中に組み込み、遺伝子の配列を変えることが試みられた。コムギは7対の染色体からなる3組のゲノムを持つ生物なのだが、この結果として、3つの遺伝子の全てが変更された新しいコムギを得ることができた。

 この新しいコムギを交配させていき、1年2カ月をかけて8種類の新しい品種を獲得した。そしてその全てを育成して種子を収穫したところ、3つの遺伝子全てが変更されたコムギは、他のコムギに比べて明瞭に発芽が遅く、穂発芽を起こしにくいということが明らかになった。なお、大きさなど、その他の性質にはさしたる違いが見られなかったという。

 今回の研究は、今後、迅速で効率的な品種改良技術の確立に利用できる可能性があるという。なお、研究の詳細は、Cell Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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