小惑星微粒子の年代分析に成功 「はやぶさ」「イトカワ」再び
2018年8月26日 10:26
小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰着してから8年、ふたたびその名が表舞台へと躍り出た。大阪大学大学院理学研究科の寺田健太郎教授、東京大学大気海洋研究所の佐野有司教授、高畑直人助教らの研究グループが小惑星イトカワから採取した微粒子の年代分析に成功、長きにわたって謎であった地球近傍小惑星の歴史に一石を投じた。
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研究グループは50ミクロン程度の超微粒子中に稀に含まれる数ミクロンサイズのリン酸塩鉱物に着目。ウランと鉛の精密同位体分析(U-Pb年代分析)を行った。その結果2つの放射壊変系を組み合わせることにより、リン酸塩鉱物が約46億年前に結晶化し、約15億年前に他の天体の衝突によりショック変成を受けたことを明らかにした。特に結晶化の年代はイトカワ母天体の熱変成年代と解釈され、地球近傍小惑星の歴史に世界で初めて具体的な数値をもたらすこととなった。この分析に使用されたイトカワ微粒子は4粒。まさに宇宙のロマンである。
小惑星イトカワは地球に接近する軌道を持つ地球近傍小惑星の中でも、一時的に地球の軌道の内側に入り込むアポロ群に分類される。地球に非常に近づくことがあるため、潜在的に脅威となる小惑星(PHA:Potentially Hazardous Asteroid)としても分類されている。これまで地球への脅威となるPHAの起源や進化については計算から得られたものしかなく、物質科学的な検証はなされていなかった。今回の結果により地球近傍小惑星ならびにPHAの進化に対して絶対的な年代および年代学的な制約を付したことは、人類にとって制約なしの知的好奇心の材料となったのだ。
また今回の結果により、小惑星イトカワは2013年にロシアのチェリャビンスクに落下したタイプの隕石と関連があることがわかっている。地球に落下してくる隕石の大半のショック変成が42億年前であるのに対し、この隕石は約15億年前と報告されており今回の結果と類似するためだ。
2018年6月、「はやぶさ」の後継機としてJAXAにより開発、打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」が同じく地球近傍小惑星であるリュウグウに到着し話題となった。「はやぶさ」と同じくサンプルの採取と地球への帰還が計画されている。帰還予定は2020年末。持ち帰る微粒子に期待が高まる。(記事:秦・記事一覧を見る)