ハダニは捕食者と遭遇すると寄主植物の選択が変わる、京大の研究

2018年7月9日 11:16

 カンザワハダニは捕食者に出会った事がある場合、より多く卵を産める寄主植物を選べるようになる。以上の知見を、京都大学農学研究科の村瀬葵修士課程学生(現・ウィーン国立音楽大学生)が明らかにした。

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 カンザワハダニはダニ目ハダニ科に属する、植物に寄生するダニの一種である。イチゴやナスなどにも寄生するため、農業の世界では害虫として知られる。葉の表面に立体的な網を張って、葉の汁を吸って生活する。寄食の対象は幅が広く、葉の劣化や捕食者の増加によって、歩行、あるいは風に乗って分散し、危機を回避する。

 研究は、カンザワハダニを用いた室内実験によって行われた。

 動物が捕食者の匂いなどを学習して、2度目以降の遭遇時にはより効率的な回避行動を選択する、というのはごく一般に見られる学習の機能である。しかし、近年研究上注目されているのはそういうことではなく、捕食者を相手に学習した成果が、捕食者のいないところでどのように動物の行動を変化させるか、という問題だ。

 実験は、カンザワハダニがたくさん卵を産めるマメと、あまり産めないアジサイを用意し、1枚ずつシャーレ上に置くことで行われた。なお、葉の周りは濡れた脱脂綿で覆われており、カンザワハダニが逃げ出すことはできない。

 さて、その装置に、捕食者を経験している個体と経験していない個体を置き、24時間後にどちらの葉の上に網を張っているかを観察した。結果、捕食者を経験している個体の方が、マメを選ぶ個体が多いということが分かったという。

 今後の可能性としては、ハダニ以外の生物でも同様の学習が見られるのかどうか、多くの動物種において研究することが考えられるという。

 なお、研究の詳細は、Scientific Reportsにおいて発表されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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