SpaceX、機密任務USSF-432を打ち上げ 米宇宙軍のRシリーズ第4弾
2026年11月8日 18:07
SpaceXは2026年11月6日、米宇宙軍の機密任務「USSF-432」をFalcon 9で打ち上げた。公開文書では「R-4」とも呼ばれる任務で、8月に始まったRシリーズの4回目に当たる。
搭載衛星は同社の政府向け衛星プラットフォーム「Starshield」を用いているとみられる。宇宙軍は任務の詳細を公表しておらず、衛星群と宇宙からのセンシング・目標追跡計画との関連は、専門家による分析として伝えられている。
■Falcon 9が離陸、第1段は8回目の飛行
Falcon 9 Block 5は、カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地の第4東発射施設(SLC-4E)から離陸した。打ち上げ時刻は11月6日午後4時48分(太平洋標準時)で、日本時間では11月7日午前9時48分に当たる。
Space.comの集計によると、今回は2026年のFalcon 9として119回目の打ち上げだった。Falcon Heavyの3回とStarshipの試験飛行3回を含めると、SpaceX全体では125回目となる。
第1段ブースターB1095は8回目の飛行を終え、太平洋上の無人着陸船「Of Course I Still Love You」に着陸した。このブースターは、これまでにGPS III-8と6回のStarlink衛星打ち上げを担当していた。
Space.comによると、打ち上げ配信は離陸から約10分後、第1段の着陸を終えたところで終了した。宇宙軍は搭載物の具体的な用途や軌道などを明らかにしていない。
■約3カ月で4回、Rシリーズの衛星群
Spaceflight Nowによると、Rシリーズは8月16日(協定世界時)のUSSF-366(R-1)から始まり、9月10日のUSSF-153(R-2)、9月26日のUSSF-385(R-3)が続いた。今回までの約83日間に、同じヴァンデンバーグの発射施設から4回打ち上げられたことになる。
同メディアは、先行する各打ち上げについて、軌道カタログに23機ずつの衛星が登録されたと報じている。3回分を合わせると69機となる。
衛星情報をまとめる専門サイトGunter’s Space Pageの11月8日時点の掲載情報では、USSF-432にも23機の衛星が対応付けられている。同サイトが掲載するRシリーズ4回分の衛星数は計92機となる。
Spaceflight Nowは、宇宙物体の追跡で知られる天文学者ジョナサン・マクダウェル氏の分析として、Rシリーズを宇宙軍のSpace Based Sensing and Targeting(SBST)に関連付けている。SBSTは宇宙からのセンシングや目標追跡などを扱う取得・開発分野で、空中目標の探知と通信網の整備が進められている。
SpaceXはStarshieldについて、Starlinkの技術、製造設備、打ち上げ基盤を活用した国家安全保障用途の衛星網と説明している。主な用途は地球観測、安全な世界規模の通信、顧客の機器を衛星に搭載するホステッドペイロードであり、政府の任務に応じたセンサーや機器を組み込める設計だという。
■宇宙から空中目標を追うSB-AMTI
SBSTの取り組みの一つが、宇宙から空中の移動目標を探知・追跡するSpace-Based Airborne Moving Target Indicator(SB-AMTI)だ。宇宙軍は、航空機や巡航ミサイルなどの脅威を継続的に捉え、統合部隊に世界規模の状況把握能力を提供することを目指している。
宇宙軍の説明では、SB-AMTIは宇宙のセンサー、高速で安全な通信、地上のデータ処理を組み合わせる仕組みとなる。航空機による監視が難しい空域にも観測範囲を広げ、既存のセンサーを補完する構想だ。
宇宙システム軍団は5月29日、SpaceXに対する41億6000万ドル(約6570億円)の契約を発表した。初期能力を整備し、2028年までに衛星群を配備する計画で、複数の企業を組み合わせて能力を拡張する方針を示している。
SBSTの取得責任者代行を務めるライアン・フレイジャー大佐は、宇宙の能力を活用して、脅威のある空域でも継続的な戦場認識を提供する考えを示した。開発と統合作業を直ちに開始し、迅速な配備に向けた節目を満たすとしている。
米軍は監視・指揮統制の体制も更新している。地上の移動目標監視を担ったE-8C Joint STARSは2023年に運用を終え、最後の機体は同年11月15日にロビンス空軍基地を離れた。宇宙軍では2026年7月31日に第77監視飛行隊が発足し、宇宙からの目標追跡に向けた組織整備も進んでいる。
■センシング、通信、打ち上げで大型契約
SpaceXが獲得した契約は、衛星による観測とデータ輸送の双方に及ぶ。宇宙システム軍団は5月26日、Space Data Network(SDN)の通信基盤「SDN Backbone」について、22億9000万ドル(約3620億円)の固定価格契約を発表した。3日後に発表されたSB-AMTI契約との合計は64億5000万ドル(約1兆200億円)となる。
SDN Backboneは、多数の低軌道衛星を光通信で結び、世界規模で大容量・低遅延のデータ輸送を担う構想だ。センサー、指揮系統、兵器システムを結ぶ通信基盤として、2027年末までに完全に運用可能な試作能力を納入することが求められている。
両契約にはOther Transaction Authority(OTA)に基づく調達方式が使われた。宇宙システム軍団は、いずれも競争的に選定した契約と説明している。SB-AMTIでは複数の供給企業を確保し、追加契約を通じて能力と供給基盤を広げる方針だ。
さらに7月29日には、国家安全保障宇宙打ち上げ(NSSL)フェーズ3・レーン1の下で、計16億ドル(約2530億円)の2件のタスクオーダーがSpaceXに与えられた。SBSTを支援するFalcon 9の18回の打ち上げを対象とし、すべてヴァンデンバーグから2027年末までに実施する予定だ。5月の2契約と合わせた公表額は80億5000万ドル(約1兆2700億円)となる。
事業への期待は売上高予測にも表れている。宇宙産業調査会社Quilty Spaceは、2026年のStarshield関連売上高を32億ドル(約5060億円)と予測している。同社によると、この推計は通信サービスと専用衛星群の双方を対象とし、500件を超える契約をモデル化した分析に基づく。
■上場後の事業展開と再利用の経済性
SpaceXは5月20日に米証券取引委員会へS-1登録届出書を提出し、6月11日にIPOの公開価格を1株135ドルと発表した。ロイターによると、6月12日にナスダックへ上場し、公開価格に基づく評価額は約1兆7700億ドル(約280兆円)だった。
上場時の投資家対応については、ブルームバーグが6月、引受主幹事側が中国本土と香港の顧客からの注文を受け付けないよう指示したと報じた。ロイターが伝えた同報道によると、規制やコンプライアンスへの懸念を理由とする措置だったという。
打ち上げ基盤では、第1段の再利用が費用を抑える役割を担う。SpaceXは投資家向け資料で、第1段がロケット製造費の大きな部分を占め、その再利用によって、使い切り型と比べた追加の打ち上げ費用を引き下げていると説明している。
専門メディアAdvanced Televisionが紹介したブライアン・バッソン氏の試算では、新造ブースターの製造費は約3000万ドル(約47億4000万円)とされる。この額を8回の飛行に単純配分すると1回当たり約375万ドル(約5億9300万円)となる。これは第1段の製造費を配分した計算で、打ち上げ全体には整備、回収、第2段の製造、運用などの費用も加わる。
B1095が担当したGPS III-8は、4月21日にケープカナベラル宇宙軍施設から打ち上げられたGPS IIIシリーズ最後の衛星SV10で、「Hedy Lamarr」と名付けられている。今回のUSSF-432では、その機体が機密任務に再投入された。商用衛星と政府向け任務で打ち上げ基盤を共用する運用が、衛星網の継続的な整備を支えている。
元記事: SpaceX Locks In $9B Defense Year: Space Force USSF-432 Orbits Fourth Starshield Radar Batch