パーキンソン病女性でアミロイド蓄積多く 230例の剖検研究で性差

2026年11月8日 18:07

メイヨー・クリニックなどの研究チームは、パーキンソン病患者230人の剖検で、女性は男性よりアルツハイマー病に関連するアミロイドの蓄積が多かったと報告した。年齢や遺伝的リスク因子などを調整した解析でも、女性が高負荷群に入るオッズは男性の約2倍だった。複数の神経変性疾患に関わる病理が重なる仕組みを、性差に着目して調べる手掛かりとなる。

■生前の診察と死後の脳組織を照合

研究論文は2026年7月24日にオンライン公開され、学術誌「Journal of Parkinson's Disease」の同年9月号に掲載された。メイヨー・クリニックは11月6日、研究の概要と治療研究への展望を紹介した。

研究に使われたのは、米アリゾナ州のバナー・サンヘルス研究所が運営する老化・神経変性疾患研究「AZSAND」と、脳・遺体提供プログラム「BBDP」の資料だ。対象は2008~2023年に神経病理学的検査を受け、剖検でパーキンソン病が確認された女性74人、男性156人で、生前の臨床評価と死後の組織所見を照合した。

BBDPは1987年に始まった。運営研究者が2015年に公表した報告では、累計登録者は3100人超、保存された脳は1600例超だった。米32州と15カ国の400人超の研究者に試料などを提供し、350本超の論文を支えていた。死後から採取までの時間の中央値は3時間で、迅速な組織採取を重視している。

今回の研究に参加したエリカ・ドライバー=ダンクリー医師は、メイヨー・クリニックの運動障害部門長を務める。脳提供時の診断は一つでも、剖検では複数の神経変性疾患に関わる病理が見つかることがあり、今回注目したのはその重なり方の性差だと説明している。

剖検では、脳内の沈着物を顕微鏡で直接調べ、その量や分布を評価できる。生存患者では、アミロイドPETや脳脊髄液検査などのバイオマーカーも、アルツハイマー病に関わる病理を捉える手段となっている。

■女性の56.8%が高負荷群に

アミロイドβが脳内に沈着した老人斑は、アルツハイマー病を特徴づける病変の一つだ。研究チームは、5領域の沈着密度をそれぞれ0~3点で評価して合計した総プラークスコアと、神経突起斑の密度を評価するCERADスコアなどを使った。

総プラークスコアの平均は、15点満点で女性6.5点、男性4.9点だった(p=0.045)。CERADの神経突起斑密度スコアも、3点満点で女性1.7点、男性1.3点と、女性で高かった(p=0.035)。

総プラークスコア5点以上を高負荷群とすると、女性では74人中42人、56.8%が該当した。男性は156人中62人、39.7%で、群間差は統計的に有意だった(p=0.015)。

論文が報告した調整後オッズ比は2.18で、95%信頼区間は1.17~4.06だった(p=0.014)。死亡時年齢、APOE ε4の保有状況、レビー小体密度を含めた解析表でも、女性のオッズ比は2.10、95%信頼区間は1.04~4.22と、有意な関連が示された(p=0.038)。オッズは、該当する確率を該当しない確率で割った値である。

認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の148例でも、女性でアミロイド蓄積が多かった。総プラークスコアは女性7.6点、男性5.5点、高負荷群の割合はそれぞれ63.4%、43.9%だった。研究チームは、認知症を伴う段階での病理の性差に注目している。

■認知機能と病理の関係を探る

タウタンパク質の異常な蓄積による神経原線維変化も、アルツハイマー病の代表的な病変だ。今回の研究では、タウ病理の程度や分布に統計的に有意な性差は認められなかった。

認知症の診断割合や、全般的な認知機能を測るMMSEなどにも有意な性差はなかった。一方、聴覚性言語学習検査(AVLT)の総学習得点は、女性30.9点、男性24.4点と女性で高かった(p=0.003)。アルツハイマー病の併存診断の割合は女性32.4%、男性30.1%だった。

ドライバー=ダンクリー医師は、より大きな研究で、プラーク量に関連する認知機能の差が捉えられる可能性を挙げている。論文では、タウ病理に性差がなかったことや、認知予備能、代償的な働きなどを、結果を理解するための仮説として示した。

認知予備能とは、脳に病的変化があっても認知機能を保つ能力を捉える概念だ。ヤーコブ・スターンらは1990年代から、教育歴や職業経験と認知症の臨床症状との関係を研究してきた。神経ネットワークを効率よく使うことや、別のネットワークを動員することが、その働きを考える枠組みとなっている。

PDDは、パーキンソン病の経過中に認知機能が低下し、日常生活に支障を来す状態を指す。認知症の頻度は対象者の年齢や追跡期間によって異なり、過去のノルウェーの研究では累積約78%と報告された。2024年に「Neurology」に掲載された別の研究では、米国の二つの集団で、発症から10年時点の推定確率は評価方法や集団により9~27%だった。

■遺伝とホルモンから性差を考える

APOEは、脂質の運搬などに関わるアポリポタンパク質Eをつくる遺伝子だ。脳では主に星状膠細胞が産生し、アミロイドβの除去にも関わる。ε4という対立遺伝子は、遅発性アルツハイマー病の主要な遺伝的リスク因子であり、細胞や動物を用いた研究ではアミロイドβの除去低下との関係が調べられている。

今回の剖検研究では、APOE ε4の保有状況を統計的に調整した後も、女性と高アミロイド負荷との関連が残った。研究チームは、既知の遺伝的リスクに加えて、性差に関わる生物学的要因を調べる必要があるとしている。

スタンフォード大学医学部が2026年4月に公開した解説では、APOE ε4に伴うアルツハイマー病リスクの上昇が、女性で強く現れるという研究を紹介している。同大学のマイケル・グレイシャス教授は、APOE遺伝子近傍のエストロゲン応答に関わる領域が、タンパク質の産生量に影響する可能性を、初期的な研究課題として説明した。

閉経に伴うホルモン変化や、免疫機能、遺伝的背景は、神経変性疾患の性差を探る研究テーマとなっている。今回観察されたアミロイド蓄積の差についても、こうした要因を組み合わせて検討することが今後の課題となる。

■関連研究ではタウ蓄積の速度にも注目

メイヨー・クリニックによると、米国でアルツハイマー病を抱える人の約3分の2は女性だ。平均寿命に加え、遺伝やホルモンなどの要因が研究されている。

同クリニックのイライジャ・マック研究員、ケジャル・カンタルチ医師らは2026年3月、「JAMA Network Open」で別の研究を公表した。アルツハイマー病の画像研究事業ADNIの415人を解析し、脳脊髄液の検査で異常なαシヌクレインが検出された女性では、タウPETで測るタウ蓄積が速く進む関連を報告した。

論文では、αシヌクレイン検査が陽性だった女性の推定タウ蓄積速度が、陽性だった男性の20倍超だったと記している。この研究の対象は認知機能が正常な人から認知障害のある人までで、パーキンソン病患者は除外されていた。複数の病理の重なりと性差を考える、別の角度からの知見となる。

カンタルチ医師は、こうした性差への理解が、対象をより適切に定めた臨床試験の設計に役立つ可能性を示している。剖検と生存患者の画像研究を組み合わせることで、病理の量だけでなく、時間的な変化も調べられる。

■抗アミロイド薬を使う研究への展望

メイヨー・クリニックは今回の研究について、アミロイド病理が多いPDD患者の一部に抗アミロイド薬が有益か、将来検討する手掛かりになると説明している。PDDの治療研究では、認知症の背景にある複数の病理を踏まえて対象者を選ぶことが重要になる。

抗アミロイドβ抗体薬には、レカネマブ(国内製品名レケンビ)とドナネマブ(ケサンラ)がある。アミロイドβの凝集体に結合し、その除去を促す薬剤だ。両剤は日本、米国、EU、英国で承認されており、日本での効能・効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」である。EUと英国では、APOE ε4が0コピーまたは1コピーの患者を対象としている。

費用は投与量や期間で変わる。米国レケンビ公式サイトの2026年7月時点の価格例では、体重165ポンドの患者に2週間ごとに静脈内投与する薬剤費は年2万8270.32ドル(約447万円)とされる。イーライリリーの2025年7月の公表資料では、ケサンラの米国卸売取得価格は350ミリグラム入り1瓶704.35ドル(約11万1000円)だった。検査や投与に伴う費用、患者の自己負担額は別途決まる。

有効性の臨床的な大きさを巡っては議論がある。コクランが2026年4月に公表した、17試験・計2万342人を対象とするレビューは、抗アミロイド抗体薬による認知機能低下や認知症重症度への平均的な効果を、臨床的に意味のある水準に達しないと評価した。

安全性では、脳浮腫などのARIA-E、脳微小出血や脳表ヘモジデリン沈着などのARIA-Hを含むアミロイド関連画像異常(ARIA)が重要になる。両剤の米国処方情報には枠付き警告があり、特にAPOE ε4を2コピー持つ患者ではARIAのリスクが高い。国内でも、投与前後のMRI検査などによる安全管理が求められている。

韓国の延世大学は、アミロイド病理を併存するパーキンソン病患者にレカネマブを投与する試験を登録している。2026年4月22日更新の登録情報では、開始予定は同年5月、予定登録数は60人で、アミロイドPET陽性かつ軽度認知障害または早期認知症の患者を対象に、18カ月間の投与によるアミロイド沈着量の変化などを調べる計画だ。

■多様な集団と生存患者での検証へ

今回の剖検研究の対象者は、主にアリゾナ州の退職者地域から募集された。2015年のプログラム報告では、募集地域の住民は白人が90%超を占め、教育水準が高く、中~高所得層が中心という特徴が示されている。今回の結果を広く理解するには、異なる背景を持つ集団での再現が重要になる。

研究チームは、認知機能別に分けた解析の人数が限られることや、測定していない要因の影響を考慮し切れないことも課題に挙げた。生存患者をアミロイドPETで追跡する研究は、蓄積の進み方と認知機能の関係を調べる次の手段となる。

ドライバー=ダンクリー医師は、大規模な臨床病理学研究による確認と、性差の背景にある生物学的な仕組みの解明を求めている。今回の知見は、性別と混合病理を考慮した研究設計を進め、将来の治療対象をより細かく検討するための基盤となる。

元記事: Women With Parkinson’s Are Twice as Likely to Have Heavy Alzheimer’s Brain Deposits, Mayo Autopsy Study Finds

関連記事

最新記事