中国Ceres-2、初の軌道投入に成功―初号機失敗から約9カ月半で復帰

2026年11月8日 18:05

中国の民間ロケット企業Galactic Energy(星河動力)は2026年11月7日、Ceres-2(谷神星二号)Y3の打ち上げに成功した。同社によると、4基の衛星を高度535kmの太陽同期軌道へ投入した。1月17日の初号機失敗から約9カ月半を経て、同型機が初めて軌道投入を達成した。

打ち上げは酒泉衛星発射センターの95A発射場から、北京時間7日7時37分、日本時間同日8時37分に実施された。協定世界時では6日23時37分に当たる。太陽同期軌道は、衛星が同じ地域をおおむね同じ地方太陽時に通過する軌道で、地球観測に適している。

打ち上げ情報データベースのSpace Launch Nowも今回の成功を記録している。2026年11月8日時点で公開されているCeres-2の飛行記録は、1月の失敗と今回の成功の2回である。

■海洋・気象観測から宇宙物体の監視まで

搭載されたのは、観瀾試験星、雲遥一号28星、中北大学一号、鈞天一号06Aの4基だ。海洋や大気の観測、大学による地球観測技術の実証、宇宙空間の監視という異なる用途の衛星が相乗りした。

青島日報によると、観瀾試験星は崂山実験室が全体設計と利用を担い、上海衛星工程研究所などと共同開発した海洋観測衛星である。Ka帯とKu帯の2周波に対応する合成開口レーダー高度計を搭載し、昼夜や天候を問わず全球の海面高度を観測する計画だ。

中国新聞社によると、雲遥一号28星は天津の雲遥宇航が自ら全体設計・開発を担った商業気象衛星で、「金山世界号」とも呼ばれる。衛星測位システムの電波を利用するGNSS掩蔽観測と反射波観測を一体化した装置を搭載し、大気、電離圏、海洋、陸域のデータを取得する。数値予報や海上輸送向けの気象サービスなどへの利用を見込む。

GNSS掩蔽観測は、測位衛星からの電波が大気を通過する際の遅延や屈折を測り、高度ごとの気温や水蒸気などを推定する技術だ。昼夜や雲の影響を受けにくく、気象観測気球などを補完できる。GNSS反射波観測では、海面や地表で反射した測位信号を解析し、その表面の状態を調べる。

中北大学によると、中北大学一号は「太行星座」の技術実証衛星で、静止画像と動画を取得する2系統の光学撮像装置を備える。衛星上での画像処理やデータ選別にも対応する。同大学は山西省太原市にあり、兵器工業の教育を起源として、電子計測や微小電気機械システムなどの研究を進めている。

新華社によると、鈞天一号06Aは鈞天航宇と星図測控が共同開発した宇宙状況把握衛星で、「星眼」星座の初号衛星に当たる。広い視野を持つ光学カメラで衛星や宇宙ごみなどを観測し、軌道の把握や衝突リスクの評価を支援する。36氪の企業情報では、北京に拠点を置く鈞天航宇は2021年設立で、衛星の低コスト化や標準化を進めている。

■Ceres-1から運搬能力を拡大

2018年設立のGalactic Energyは、北京を拠点とする商業打ち上げ企業だ。Ceres-2は同社の小型ロケットCeres-1を発展させた機種で、固体推進薬を使う3段の上に液体推進薬の上段を組み合わせる4段構成を採用した。

固体ロケットは燃料と酸化剤を混ぜて固めた推進薬を燃焼させる。構造を簡素にしやすい一方、点火後の燃焼制御が難しいため、精密な軌道投入には制御しやすい液体上段が役立つ。Galactic EnergyはCeres-2の地上試験で、軌道制御用エンジンの長時間燃焼と複数回の始動を検証したと発表している。

2026年11月時点の同社公表資料では、Ceres-2の打ち上げ時質量は約100トンで、運搬能力は高度500kmの太陽同期軌道へ1.3トン、同高度の低軌道へ1.6トンである。IT之家によると、衛星を覆うフェアリングは直径2.9mと3.35mを選択できる。

Ceres-1について同社が公表した高度500kmの太陽同期軌道への運搬能力は300kgで、Ceres-2はその約4.3倍に当たる。Ceres-1は2020年11月に初飛行し、2026年11月までに20回を超える軌道投入成功を重ねてきた。Ceres-2は、この運用経験をより重い衛星や複数衛星の打ち上げへ広げる機種となる。

■初号機の故障原因はノズル部品の支持構造

Ceres-2の初号機Y1は、2026年1月17日に酒泉から打ち上げられ、飛行中の異常で任務に失敗した。同日には長征3Bの打ち上げも失敗しており、中国の宇宙輸送で2件の失敗が相次いだ。

Galactic Energyが6月15日に公表した調査結果では、原因は第1段エンジンの分割式スロート部材後部を支える構造の設計余裕不足だった。燃焼中に後部が移動し、前部との間に高温ガスの通り道が形成された。ガスによって部材の背面が焼損し、スロートの構造破損からノズルの破壊に至ったという。

スロートはノズルの最も狭い部分で、高温の燃焼ガスを受けるため、耐熱材料による保護が重要になる。JAXAの固体ロケットに関する技術資料でも、一般的な燃焼室内のガス温度は約3000℃とされ、スロートに炭素・炭素複合材などの耐熱材料を用いる例が示されている。

Galactic Energyによると、故障の仕組みは地上試験とシミュレーションで再現され、改善策の有効性を地上燃焼試験で確認した。同社は設計、生産、試験、打ち上げの各工程で品質向上を進め、復帰飛行に向けてエンジンの信頼性を高める一連の試験を実施したと説明している。今回の軌道投入成功は、改良後の機体による飛行実績となった。

■競合機と再使用開発の動向

Ceres-2は使い捨て式の機体で、中国国内では捷龍三号、快舟十一号、CAS Spaceの力箭一号などの固体ロケットと同じ商業打ち上げ市場に位置する。中国航天科技集団の公表値では、捷龍三号は高度500kmの太陽同期軌道へ1.5トンを運べ、Ceres-2の1.3トンを約15%上回る。捷龍三号も直径2.9mと3.35mのフェアリングを備える。

より大型の機体では、第1段の回収と再使用が開発の焦点となっている。SpaceXのFalcon 9は第1段を回収して繰り返し使用しており、同社公表の最大運搬能力は低軌道へ22.8トンである。小型衛星向けのElectronを運用するRocket Labは、2023年に回収方針を見直し、ヘリコプターによる空中回収から着水後の船舶回収へ移行した。

Galactic Energyも、液体ロケットPallas-1(智神星一号)で再使用技術の開発を進めている。同社によると、2026年9月1日の初飛行で所定の軌道に到達した。初飛行では第1段の回収を行わず、後続の飛行で再突入制御や減速、海上・陸上での回収を段階的に検証する方針だ。

中国の他社でも開発が続く。朱雀三号は2025年12月3日の初飛行で軌道到達を達成し、第1段の回収は失敗したが、21世紀経済報道によると、2026年8月19日の2回目の飛行では軌道投入と第1段の陸上着陸に成功した。一方、天龍三号は2026年4月3日の初飛行で軌道投入に失敗した。

Ceres-2の運搬能力はメーカーが公表する仕様であり、実際の打ち上げでは軌道高度や傾斜角、搭載方法などが運べる質量を左右する。新型機の商業運用を評価するうえでは、今後の飛行実績に加え、打ち上げ日程の履行、衛星との結合作業、異常時の対応も判断材料になる。

■衛星の大型化と商業打ち上げ需要

Galactic Energyの顧客には、気象衛星を運用する雲遥宇航や、衛星IoT網「天啓」を展開する国電高科などがある。衛星の大型化や星座の拡張は、従来より運搬能力の大きいロケットへの需要につながる。

証券日報によると、国電高科の呂強董事長は2026年6月、天啓の第2期計画で衛星1基の質量を50kgから360kgへ増やす方針を示した。約7.2倍の大型化となり、2028年の星座完成を計画する。こうした衛星を複数まとめて運ぶ需要は、Ceres-2が狙う市場の一つとなる。

気象衛星データの利用も進んでいる。中国気象局によると、商業小型衛星のデータは2024年末に同局の総合気象観測システムへ入り、業務利用が始まった。2025年4月には、数値予報で同化する掩蔽観測データに天目一号と雲遥一号が寄与していると公表した。雲遥宇航は90基で構成する気象衛星網の整備を計画している。

中国全体では、2025年に92回の宇宙打ち上げが実施された。21世紀経済報道によると、CAS Spaceの楊毅強董事長は2026年2月、同年の全国打ち上げ回数を約140回と予測した。92回からは約52%の増加に相当する。また証券時報は4月、研究機関の予測として、2026年の商業打ち上げが60回を超え、民間ロケットによる打ち上げも30回を超えるとの見通しを報じた。

人民日報は2023年時点で中国の商業宇宙企業が400社を超えると報じている。中国新聞社が紹介した「中国商業航天産業発展報告(2025)」では、2025年の業界資金調達額は186億元(約4410億円)で前年比32%増だった。国金証券の2026年2月の情報整理では、打ち上げ企業5社が上場に向けた手続きを進めていた。

中国国家航天局は2025年11月に公表した2025~2027年の行動計画で、商業宇宙を国家の宇宙開発全体の枠組みに組み込んだ。研究・試験施設の開放や政府調達の拡大、再使用ロケットなどの開発を支援する方針で、Ceres-2もこうした市場拡大の中で運用実績を積むことになる。

■国際取引と衛星データに関わる制度

国際顧客が中国の打ち上げサービスを利用する際には、搭載する衛星や部品に適用される輸出管理が関わる。米国の国際武器取引規則(ITAR)は、中国向けの防衛関連品・サービスについて原則として許可を拒否する方針を定めている。商用衛星や関連部品には輸出管理規則(EAR)の対象となるものもあり、規制分類や仕向地、用途に応じた確認が必要になる。

中国の衛星事業者からデータを調達する場合は、中国の情報活動やデータ管理に関する法令も関係する。2017年6月27日公布の国家情報法は、第7条で組織と国民に法に従った情報活動への支援・協力と秘密保持を求め、第14条で情報機関が関係機関、組織、国民に必要な協力を要求できると定める。第8条は、情報活動を法に従って行い、人権や個人・組織の合法的権益を保護することを規定している。

データセキュリティ法第35条では、公安機関や国家安全機関が国家安全の維持や犯罪捜査のためにデータを取得する際、厳格な承認手続きを経て法に従うことと、関係する組織・個人の協力を定めている。2026年11月時点のサイバーセキュリティ法も、重要情報インフラの運営者が中国国内の運営で収集・生成した個人情報と重要データの国内保存を求め、国外提供には安全評価などの条件を設けている。衛星データの取引では、こうした法令の適用とともに、データの種類、処理・保存場所、契約上の取り扱いを確認することが実務上の論点となる。

元記事: Galactic Energy Ceres-2 Rocket: First Confirmed Orbit; China’s Intelligence Law Claims Every Byte

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