AI設計がんワクチンEVX-01、併用試験で奏効率75% SITCで新たな免疫解析
2026年11月8日 18:05
デンマークのEvaxion A/Sは2026年11月6日、個別化がんワクチン候補「EVX-01」の第2相試験から、新たな免疫解析結果を公表した。同社によると、切除不能な進行メラノーマ(悪性黒色腫)へのペムブロリズマブ併用で客観的奏効率75%を示し、単剤投与による延長試験に参加した6人では、3年追跡で奏効が持続した。
■16人の併用試験と6人の単剤延長
EVX-01は、患者ごとの腫瘍と免疫の特徴に合わせて設計する治療用のペプチドワクチン候補である。今回の試験では、免疫チェックポイント阻害薬による治療歴がない、切除不能なステージIIIまたはステージIVのメラノーマ患者を対象とした。
Evaxionの公表資料によると、登録患者は17人で、EVX-01の投与を受けて有効性解析に含まれたのは16人だった。ワクチンの製造期間中はMSDの抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(日本での製品名はキイトルーダ)を投与し、12週目からEVX-01を追加した。
2年追跡の結果、画像評価基準RECIST 1.1に基づく客観的奏効が16人中12人で確認され、奏効率は75%だった。内訳は完全奏効4人、部分奏効8人で、奏効した12人のうち11人、約92%が2年時点でも奏効を維持した。標的病変の縮小は16人中15人でみられた。
続く1年間の延長試験には6人が参加し、ペムブロリズマブを併用せず、EVX-01の追加接種を受けた。同社によると、この6人全員が延長期間を通じて奏効を維持し、腫瘍の進行は観察されなかった。延長試験のデータ集計日は2026年4月27日で、追跡期間の中央値は39.5カ月だった。
■AIが患者ごとの標的を選ぶ仕組み
EVX-01が狙うのは、がん細胞の遺伝子変異に由来する「ネオアンチゲン」と呼ばれる抗原だ。タンパク質の配列を変える変異から生じたペプチドの一部は、免疫系ががん細胞を見分ける手掛かりになる。
T細胞が標的を認識するには、ペプチドがHLA(ヒト白血球抗原)分子に結合し、細胞表面に提示される過程が重要になる。HLAには多様な型があり、提示されやすいペプチドも型によって変わる。このため、患者の腫瘍にどのような変異があるかに加え、その患者の免疫系が認識しやすい標的を選ぶことが設計上の課題となる。
Evaxionの「AI-Immunology」は、腫瘍や正常組織に相当する血液試料のDNA・RNA解析などを基に、患者固有の標的候補を評価する。同社の説明では、変異の発現、抗原提示、T細胞応答などの過程をモデル化し、EVX-01に組み込むペプチドを選定する。今回の試験用ワクチンには、患者ごとに7〜10個のネオアンチゲンが選ばれた。
同社のSITC発表資料によると、試験で調べた118個のワクチン標的のうち105個、89%で特異的なT細胞応答が検出された。また、予測スコアが高い標的ほど強いT細胞応答を示す正の相関があり、スピアマンの順位相関係数は0.38、p値は0.001未満だった。患者ごとの標的選定を、投与後の免疫測定で評価する結果となる。
■SITCで示された新たな免疫解析
今回の発表は、ワクチン標的に反応するT細胞の量や持続性に加え、末梢血の免疫細胞集団や血清タンパク質の変化を調べたものだ。Evaxionの研究チームは、治療中に採取した試料を時系列で解析し、併用療法に伴う免疫応答を詳しく調べた。
SITCの発表資料では、12人の試料を用いた解析で、体外での長期間の増殖培養を経ずにネオアンチゲン特異的T細胞の応答を検出した。CD4陽性T細胞の応答が中心で、CD8陽性T細胞の応答も半数の患者にみられた。さらに、標的に反応するCD4陽性T細胞には、エフェクターメモリーT細胞などの特徴を持つ細胞が多く含まれていた。
免疫細胞集団にも変化がみられた。ペムブロリズマブ単独投与後の12週目と、EVX-01の初期接種を終えた30週目を比べると、制御性T細胞の割合が低下し、成熟したナチュラルキラー(NK)細胞の割合が上昇したと研究チームは報告した。
血清中の92種類のタンパク質を調べた解析では、可溶性PD-1とCXCL9に有意な経時変化がみられた。研究チームは、これらの血清タンパク質の変化には主にペムブロリズマブが関与した可能性を示している。標的特異的なT細胞応答と、治療中の免疫環境の変化を併せて捉えるデータである。
■学会発表の積み重ねと開発競争
EVX-01の2年データは、2025年10月にベルリンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のミニ口頭発表で報告された。3年追跡の臨床・免疫データは、2026年10月24日にマドリードのESMOでポスター発表され、今回のSITCでは追加の免疫解析が示された。
SITC第41回年次総会は11月4〜8日、米アリゾナ州フェニックスのフェニックス・コンベンションセンターで開催された。Evaxionの口頭発表は演題番号502、セッション105bに採択され、同社のシニアサイエンティスト、Mads Lausen氏が担当した。
口頭発表のセッションは現地時間11月6日12時30分〜13時30分、会場301BCで設定された。関連ポスターの発表枠は11月7日12時30分〜13時30分と18時40分〜20時10分だった。同じ学会では、ダナ・ファーバーがん研究所のCatherine J. Wu氏が、個別化がんワクチンの発展をテーマとするRichard V. Smalley記念賞講演を行った。
関連分野では、ModernaとMSDがmRNAを用いる個別化ネオアンチゲン療法「mRNA-4157(V940)」を共同開発している。両社は2026年8月、完全切除後の高リスクメラノーマを対象とする第3相試験で、ペムブロリズマブへの追加により無再発生存期間などが改善したと発表した。術後の再発予防を調べるこの試験と、切除不能な病変を持つ患者を対象とするEVX-01試験では、治療目的と評価項目が異なる。
■上乗せ効果の評価と次の開発段階
今回のEVX-01試験は、非盲検・単群の第2相試験である。少数例で得られた奏効と免疫応答の持続性は、次の開発を検討する材料となる。ペムブロリズマブにワクチンを追加する効果の評価には、無作為化比較試験が必要となる。
過去のペムブロリズマブ単独投与の成績では、第3相KEYNOTE-006試験の2015年の中間解析で、投与間隔別の奏効率が32.9%と33.7%だった。2019年の5年追跡報告では、両投与群を合わせた奏効率は42%となった。こうした試験間の比較では、患者背景や追跡期間、評価条件をそろえて解釈する必要がある。
Evaxionは、今後のEVX-01試験を提携先と進める方針を示している。同社は2026年8月の第2四半期決算発表時点で、手元資金により2027年後半まで事業を継続できる見通しを示した。第3四半期の事業報告と決算発表は2026年11月19日に予定している。
個別化がんワクチンの開発では、患者の腫瘍情報から標的を選び、その標的への免疫応答と臨床経過を追うことが重要になる。EVX-01で得られた標的ごとの応答、免疫細胞の特徴、単剤延長中の経過は、標的選定の予測と治療後の観察を結び付ける材料となる。
元記事: AI Cancer Vaccine Achieves 75% Melanoma Response and 3-Year Remission: Evaxion Data at SITC 2026