ニコンのカメラ販売、7〜9月は28.6%減―精機事業が伸び通期利益予想は上方修正

2026年11月8日 14:18

ニコンが11月5日に発表した2027年3月期第2四半期決算で、2026年7〜9月のレンズ交換式デジタルカメラ販売は15万台となった。前年同期比28.6%減で、2023年4月以降の四半期では最も少ない。一方、精機事業などの改善を受け、通期営業利益予想は従来の110億円から165億円へ引き上げられた。

映像事業では中国を中心とする需要減退とメモリ価格上昇が重荷となる一方、精機事業ではメモリ製造向け露光装置の引き合いやサービス売上が伸びている。半導体メモリを巡る市場の変化が、ニコンの異なる事業にそれぞれ影響している。

■カメラ販売は減少、全社では営業黒字に

2026年4〜9月のカメラ本体販売は36万台で、前年同期の48万台から25%減少した。交換レンズも67万本から53万本へ14万本減った。映像事業の売上収益は前年同期比10.9%減の1293億円、営業利益は46.5%減の82億円だった。

1293億円はカメラ本体だけでなく、交換レンズなどを含む映像事業全体の売上収益である。同事業の営業利益率は前年同期の10.6%から6.4%へ低下した。

ニコンは、主に中国での需要減退による販売減少と、メモリなどの価格高騰を減収減益の要因に挙げた。米国の関税還付や為替効果、経費抑制は利益を下支えし、営業利益は8月時点の上期予想45億円を上回った。

全社の上期売上収益は前年同期比6.9%増の3346億円、営業利益は89億円となり、前年同期の48億円の営業赤字から改善した。7〜9月の営業利益は98億円だった。上期営業損益は8月時点で55億円の赤字を見込んでいたが、精機事業のサービス売上の上振れ、経費の削減・繰延、米国関税還付などで計画を上回った。

■メモリ需要の拡大が露光装置事業を支える

精機事業の上期売上収益は前年同期比29.7%増の906億円、営業利益は72億円だった。前年同期も30億円の営業黒字で、今期は増収増益となった。

精機事業は、半導体向けに加えてディスプレー製造向けの露光装置も手掛ける。ニコンによると、上期はディスプレー用露光装置と半導体用ArFドライ露光装置の販売増、サービス売上の増加が業績を押し上げた。サービス売上の上振れなどにより、8月時点の利益予想も上回った。

11月5日の決算説明会でニコンは、HBMと呼ばれる広帯域メモリを中心とした需要拡大に伴い、ウエハー投入量やArFによる露光工程が増え、ArFドライ露光装置への需要が高まっていると説明した。ArF液浸露光装置への引き合いも強く、新たな顧客からも装置評価を含む商談があるという。

AIサーバー向けメモリの需要拡大は、その製造に使う設備への投資にもつながる。ニコンにとって、メモリは映像事業では調達コストを左右する部品であり、精機事業では顧客の設備需要を生む製品分野でもある。

■カメラメーカーに広がるメモリ高騰の影響

デジタルカメラでは、画像処理中のデータを一時的に保持するメモリや、撮影データを保存する記録媒体が必要になる。DRAMは一時記憶に、NANDフラッシュはSDカードやCFexpressカードなどの保存用メモリに使われる。半導体メモリの市況は、カメラ本体や記録媒体のコストにも関わる。

市場調査会社TrendForceは9月30日の発表で、2026年10〜12月の契約価格について、一般的なDRAMは前四半期比10〜15%、NANDフラッシュは15〜20%上昇すると予測した。同社によると、AI向け需要を背景に供給各社がサーバー向け製品を優先している。エンタープライズSSDの2026年の需要は、記憶容量ベースで前年比80%超増えると見込む。

ニコンは決算説明会で、メモリ価格上昇による映像事業の通期営業利益への悪影響を「二桁億円台後半」と説明した。この想定は従来から変更していない。来期分を含めて必要な調達量はおおむね確保できる見通しとする一方、調達価格の先行きには不透明感があるとしている。

他社も影響を公表している。富士フイルムホールディングスは8月、半導体メモリとIT関連部材の価格高騰による2027年3月期の営業利益への悪影響を、全社で従来の110億円から250億円へ拡大した。イメージング部門の影響額は60億円から140億円へ引き上げた。

ブルームバーグの5月の報道によると、ソニーはデジタルカメラなどを含むエレクトロニクス事業で、対策後のメモリ高騰による通期営業利益への影響を約300億円と見込んだ。キヤノンも2026年第1四半期の説明会で、メモリコストの年間影響見通しを従来計画から503億円増やし、そのうちカメラ分を約200億円と説明している。

専門メディアCamera Jabberは、富士フイルムのドイツ向け価格改定として、9月1日から対象カメラ5機種が100〜500ユーロ(約1万7700~8万8500円)値上がりすると報じた。部品高騰への対応には、調達方法や設計の見直し、経費削減、販売価格の改定などがある。各社の製品構成や調達条件、対応策によって、利益や販売価格への影響も変わる。

■国内では10月23日発売のZ5IIC

2026年11月7日時点で、ニコンが同年に投入した新型ミラーレスカメラはZ5IICの1機種となっている。Digital Camera Worldによると、2025年はZ5IIとZR、2024年はZ6IIIとZ50II、2023年はZ8とZfを投入していた。

Z5IICは、電子ビューファインダーを省き、背面モニターでの撮影を中心に据えたフルサイズミラーレスカメラだ。ニコンは、スマートフォンからカメラへ移行する人など、初めての利用者に向けた扱いやすさを訴求する。凹凸の少ない上面形状に、ブラックとシルバーの2色を用意した。

日本では9月28日に発表され、10月23日に発売された。国内価格はオープンプライスである。米国での発表時の希望小売価格はボディー1399.95ドル(約22万1000円)、NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3付きキット1699.95ドル(約26万9000円)で、2025年4月発売時のZ5IIのボディー価格1699.95ドル(約26万9000円)より低い設定となった。

有効2450万画素の裏面照射型フルサイズCMOSセンサーと、上位機にも使われる画像処理エンジンEXPEED 7を搭載する。被写体検出は10種類に対応し、ニコンで初めて「魚」を追加した。魚の検出は、被写体検出設定で「魚」を選んだ場合に利用できる。

撮影モードダイヤルには、ニコンのフルサイズミラーレス機として初めてシーンモードを搭載した。ポートレート、料理、夜景など15種類のシーンに応じて設定を自動調整できる。ボディー内手ブレ補正は、同社公表値で画面中央7.5段、周辺6.0段で、CIPA2024規格に基づきNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sの望遠端、NORMALモードで測定した値だ。

動画は最大4K/60pに対応し、その際の撮像範囲はDXフォーマットのAPS-Cサイズにクロップされる。ファインダーを備えるZ5IIと、モニター中心のZ5IICでは、構え方や撮影時の操作感も異なる。購入時には、画質や自動撮影機能に加え、自分の撮り方に合う形状かどうかも判断材料になる。

■利益率の低下と市場全体の動き

映像事業の営業利益率は、各期の公表資料で2023年3月期18.6%、2024年3月期16.6%、2025年3月期14.0%と低下してきた。2026年3月期は、直近の事業区分に組み替えた数値で約5.9%だった。2027年3月期予想の売上収益2800億円、営業利益130億円から計算すると、利益率は約4.6%となる。

ニコンは2026年3月期について、低価格帯製品の販売比率上昇や競争激化に伴う販促費増加、関税の影響などを減益要因として説明している。同年3月期にはMRMCの株式譲渡契約に関連する32億円の一時費用も発生し、研究開発費の増加も利益を押し下げた。

カメラ映像機器工業会(CIPA)が2月に公表した2026年の出荷見通しは、レンズ交換式デジタルカメラ全体で前年比2.6%減の682万台だった。一方、レンズ一体型デジタルカメラは13.6%増の277万台を見込んでいた。

11月2日に公表されたCIPAの1〜9月統計では、ミラーレスカメラの総出荷は417万9988台で前年同期比7.9%減だった。レンズ一体型は193万1853台で15.4%増となった。カメラ市場の中でも、製品カテゴリーによって動きが分かれている。

■通期販売目標は80万台、下期は新製品で顧客開拓

ニコンは2027年3月期のカメラ本体販売目標を、8月時点の85万台から80万台へ引き下げた。前期実績は91万台だった。交換レンズも125万本から120万本へ下方修正した。

全社の通期売上収益予想は従来の7320億円から7220億円へ100億円引き下げた一方、営業利益予想は50%増の165億円へ引き上げた。利益予想の引き上げには精機、ヘルスケア、インダストリーの各事業が寄与する。下期の為替前提は1ドル155円、1ユーロ180円としている。

ニコンは中国を中心とする市場の弱含みを踏まえて販売計画を見直したが、下期はZ5IICなどの新製品で幅広い利用者の獲得を進め、前年同期比ではカメラ販売台数の増加を見込む。上期実績36万台と通期目標80万台との差は44万台で、下期の販売動向が目標達成を左右する。

今後の製品では、情報サイトNikon Rumorsが11月5日、FCCに登録されたワイヤレスリモートコントローラーN2416の資料に描かれたカメラを、未発表のAPS-C機「Z70」だと報じた。11月7日時点でニコンから製品発表や発売日の案内は出ておらず、今後のラインアップに関する情報は同社の正式発表を待つことになる。

メモリ市況についてTrendForceは7月時点で、2027年もDRAMは供給制約と価格上昇が続く一方、NANDフラッシュは2027年下期に需給が緩和する可能性を示していた。カメラを選ぶ際には、発売済み製品の機能と実売価格を比較しながら、撮影目的に合う機種を見極めることが基本となる。

元記事: Nikon Camera Sales Slide to Three-Year Low; AI Memory Demand Lifts Semiconductor Revenue

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