米クアルコム、調整後売上高は予想超え―利益見通しとスマホ不振が重荷
2026年11月7日 22:36
米半導体大手クアルコムは米国時間11月4日、2026年度第4四半期と通期の決算を発表した。調整後売上高は市場予想を上回ったものの、主力のスマートフォン向け半導体は前年同期比26%の減収となった。翌5日の同社株価は9.5%下落した。
同社は2027年度にデータセンター事業の売上拡大を見込む一方、次四半期の調整後利益予想の中央値は市場予想をわずかに下回った。スマートフォン事業の動向と、事業の多角化が収益にどう表れるかが焦点となる。
■調整後売上高は予想超え、次四半期の利益見通しに慎重さ
9月27日に終了した第4四半期の売上高は、米国会計基準(GAAP)ベースで前年同期比8%減の103億2200万ドル(約1兆6300億円)だった。非GAAPベースの調整後売上高は7%減の104億4200万ドル(約1兆6500億円)、調整後1株当たり利益は28%減の2.17ドルとなった。
ロイターによると、調整後売上高は市場予想の101億1000万ドル(約1兆6000億円)を約3.3%上回った。調整後1株当たり利益も、予想の2.16ドルを上回っている。
2027年度第1四半期に当たる12月期の売上高見通しは104億〜112億ドル(約1兆6400億~1兆7700億円)となった。ロイターが伝えたLSEG集計の市場予想104億8000万ドル(約1兆6600億円)に対し、会社予想の中央値は108億ドル(約1兆7100億円)と高い。一方、調整後1株当たり利益は2.15〜2.35ドルで、中央値の2.25ドルは市場予想の2.27ドルを下回る。
半導体部門のQCTは、税引き前利益率を第4四半期の24%から20〜22%へ低下すると見込む。Benzingaによると、Barclaysは11月5日、投資判断「アンダーウエート」を維持し、目標株価を180ドルから150ドルに引き下げた。Kiplingerによると、同日は米国株全体も売られ、ナスダック総合指数は5.5%下落した。
■スマホ向け売上高は26%減、メモリー価格上昇が影響
第4四半期のスマートフォン向け半導体売上高は51億3700万ドル(約8120億円)だった。前年同期比26%減で、ロイターが伝えた市場予想の約52億5000万ドル(約8300億円)にも届かなかった。QCT売上高90億1500万ドル(約1兆4200億円)の約57%を占める最大の分野である。
同社の年次報告書によると、2026年度のスマートフォン向け減収は、主要顧客の一部へのチップ出荷減が主因だった。メモリーの供給制約と価格上昇を受け、顧客が在庫を減らすために生産計画を調整したという。端末に必要なメモリーの値上がりは、スマートフォンメーカーの部材費を押し上げる。
クリスティアーノ・アモン最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、中国のAndroid向け事業は6月期を底に前四半期比で成長したと説明した。同社は2027年の世界の携帯端末出荷台数について、横ばいから減少を前提に事業計画を立てている。
12月期のスマートフォン向け売上高は、前四半期比で1桁台半ばの減少を見込む。経営陣は、Android向けの増収をApple製品向け売上高の縮小が相殺すると説明した。また、半導体の調達費用上昇に対応して製品価格を引き上げており、その効果が全面的に粗利益率へ反映されるのは2027年度後半になるとしている。
■データセンター事業は2027年度50億ドル(約7900億円)を目標
同社は12月期のデータセンター売上高が6億5000万ドル(約1030億円)を超えると見込む。ロイターによると、Visible Alphaがまとめた市場予想は5億3910万ドル(約852億円)だった。大規模クラウド事業者向けのカスタムチップ出荷が、売上拡大の出発点となる。
経営陣は2027年度の売上高目標50億ドル(約7900億円)を維持し、年度末には年換算70億ドル(約1兆1100億円)の売上ペースを目指すと説明した。2026年6月の投資家向け説明会では、2029年度のデータセンター売上高目標を150億ドル(約2兆3700億円)超としている。
2027年度第1四半期から、データセンター事業はQCTに組み入れられる。経営陣によると、QCTの税引き前利益率見通しには、この変更による3ポイントの押し下げが含まれる。売上拡大に先行するAIアクセラレーターやCPUの開発投資が反映されているという。
アカシュ・パルキワラ最高財務責任者兼最高執行責任者は、データセンター事業について、粗利益率を押し下げる一方で営業利益率にはプラスになるとの見方を示した。また、QCTの長期的な税引き前利益率目標30%を維持した。売上構成の変化に伴い、粗利益率と営業利益率を分けて見る必要がある。
Benzingaが伝えたRosenblatt Securitiesの分析では、第4四半期の粗利益率は前四半期から1.6ポイント低下し、52.4%となった。同社の年次報告書も、ウエハー製造、組み立て、先端パッケージング、メモリーなどで費用上昇と供給能力の制約が生じていると説明しており、供給確保は事業拡大を支える課題となる。
■Apple向けチップ供給と特許収入は別の収益源
Appleは日本向けの公式情報で、iPhone 18 Proシリーズへの自社製C2モデム採用を説明している。一方、TechInsightsの暫定的な分解調査では、米国向けiPhone 18 Pro MaxからクアルコムのSnapdragon X80が確認された。MacRumorsによると、米国以外のiPhone 18 Pro MaxにはC2が使われている。
クアルコムは今回の決算で、Apple、Huawei、Transsionとの長期特許ライセンス契約を更新したと発表した。第4四半期のライセンス部門QTLの売上高は13億400万ドル(約2060億円)、税引き前利益率は70%だった。経営陣は、契約更新後もQTLの売上規模と長期的な売上見通しを維持していると説明した。
調査会社Futurum Groupは2025年3月の分析で、Appleがクアルコム製モデムと無線周波数関連部品の採用を全面的に終了した場合、2028年から年間73億〜78億ドル(約1兆1500億~1兆2300億円)の売上減少要因になると推計した。同社は併せて、自動車やIoTなどへの事業拡大がその影響を補うとの見方を示していた。
■通期利益には57億ドル(約9010億円)の税効果を含む
2026年度通期のGAAPベースの売上高は431億2000万ドル(約6兆8100億円)で、前年度の442億8400万ドル(約7兆円)から3%減少した。GAAPベースの1株当たり利益は12.70ドル、調整後1株当たり利益は10.54ドルだった。
GAAP利益には、繰延税金資産に対する評価性引当金の取り崩しによる57億ドル(約9010億円)、1株当たり5.32ドルの税効果が含まれる。同社によると、米財務省と内国歳入庁による企業代替ミニマム税の追加指針を踏まえ、既存の米連邦税に関する繰延税金資産の大部分を回収できると判断し、第2四半期に計上した。
この税効果分を単純に差し引くと、通期のGAAPベースの1株当たり利益は7.38ドルとなる。調整後1株当たり利益10.54ドルは、前年度の12.03ドルから12%減少しており、税効果と事業の収益動向を分けて把握することが重要だ。
■自動車向けは89%増、非スマホ事業を拡大
第4四半期の自動車向け売上高は前年同期比89%増の19億9000万ドル(約3140億円)と、過去最高を更新した。経営陣は2026年度末の年換算売上ペースを約80億ドル(約1兆2600億円)と説明し、従来想定の70億ドル(約1兆1100億円)を上回ったとしている。
IoT向け売上高は4%増の18億8800万ドル(約2980億円)だった。自動車向けとIoT向けを合わせると36%増の38億7800万ドル(約6130億円)となり、スマートフォン以外の事業が成長した。
12月期は、自動車向けとIoT向けの合計売上高が前四半期比でおおむね横ばいになると見込む。一方、データセンター事業の拡大も加わる2027年度には、QCTの非スマートフォン分野の売上高が60%超成長すると予想している。
■中国市場と供給網を巡るリスク
年次報告書によると、中国・香港に本社を置く顧客への売上高は、2026年度に180億7900万ドル(約2兆8600億円)となり、全体の42%を占めた。前年度の46%から比率は低下したが、引き続き大きな市場である。ロイターによると、中国の国家市場監督管理総局は2025年10月、クアルコムによるAutotalks買収について独占禁止法に基づく調査を開始した。
米通商代表部は、中国の半導体産業政策を対象とする通商法301条の措置として、対象の中国製半導体などに対する追加関税率を当初0%に設定した。2027年6月23日に税率を引き上げ、その税率は少なくとも30日前に公表する予定としている。
次の決算では、データセンター売上高が6億5000万ドル(約1030億円)を超えるか、スマートフォン向け売上高の前四半期比減少率が1桁台半ばに収まるかが注目される。QCTの税引き前利益率20〜22%という見通しと併せ、多角化の進展を測る材料になる。
元記事: Qualcomm Earnings Beat Estimates, Yet Stock Falls 9% as Handset Chip Sales Drop 26%