ニコンZR、H.265でREDのカラーサイエンスに対応へ ファームウェア2.00を近日公開
2026年11月7日 22:36
ニコンは2026年11月4日、フルサイズセンサー搭載カメラ「ニコン ZR」用ファームウェアVer.2.00を近日公開すると発表した。H.265記録でREDのLog3G10とREDWideGamutRGBに対応し、RAW以外でもREDのカラーサイエンスを取り入れた撮影が可能になる。
公開は2026年内を予定し、無償で提供する。2026年11月7日時点で具体的な公開日は示されていない。高感度ノイズ低減の設定、フォーカスピーキング、外部モニターへの出力、操作のカスタマイズも拡充する。
■H.265収録に広がるREDのカラーサイエンス
今回の中心となるのは、H.265記録の階調モードへのLog3G10追加だ。これに対応する色域としてREDWideGamutRGBを使用できる。ニコンによると、軽量なファイルサイズと、滑らかな階調や広い色域を生かした柔軟なカラーグレーディングを両立する。
従来、ZRでLog3G10とREDWideGamutRGBを使う記録方式は、RAWフォーマットのR3D NEだった。R3D NEはREDのカラーサイエンスをニコンのカメラで利用するために開発された形式である。Ver.2.00では、同じガンマと色域をH.265収録にも広げる。
RAW素材では、編集時にRAWデータを現像する工程がある。H.265素材では、その工程を経ずに記録済みの映像信号を扱えるため、制作側は保存容量や編集環境に応じて収録方式を選びやすくなる。長時間の撮影や小規模制作にとって、素材管理の選択肢が増える更新だ。
データ量の違いは、ニコンが公表している既存の記録仕様でも確認できる。6K・59.94pのR3D NEは平均約3780Mbps、5.4K・59.94pの10bit H.265は平均約400Mbpsである。映像ビットレートから単純計算すると、1時間当たりそれぞれ約1.70TB、約180GBとなり、解像度や記録方式に応じて必要な容量が変わる。
■Log3G10とREDWideGamutRGBの役割
Log3G10は、撮影した明るさの情報を対数曲線で符号化し、後から階調や色を調整するためのガンマカーブである。REDが2017年に公表した技術白書では、中間調の基準となる18%グレーを正規化した信号値の3分の1に対応させると説明している。
名称の「3G」はこの中間グレーの配置を、「10」は中間グレーより10段明るい入力まで符号化できる設計を表す。暗部から明部までの信号をグレーディングや表示方式への変換に適した形で扱うための仕組みだ。
一方、REDWideGamutRGBは色を表すための広色域の色空間である。REDの白書によると、REDカメラが生成する色をクリッピングせずに収めることを目的に設計された。Rec.2020より広い色域を持ち、編集時の共通の作業空間として利用できる。
比較対象となるRec.2020の色域は、CIE 1931 xy色度図上で可視色域の約75.8%の面積を占める。広い作業色域を使う制作では、グレーディング後に、テレビ向けのRec.709、映画上映向けのDCI-P3、広色域映像で使うRec.2020など、納品先に合った色域と表示特性へ変換する。
■REDカメラと共通の色管理を使いやすく
Log3G10とREDWideGamutRGBは、REDの映像制作で使われる共通のガンマと色域でもある。KOMODO、V-RAPTOR、MONSTROなどのR3D素材をこの組み合わせで現像すれば、ZRのH.265素材と共通の入力色空間として管理できる。
Blackmagic Designの公式ガイドでは、DaVinci Resolveで素材ごとに入力色空間を指定し、作業用や出力用の色空間へ変換する手順を紹介している。ZRのH.265素材も適切に設定することで、この色管理の流れへ組み込みやすくなる。複数のカメラを使う撮影では、共通の色管理を土台に、露出やホワイトバランス、各ショットの見え方を調整できる。
AdobeもPremiere Pro向けの公式解説で、REDWideGamutRGB/Log3G10を前提としたREDのクリエイティブLUTの利用方法を案内している。ガンマと色域が共通になれば、入力条件の合うLUTや色変換の設定を使った画づくりを進めやすい。
クラウドを介した共同作業にも関係する。ZRはNX MobileAir経由のFrame.io連携に対応しており、Frame.ioの公式案内ではH.264とH.265をアップロード対象としている。Log3G10で収録したH.265素材を共有できれば、撮影現場から離れた編集者やカラリストへ素材を渡す運用の幅が広がる。
■高感度ノイズ低減と暗部の描写を調整
Ver.2.00では、H.265でLog3G10またはN-Logを使う場合に、高感度ノイズ低減の度合いを4段階から選べるようになる。ニコンは、本来の質感を重視する撮影から、ノイズを抑えた滑らかな描写を求める撮影まで、意図に合わせた画づくりを可能にすると説明している。
ニコン英国の機能案内では、4段階をオフ、弱、標準、強に相当する設定として示している。同案内では、ProRes 422 HQのN-Log記録も選択対象に挙げている。
ノイズ低減を強めるか、細部の質感を優先するかは、撮影する被写体や作品の狙いによって変わる。カメラ側で処理を選べることで、収録時から仕上がりを意識し、後処理との役割分担を決めやすくなる。
暗部の画質については、フレームごとの黒レベルの変動を抑える処理も加わる。ニコンによると、低照度の場面や画面内の暗い部分で生じやすいちらつきを低減する。
■LUT表示とピント確認、外部モニターを改善
R3D NE記録では、3D LUTを適用した状態でフォーカスピーキングを表示できるようになる。フォーカスピーキングは、ピントの合っている部分の輪郭を強調して示す補助表示だ。仕上がりに近い色やコントラストを確認しながら、マニュアルフォーカスを合わせやすくなる。
HDMI映像出力への3D LUT適用にも対応する。監督やクライアントが見る外部モニターにも、完成イメージに近い映像を送れるため、現場でルックを共有しやすくなる。カメラから補正済みの映像を出力できれば、外部モニター側でLUTを設定する手間も減らせる。
ニコン英国の案内によると、HDMI出力に3D LUTを適用する場合、出力解像度はフルHDとなる。60p/50p出力では出力フレームレートを維持する一方、映像の更新頻度は半分になる。また、動画設定によってはHDMI接続が一時的に途切れる場合がある。
操作面では、ISO感度、露出設定、ホワイトバランス、ホワイトバランスの色温度をコマンドダイヤルへ割り当てられるようになる。Fnボタンには「3D LUT/ビューアシスト」を割り当てられ、主要な表示設定へ素早くアクセスできる。録画中の切り替えについて、ニコン英国はビューアシストの切り替えに対応すると案内している。
■ニコンとREDの協業を反映したZR
ZRは、ニコンとREDの協業によって開発された、Z CINEMAシリーズのニコンブランドのカメラだ。ニコンは2024年4月8日にREDの完全子会社化を完了した。PetaPixelは、ニコンの決算資料に基づき、取得額を約8500万ドル(約134億円)と報じている。
ZRの発表は2025年9月で、日本での発売日は同年10月24日だった。国内価格はオープンプライスで、米国発売時のボディー単体の希望小売価格は2199.95ドル(約34万8000円)だった。個人や小規模チームの主力機に加え、大規模制作のサブカメラとしても使える位置付けである。
ニコンの製品解説によると、ZRはZ6IIIと共通の有効2450万画素の部分積層型フルサイズセンサーと、画像処理エンジンEXPEED 7を採用する。R3D NEの内部記録は最大6K・59.94pに対応し、N-Logを使う記録方式も選択できる。
今回のH.265対応は、この撮影システムで扱える記録形式とREDの色管理の組み合わせを広げるものだ。RAWを中心に据える制作から、データ量を抑えて収録・共有したい制作まで、用途に応じた運用を組み立てやすくなる。
■オープンゲートなどは2027年の対応を目指す
ニコンは2026年9月8日の開発発表で、オープンゲート記録と、アナモルフィックレンズ装着時のデスクイーズ表示についても開発を進めていると明らかにした。両機能はVer.2.00とは別に、2027年中の対応を目指す。
オープンゲート記録は、センサーの広い領域を使って動画を収録する方式である。上下方向にも余裕を持った素材を記録できれば、編集時に構図や縦横比を変える際の選択肢が増える。デスクイーズ表示は、アナモルフィックレンズで横方向に圧縮された映像を、意図した比率で確認するための機能だ。
また、ニコンは9月の発表で、REDがリモートコントロールアプリ「RED CONTROL」と「RED CONTROL PRO」を更新し、ZRの遠隔操作に対応する予定だと案内した。記録、色管理、モニタリングに加え、遠隔操作でもREDの制作環境との連携を広げる計画となる。
元記事: Nikon ZR Firmware 2.00 Brings RED Color Science to H.265 Recording Without RAW Files