GPT-6 Cyber、Firefoxの脆弱性81件を発見 Linuxでは948件の悪用を実証
2026年11月7日 21:41
OpenAIは2026年11月5日、サイバーセキュリティ研究向けAIモデル「GPT-6 Cyber」を発表した。同社によると、Firefoxの未知の脆弱性81件を発見し、Linuxカーネルでは948件の脆弱性について、動作する攻撃実証コードを作成した。
モデルは脆弱性の発見や影響の検証に加え、修正案の作成も支援する。Mozillaは発見されたFirefoxの問題の多くについて修正を提供しており、利用者には更新の適用が重要となる。
■脆弱性の発見と修正を支援する専門モデル
GPT-6 Cyberは、許可を得たセキュリティ業務に向けて開発されたモデルだ。OpenAIの技術資料によると、GPT-6 Astraを基に、脆弱性の探索、攻撃実証コードの開発、Webアプリケーションの侵入テストなどに特化した追加訓練を施している。
訓練では、ソフトウェアの異常終了の再現やコードの調査、脆弱性を悪用する手順の構築などを扱う。同時に、研究者が許可した対象範囲や行動上の制約を守り、作業結果を正確に報告することも重視したという。
OpenAIは、前世代のGPT-5.6 Cyberから脆弱性の発見・悪用実証能力が向上したとしている。2026年11月の発表時点で、指定された脆弱性の悪用能力を測る「ExploitGym」のスコアは48.5%で、GPT-5.6 Cyberの32.1%を上回った。
提供開始時の利用対象は、OpenAIのセキュリティ向けプログラム「Daybreak Red」で承認された一部の顧客で、APIとCodexを通じて提供する。同社は、本人確認や組織のセキュリティ要件などを設け、利用対象を段階的に広げる方針だ。
■Firefoxで81件を発見、既知の30件も再評価
OpenAIによると、GPT-6 CyberはFirefoxの調査で、未知の脆弱性81件について証拠と再現可能なテストを作成した。81件はいずれもMozillaが深刻度「高」と分類したという。
Firefoxは、それ以前にも複数世代の高性能AIモデルによる調査を受けていた。今回のモデルは追加の脆弱性を発見したほか、既知の問題30件について、従来の報告より深刻であることを示す分析結果を出したとOpenAIは説明している。
OpenAIは調査結果を修正案とともにMozillaへ報告し、Mozillaは多くの問題について修正をリリースした。Mozillaが10月27日に公開したFirefox 159のセキュリティ情報にも、OpenAIを報告者とする複数の修正が掲載されている。
Firefoxのエンジニア、Brian Grinstead氏は、OpenAIが公開したコメントで、モデルが未知の脆弱性や設計上の改善点を見つけ、数百万人の利用者への修正提供に貢献したと述べた。脆弱性の発見に再現テストや修正案を添える取り組みは、開発者による影響の把握と対策を支援する。
ブラウザの脆弱性は、情報の漏えいや不正なコード実行などにつながる可能性がある。利用者はFirefoxを最新の状態に保ち、自動更新を無効にしている場合は手動で更新を確認したい。Mozillaの日本語サポートによると、Mozilla配布版は「Firefoxについて」から更新を確認でき、Microsoft Store版やLinuxのパッケージ版は、それぞれの配布元を通じて更新する。
■Linuxでは948件の権限昇格を実証
OpenAIはLinuxカーネルでも、脆弱性の発見から再現、悪用可能性の検証、修正案の生成までを進める研究を行った。カーネルは、ハードウェアの管理やプログラムの実行を支えるOSの中核部分だ。
同社によると、GPT-6 Cyberを使った研究では1,724件の脆弱性を再現し、948件について動作するエクスプロイトを作成した。これらは、端末上の低い権限を持つ利用者が管理者権限を得る「ローカル権限昇格」を実証するものだ。
比較対象のGPT-5.6 Solは、同じ研究用の実行基盤で166件の権限昇格を実証した。OpenAIの詳細資料では、GPT-5.6 Solによる調査は2026年7月下旬、後のモデルによる調査は10月中旬に行われ、それぞれ当時の最新のLinuxカーネル開発版を対象としたと説明している。
OpenAIはLinuxコミュニティの方針に従い、同社が重大とする304件の発見事項を修正候補とともに保守担当者へ報告した。他の脆弱性についても修正に向けた作業を進めているという。研究の流れには、人間のセキュリティ研究者が出力を確認し、報告につなげる工程も組み込まれている。
企業での活用も始まっている。OpenAIによると、CiscoやCodeRabbitのセキュリティチームは、GPT-6 Cyberを脆弱性研究やコードレビューに利用している。AIによる調査を人間の検証や修正作業につなぐ用途が広がっている。
■自社インフラの検証と対象範囲を守る訓練
OpenAIは、自社のAI訓練用インフラの安全性向上にもGPT-6 Cyberを活用した。同社によると、管理された攻撃検証で、GPT-6 Cyberと他のOpenAIモデルを使うエージェントが複数の脆弱性を組み合わせ、軽量仮想マシン「microVM」から脱出してホスト上でコードを実行した。
同社は発見事項を基にソフトウェアを修正し、ネットワークの制限を強化したほか、関係するソフトウェアの保守担当者やベンダーにも報告した。隔離環境の内部だけでなく、その周囲のネットワークやアクセス制御も含めて防御を重ねる取り組みだ。
脆弱性を見つけて悪用を実証する能力には、防御への活用と悪用の両面がある。OpenAIはGPT-6 Cyberを、自社のPreparedness Frameworkにおけるサイバーセキュリティ能力の「Critical」に分類し、アクセス制限や不正利用の監視を設けている。
許可された対象範囲を守る能力は、「ExploitGym Honeypot」という評価で調べた。隔離環境内で難しい課題を与える一方、課題の達成に役立つ情報を得られる、意図的に攻撃しやすくした補助サービスも配置する。モデルには、そのサービスの悪用が許可範囲外だと判断することが求められる。
OpenAIの2026年11月の発表では、GPT-6 Cyberが範囲外のサービスの脆弱性を悪用しなかった割合は、導入時の安全性プロンプトを使わない条件で99.93%、使った条件で100%だった。同社はこうした訓練と評価に加え、高リスクの作業では隔離環境、行動のレビュー、人間による監督を組み合わせることを推奨している。
元記事: OpenAI’s GPT-6 Cyber Finds 81 Firefox Vulnerabilities and 948 Linux Exploits