サウジアラムコ、7〜9月期は9%増益の約4.9兆円―精製部門が234%増、施設への攻撃続くなか

2026年11月4日 17:22

 サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが3日発表した2026年第3四半期(7〜9月)決算は、調整後純利益が前年同期比9%増の312億ドル(約4兆9300億円)となった。原油高とイランとの戦争が世界のエネルギー市場の混乱を長引かせるなか、精製を担う下流部門の利益が急拡大した。

 前年同期の調整後純利益は286億ドル(約4兆5200億円)だった。この数値は、同社が調整項目を見直した後の修正値である。今回の結果は、同社が示したアナリスト予想の中央値である306億6000万ドル(約4兆8400億円)を上回った。

■下流部門の利払い・税引き前利益が234%増

 最も大きく伸びたのは、原油をガソリンや軽油などの石油製品に加工する下流部門だった。同部門の調整後の利払い・税引き前利益(EBIT)は、精製マージンの改善を追い風に前年同期比234%増の103億ドル(約1兆6300億円)となり、四半期として過去最高を記録した。

 精製マージンは、精製会社が原油の購入に支払う額と、完成品の販売で得る額の差を示す。ガソリンや軽油などの燃料の需給が引き締まると、精製会社は原油コストに対して高い価格で販売できるため、マージンは拡大する。

 今回の決算は、2月にイランとの戦争が始まって以降、エネルギーの生産と輸送ルートの混乱が数カ月にわたって続くなかで発表された。石油施設への攻撃や主要な輸出ルートへの制約により、原油と精製燃料の輸送が難しくなり、企業や消費者が支払う価格を押し上げている。

 アラムコのアミン・ナセル社長兼最高経営責任者(CEO)は決算発表文で、「2026年第3四半期も地政学的な不確実性と主要エネルギー施設への攻撃が世界のエネルギー供給危機を増幅させ続け、世界のエネルギー安全保障に深刻な影響を及ぼした」と述べた。

■原油の平均実現価格は1バレル95.20ドル

 同四半期の原油の平均実現価格は1バレル当たり95.20ドルで、前年同期の70.10ドルから36%近く上昇した。ただ、価格上昇は同社の生産と輸出の混乱と同時に起きている。

 純利益は363億ドル(約5兆7400億円)となり、前年同期の約269億ドル(約4兆2500億円)から増えた。純利益の伸びが調整後純利益を大きく上回ったのは、マレーシアの精製・石油化学合弁事業「PRefChem」の持ち分売却による利益が計上されたためだ。

 調整後の数値は特定の項目を除外したもので、基礎的な事業による利益を別途示す指標となる。

 厳しい事業環境にもかかわらず、営業活動によるキャッシュフローは387億ドル(約6兆1100億円)と、前年同期の361億ドル(約5兆7000億円)から増加した。フリーキャッシュフローは236億ドル(約3兆7300億円)から282億ドル(約4兆4600億円)に増え、コスト上昇や供給混乱に対応するうえで財務の柔軟性を高めた。

■東西パイプラインで輸出を維持

 サウジアラビアは、アラムコの東西パイプラインに大きく依存している。同パイプラインは国内を横断して紅海まで原油を運び、ホルムズ海峡を経由せずに出荷することを可能にする。イランとオマーンの間に位置する狭い同海峡は世界有数の重要な石油輸送ルートで、紛争中に深刻な混乱に見舞われている。

 アラムコは、同パイプラインが引き続き海外顧客への原油輸送に柔軟性をもたらしていると説明した。供給途絶のリスクを減らすため、海外での追加の貯蔵施設や新たな輸出ルートも検討している。

 ナセル氏は、エネルギーインフラへの攻撃にもかかわらず、既存の供給網が出荷の維持に役立ったと述べた。追加の輸出ルートや貯蔵施設について、同社は時期を示していない。

■大型生産プロジェクトが進展

 主要な生産プロジェクトも進んでいる。アラムコによると、ズルフ油田の増産プロジェクトで10月に原油生産が始まった。ジャフラ・ガス田開発の第2期、ファディリ・ガスプラントの拡張、ダンマン開発プロジェクトの作業も続いている。

■AI企業HUMAINの株式49%を取得

 アラムコはエネルギー投資と並行して、人工知能(AI)分野にも事業を広げている。同社とサウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は11月1日、アラムコがサウジのAI企業HUMAIN(ヒューメイン)の株式49%を取得する取引が完了したと発表した。

 アラムコの別の発表によると、この取引ではAI関連資産を移管するとともに、2026年中に約26億ドル(約4110億円)の現金を拠出する。

 HUMAINは2030年までに3ギガワット(GW)のAIデータセンター容量を整備する計画だが、これは将来の目標で、完成済みのインフラではない。今回の投資によりアラムコは、中核の石油・ガス事業への支出を続けながら、拡大するAIコンピューティング市場での足場を得ることになる。

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