Raspberry Pi 5の16GB版が385ドルに 代替DRAM不足で80ドル値上げ
2026年11月4日 15:10
Raspberry Piは2026年11月2日、Raspberry Pi 5の16GBモデルを80ドル(約1万2600円)値上げし、メーカー公表価格を385ドル(約6万800円)とした。2025年1月の発売時価格120ドル(約1万9000円)の約3.21倍に当たる。同社は16GB DRAMの代替供給不足と、ほかの部品不足の継続を理由に挙げている。
■16GB版は4回目の値上げ、500+は据え置き
16GB版Pi 5は2025年1月9日に120ドル(約1万9000円)で発表され、同年12月1日に145ドル(約2万2900円)へ値上げされた。その後、2026年2月2日に60ドル(約9480円)増の205ドル(約3万2400円)、4月1日に100ドル(約1万5800円)増の305ドル(約4万8200円)となり、今回385ドル(約6万800円)に達した。発売後の値上げは4回で、累計の上昇額は265ドル(約4万1900円)となる。
製品群全体では、2026年10月1日にもPi 4とPi 5の2GBモデルが値上げされている。2025年12月から今回までの約11カ月に、対象製品を変えながら5回の価格改定が行われた。
今回、産業機器や商用の組み込み製品に使われるRaspberry Pi Compute Module 5の16GBモデルも、一律40ドル(約6320円)値上げされた。一方、16GBメモリを搭載するメカニカルキーボード一体型デスクトップ「Raspberry Pi 500+」は価格が据え置かれた。
今回の改定対象は一部の16GB製品に限られる。Pi 5の下位モデルも過去の値上げを受けており、2026年11月2日時点のメーカー公表価格は1GB版45ドル(約7110円)、2GB版77.50ドル(約1万2200円)、4GB版110ドル(約1万7400円)、8GB版175ドル(約2万7700円)だ。
■高密度メモリの調達に制約
Pi 5はLPDDR4X-4267メモリを採用する。Raspberry Piが16GB版の発売時に説明した構成は、Micron製の16Gbitメモリダイを8枚、単一パッケージに収めたものだ。大容量化には、必要な容量をPi 5で使える形の部品として調達することが重要になる。
Raspberry Piは調達先の柔軟性を高めるため、代替部品の認定を進めている。2026年7月更新の製品変更通知では、1GB向けにWinbond、4GBと8GB向けにRaysonやCXMTのメモリが記載された。11月の価格改定発表では、16GB DRAMについて代替供給が不足していると説明している。
同社は2026年4月時点で、Pi 4とPi 5に使うLPDDR4 DRAMの価格が過去1年間に7倍になったと発表した。2月の説明では、AIインフラの拡大に伴うメモリ工場の生産能力の取り合いを、コスト上昇の背景に挙げていた。
業界でも旧世代メモリから新しい製品への移行が進む。Samsungの公式サイトはモバイル向けLPDDR4とLPDDR4Xを生産終了品として表示している。VideoCardzが紹介した韓国The Elecの2026年4月の報道によると、新規受注を終了し、既存受注分の生産は年末まで続ける見通しだった。
調査会社TrendForceは2026年の市場分析で、大手メーカーが収益性の高いサーバー用途を優先する一方、WinbondがLPDDR4の出荷を拡大していると報告した。Nanya TechnologyやCXMTも旧世代メモリの供給を担っており、供給構造はメーカーごとに変化している。
■AI向け需要が続くメモリ市場
AI向けで需要が伸びるHBMは、複数のDRAMダイを積層し、シリコン貫通電極(TSV)で接続するメモリだ。大きなデータ転送帯域を必要とするAIアクセラレーターなどに使われる。メモリメーカーはHBMやサーバー向け製品への投資を進めている。
ロイターによると、Samsungのメモリ事業幹部Kim Jaejune氏は2026年7月の決算説明で、2027年の供給不足は2026年より悪化し、2028年にも続くとの見通しを示した。SK hynixのKwak Noh-jung最高経営責任者も7月のロイターのインタビューで、2027年は供給面で業界史上最も厳しい年になると予測した。
Raspberry Pi自身は、メモリ市況を最終的には一時的なものと捉えている。11月2日の発表でも、メモリコストが下がれば値上げを戻したいとの方針を維持した。調達コストの上昇への対応として、価格改定と代替部品の認定を並行して進めている。
在庫の確保も対応策の一つだ。同社の2026年上期決算では、2025年に低価格で取得したメモリ在庫が収益を支えたと説明された。決算説明会の内容をまとめたGuruFocusによると、上期の売上高と収益性は過去最高となり、低価格在庫の消費に伴って下期の製品1台当たり粗利益は低下する見通しが示された。
■Pi 5のメモリ仕様とPi 6の見通し
Pi 5のBroadcom BCM2712は、32ビットのLPDDR4Xメモリインターフェースを備える。メモリ規格の変更には、対応するコントローラーや基板設計が必要になるため、LPDDR5への移行は製品設計に関わる課題となる。
Pi 5のRAMは、SoCとは別のパッケージとして基板にはんだ付けされている。購入者がメモリモジュールを挿す増設スロットは備えず、容量は製品選択時に決める構成だ。既存の4GB版を使う場合も、将来必要になる容量を含めて機種を選ぶことになる。
次世代のPi 6について、Eben Upton最高経営責任者は2026年5月のRedditでの質疑応答で、主要プラットフォームの投入間隔はおおむね4〜4年半だと説明した。その周期に基づけば2028年初頭より前には登場せず、Pi 5が主力であり続ける期間はさらに長くなる可能性も示した。
■必要容量と国内販売価格を見極める
Raspberry Piは、必要以上のメモリに費用をかけないよう利用者に呼びかけている。ホームオートメーション、軽量サーバー、レトロゲーム、教育用デスクトップなどでは、使用ソフトや同時に動かす処理に応じて4GB版や8GB版も候補になる。実際のメモリ使用量を測り、用途に合う容量を選ぶことがコスト管理につながる。
大きなAIモデル、複数のコンテナ、重い開発ツールの並行利用などでは、メモリ容量に余裕がある利点が大きい。Raspberry Piは16GB版の発売時にも、大規模言語モデルや計算流体力学、Ubuntuを使うデスクトップ用途を、大容量メモリが役立つ例として挙げていた。
ソフトウェア側の調整も選択肢となる。Raspberry Pi Official MagazineはRaspberry Pi OSのメモリ最適化ガイドを公開している。同社はコミュニティフォーラムでの相談も案内しており、エンジニアが回答することもあるという。
他社製シングルボードコンピューターでは、Rockchip RK3588を搭載するOrange Pi 5 Plusに16GB構成がある。メーカー公式仕様で採用されているメモリはLPDDR4/LPDDR4Xだ。比較時には容量だけでなく、必要なOSやソフトウェア、周辺機器との対応も確認したい。
Tom's Hardwareは今回の値上げを受け、演算処理を主目的とする利用者にとって、エントリークラスのx86ミニPCも比較対象になると指摘した。整備済みPCを含め、CPU性能、メモリ容量、増設性を総費用で比較する余地がある。GPIOや拡張基板を使う組み込み用途では、接続方法や既存ソフトウェアとの適合性も選定条件となる。
日本では、スイッチサイエンスが2025年1月10日に16GB版Pi 5を発売している。同社の商品ページに記載された2026年11月4日時点の販売価格は税込7万8980円だ。メモリ価格の高騰を受けて販売価格を定期的に見直す方針も掲げており、購入時には販売店の最新の価格を確認する必要がある。
■購入先は認定販売店で確認
Raspberry Piは、一部の販売者がメモリ不足の状況を利用し、価格をつり上げたり、表示と実態が異なる製品を販売したりしていると注意を促した。購入先の確認には、同社の認定販売店ネットワーク「Approved Resellers」を案内している。
認定販売店の案内では、国別に販売先を探せる。日本で予算を組む際は、国内販売店が提示する税込価格に、送料や必要な周辺機器の費用を加えて比較することになる。
元記事: Raspberry Pi 5 16GB Reaches $385 as Samsung Ends LPDDR4; Pi 6 Still Eighteen Months Out