サムスン、2nm受注案件を前年比2倍超へ 大手クラウド・AI向けで拡大
2026年10月31日 17:08
サムスン電子は2026年10月29日、第3四半期決算で、大手クラウドサービス事業者やAI向け高性能コンピューティング(HPC)顧客から2nmプロセスの製造案件を追加獲得したと明らかにした。2026年通年の2nm受注案件数は前年比2倍超になると見込み、第4四半期には第2世代2nmプロセスを使う新しいモバイル製品の量産開始を計画する。
■大手クラウド・AI向けで2nm案件を積み上げ
決算説明会でファウンドリー事業のSukchae Kang副社長は、第2四半期に続き、第3四半期も大手クラウドサービスプロバイダー(CSP)とAI・HPC顧客から2nm案件を獲得したと説明した。先端プロセス全般で採用案件を増やし、特に2nmの受注が大きく伸びているという。
同社は7月の第2四半期決算説明会で、大手CSPとAI・HPC顧客から2nm案件を受注し、設計段階に入ったと説明していた。今回の発表は、そうした顧客層からの受注が継続していることを示すものだ。10月の説明でも、対象となる顧客の社名は公表していない。
サムスンは今後、長期契約に基づく主要顧客との戦略的な提携を強め、用途の分散も進める方針だ。製造を受託した案件を設計から量産へ移し、次世代製品でも継続して採用されることが、売上基盤の安定につながる。
■営業利益107兆ウォン(約12兆6000億円)、メモリーが業績をけん引
2026年7~9月期の連結売上高は195兆3000億ウォン(約23兆円)、営業利益は107兆4400億ウォン(約12兆7000億円)となった。売上高と営業利益は4四半期連続で過去最高を更新した。サムスンは、世界のテクノロジー企業として初めて四半期営業利益が100兆ウォン(約11兆8000億円)を超えたとしている。
聯合ニュースによると、営業利益は前年同期比783.1%増、純利益は514.6%増の75兆1300億ウォン(約8兆8700億円)だった。AIインフラ投資に伴うメモリー需要の拡大が、急増益の背景にある。
メモリー、System LSI、ファウンドリーを含むデバイスソリューションズ(DS)部門は、売上高147兆1000億ウォン(約17兆4000億円)、営業利益106兆5000億ウォン(約12兆6000億円)を計上した。全社営業利益の約99%に相当する。サムスンによると、メモリー事業はHBM4の販売拡大やサーバー需要への対応を通じ、四半期売上高と営業利益の最高記録を更新した。
完成品事業ではコスト上昇の影響が続く。デバイスエクスペリエンス(DX)部門は8000億ウォン(約944億円)の営業赤字で、モバイル・ネットワーク事業の赤字は6000億ウォン(約708億円)、テレビ・家電事業は2000億ウォン(約236億円)だった。サムスンはモバイル事業の前年同期比減益について部品コストなどの圧力を挙げ、テレビ事業では大型スポーツイベントの終了による減収とコスト増を説明した。
■SF2を支えるGAA構造と歩留まり
サムスンの2nmプロセス「SF2」は、ゲートオールアラウンド(GAA)構造のトランジスタを採用する。電流の通り道であるチャネルをゲートが全周から取り囲み、電流のオン・オフを制御する構造だ。ゲート電極とチャネルの間には絶縁膜があり、微細化に伴う漏れ電流を抑えるうえで有利になる。
サムスンは自社のGAA技術をMBCFETと呼ぶ。薄いシリコンのナノシートを縦方向に積み重ね、それぞれをゲートで囲む方式である。ひれ状のチャネルをゲートが3方向から囲むFinFETから、チャネル形状とゲートの配置を変えた点が特徴だ。
サムスンは2022年、3nmプロセスで世界に先駆けてGAAの生産を開始した。第1世代2nmプロセスの量産開始は2025年第3四半期である。一方、TSMCは3nm世代でFinFETを採用し、GAAに相当するナノシート構造を使うN2の量産を2025年第4四半期に始めた。
量産の採算を左右する指標の一つが、製造したチップのうち良品が得られる割合を示す歩留まりだ。GAAの製造では、ナノシートとなる薄膜の形成や選択的なエッチングなど、精密な工程管理が重要になる。産業技術総合研究所も、シリコン層と犠牲層となるシリコンゲルマニウム層を高品質に形成することを、製造上の不可欠な技術として説明している。
朝鮮ビズは2026年9月29日、業界情報として、サムスンのSF2の歩留まりが約60%に近づいたと報じた。同報道では、2025年半ばの30%台から、2026年1月に50%台、8月に約55%へ改善したとされる。サムスンは10月の決算説明会で、2nmの歩留まり安定化と次世代プロセスの開発を並行して進める方針を示した。
■TSMCの供給制約と製造委託先の選択
先端半導体の需要拡大は、製造委託先の確保を重要にしている。調査会社Counterpoint Researchによると、2026年第2四半期のファウンドリー市場の売上高シェアはTSMCが73%、サムスンが7%だった。同社は先端・成熟プロセスの双方で需給の不均衡が生じていると分析する。
朝鮮ビズは9月、TSMCの2nm生産能力について、業界では2028年まで予約が埋まっているとみられていると報じた。同報道による2nmウエハーの価格は約3万ドルで、3nmの約2万ドルを50%上回る。供給枠と製造コストは、設計企業が委託先を選ぶ際の重要な条件になる。
先端プロセスでは、インテルも18A系などで外部顧客の獲得を進めている。サムスンにとっては、GAAの製造経験に加え、顧客製品に必要な性能、消費電力、納期を満たすことが受注の継続につながる。供給先を増やすには、新しいプロセスに合わせた設計や検証も必要となる。
メモリー市場でも供給の確保が課題だ。SK hynixは10月28日、長期契約と顧客との協議中の需要を踏まえ、DRAMとHBMは実質的に2029年まで完売していると説明した。The Korea Heraldによると、締結済み契約は2027年と2028年の生産能力の50%超をカバーしている。同社は製造工程の複雑化や工場建設の長期化を背景に、メモリー不足が2030年まで続くと予測した。
サムスンも、2027年にはAI関連需要と業界供給の隔たりが2026年より拡大すると見込む。Herald Businessによると、同社は新工場の建設からウエハー生産までの期間や装置調達の長期化を挙げ、メモリーの供給制約が2028年まで続くとの見方を示した。
■HBM4の4nmベースダイが収益改善を支える
サムスンのファウンドリー事業は、外部顧客向けロジック半導体に加え、自社のHBM向け部品も製造している。HBMはDRAMを積み重ねた広帯域メモリーで、NVIDIAのH100などのAIアクセラレーターと組み合わせて使われる。積層したメモリーの底部には、信号の受け渡しなどを担うベースダイが置かれる。
サムスンは2026年2月に量産・出荷開始を発表したHBM4で、4nmロジックプロセスのベースダイを採用した。DRAMには第6世代10nm級の1cプロセスを用いる。同社は、これらの先端プロセスの組み合わせが性能と電力効率を高めるとしている。
MoneyTodayは9月、サムスンが4nm生産能力の半分超をHBM4ベースダイ向けに割り当てていると報じた。HBM4の増産は、メモリー事業だけでなく、ベースダイを製造するファウンドリーの需要にもつながる。設備稼働率が高まれば、製品当たりの固定費負担を軽くする効果も期待できる。
サムスンによると、第3四半期のHBM4売上高は前四半期の3倍超となり、HBM売上高の60%を占めた。ファウンドリーの売上・収益改善についても、HBMベースダイの販売増と先端プロセス製品の販売拡大を要因として挙げた。メモリー、ロジック製造、パッケージングを社内に持つ事業構成が、AI向け製品の開発と供給を支えている。
■第2世代2nm製品とテイラー工場の計画
サムスンは第4四半期、第2世代2nmプロセスによる新しいモバイル製品の量産を始め、主要顧客向け4nm製品の量産も拡大する計画だ。メモリー関連製品の販売増も合わせ、ファウンドリー売上高は前四半期比、前年同期比とも2桁成長を目指す。
第2世代2nmの「SF2P」では、設計と製造技術を一体で最適化するDTCOが重要になる。The Elecが報じた7月の技術説明によると、サムスンの設計プラットフォーム開発担当副社長は、SF2からSF2Pへの移行で消費電力を26%削減し、動作周波数を15%高め、その改善の半分超がDTCOによるものだと説明した。
米国では、サムスンは2027年にテキサス州テイラーの第1工場を稼働させ、世界の顧客への供給能力を強める方針を示した。第2工場については、7月の決算説明会で2026年末までの着工と2030年の量産開始を目標に挙げている。先端プロセスの増産は、韓国と米国の設備投資を組み合わせて進める。
テイラー拠点には、テスラ向けの大型案件もある。サムスンが公表した契約は約165億ドルで、契約終了日は2033年12月31日だ。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者は、同拠点で次世代AI6チップを製造すると説明している。米国ではTSMCも増産を進め、10月の決算説明会でアリゾナ第2工場の3nm量産を2027年第3四半期に始める計画を示した。
■設備投資84兆ウォン、株主還元も拡大
サムスンの2026年1~9月の設備投資は全社で56兆9000億ウォン(約6兆7100億円)となり、うちDS部門は52兆8000億ウォン(約6兆2300億円)だった。通年は全社で84兆4000億ウォン(約9兆9600億円)、DS部門で76兆8000億ウォン(約9兆600億円)を見込む。DS部門の投資額は前年から29兆3000億ウォン(約3兆4600億円)、約62%増える計画だ。
第3四半期の現金配当は総額30兆ウォン(約3兆5400億円)で、普通株、優先株とも1株当たり4601ウォンとなる。第1四半期の372ウォン、第2四半期の374ウォンと比べ、いずれも12倍超に増える。2026年の株主還元総額は90兆~110兆ウォン(約10兆6000億~13兆円)を想定している。
このうち35兆ウォン(約4兆1300億円)は計画済みまたは実施済みで、残る55兆~75兆ウォン(約6兆4900億~8兆8500億円)は現金配当と大規模な自社株買い・消却を組み合わせる方針だ。最終的な還元額、残額の実施計画、次期還元方針は2027年1月下旬の取締役会で決定する予定である。SK hynixも10月28日、2026年に約100兆ウォン(約11兆8000億円)の株主還元を行う方針を示した。
10月29日のサムスン株は下落した。Dow Jonesの報道によると、追加の株主還元策の具体化を期待していた投資家の失望が売りにつながったという。記録的な利益の配分では、将来の供給能力を増やす設備投資と、株主への還元の両方が注目されている。
■持続的な成長を左右する顧客との関係
MoneyTodayは、第3四半期のファウンドリー事業について営業赤字が縮小したと推計している。黒字化の時期について、The Korea Heraldは6月、事業責任者のHan Jin-man氏が社内説明で2028年をより現実的な目標として示したと報じた。量産の拡大と新工場の稼働を進めながら、収益改善を定着させることが課題となる。
サムスンはメモリー製品に加え、System LSI部門で自社のシステム半導体も設計する。一方、TSMCは自社ブランドの半導体製品を手掛けず、顧客と競合しないことを事業方針として掲げる。両社の事業構成の違いは、技術を社内で組み合わせる利点と、製造を委託する顧客との関係を考えるうえで重要だ。
顧客の設計情報の機密保持、製造品質、安定供給は、受託製造を継続するための基盤になる。サムスンにとっては、HBM4ベースダイによる社内需要の拡大と、クラウド・AI企業からの外部受注を両輪に、次世代製品でも選ばれる製造体制を築けるかが焦点となる。
元記事: Samsung Foundry Confirms Hyperscaler 2nm Orders as First GAA Chips Enter Production