独NEURA、四肢が独立して反応する「4NE1 Gen 4」 TUMとロボット訓練施設を開所
2026年10月29日 10:34
ドイツのNEURA Roboticsは2026年10月22日、ヒューマノイドロボット「4NE1 Gen 4」を発表した。ミュンヘン工科大学(TUM)と共同で開所した訓練・研究施設「TUM RoboGym」を活用し、四肢に分散した処理機構と多感覚AIを実際の産業作業に適応させる。
■四肢が独立して反応するSmart Limbs
Gen 4の特徴は、四肢に反射的な応答機能を組み込む「Smart Limbs」である。NEURAによると、各部位が独立して周囲の変化に反応でき、滑らかで精密な動作につなげる設計だ。手も改良し、把持の精度を高めたとしている。
この設計の背景には、同社が「Brain + Nervous System」と呼ぶ分散型の計算処理構成がある。高度な認識や判断を担う処理と、センサーや関節に近い場所で実行する低遅延の制御を組み合わせ、物理的な接触が起きる場所の近くで応答することを目指す。
NEURAとQualcommは2026年3月、この構成の参照アーキテクチャを共同開発する長期協業を発表した。9月7日にはSECOとの提携も発表し、Qualcomm Dragonwingプロセッサを組み込む演算モジュールの設計・製造を進めるとした。対象には4NE1を含む同社のロボット群がある。
外装は黒い繊維素材を使った細身のデザインとなった。NEURAは、人と並んで働く機械として親しみやすい外観を目指し、素材を生かした外観のカスタマイズも想定している。同社発表では、重量は前世代より20%軽い。
■視覚、触覚、音、記憶を行動へつなぐNeuron AI
Gen 4は、NEURAが10月14日に発表した独自の基盤モデル「Neuron AI」を搭載する。同社がPerception-Language-Action(知覚・言語・行動、PLA)と呼ぶモデルで、3D視覚、触覚・力覚、音、ロボット自身の状態、言語を統合し、行動へ変換する。
視覚・言語・行動を結ぶVLAモデルは、画像と言語指示などからロボットの動作を生成する仕組みである。Neuron AIでは、接触や音を含む情報を時間軸に沿って共通の表現へまとめる点を重視する。例えば、部品がはまる際の音や接触力は、組み付けの進み具合を判断する手掛かりになる。
ロボット自身の状態には、関節の位置など、身体の姿勢や動きに関する情報が含まれる。これは人の固有感覚に通じる情報であり、周囲の状況と自分の動作を対応させるうえで役立つ。さらにNEURAは、視野から外れた物体や過去の行動に関する文脈を保持する記憶機能を設け、そのためにモデル構造を調整し、専用データで学習させたとしている。
同社によると、Neuron AIの推論はロボット本体で実行され、クラウドとの通信を必要としない。外部サーバーとの往復を減らし、クラウド接続が途切れた場合にも処理を継続できる構成で、生産データを顧客側で管理できることも特徴に挙げる。
NEURAは10月20〜22日のNVIDIA GTC Berlinに向け、4NE1が11分間の洗濯物処理を自律実行する実演を予告していた。洗濯物の仕分け、洗濯機への投入と取り出し、乾燥機への移動を一連の作業として扱い、認識、記憶、動作計画を組み合わせる例として示した。
■産業作業で問われる多感覚処理と信頼性
触覚や力覚の活用は、産業向けAIの研究課題でもある。ハンブルク工科大学の研究者らが2026年5月に公開した系統的レビューのプレプリントは、データベースから得た863件の記録を段階的に選別し、42件の研究を分析した。このうち、触覚・力覚に関する入力を扱った研究は4件だった。
同レビューは、接触情報が挿入、組み立て、運搬、分解などの作業に重要だと指摘する。触覚・力覚は、部品の位置合わせのずれや荷重の変化、作業の進行を把握する手掛かりになる。研究対象では視覚や言語を使う構成が目立ち、多感覚情報の統合と実環境での検証が課題として挙げられた。
長い作業を最後まで完了する難しさも、評価結果に表れている。スタンフォード大学のAI Index Report 2026によると、家庭作業をシミュレーション内で扱った2025年のBEHAVIOR Challengeでは、首位チームの全工程成功率は12.4%だった。大会は50種類の作業を対象とし、移動や両手での操作などを連続して実行する能力を評価した。
一方、Generalistは2026年4月、基盤モデル「GEN-1」について、50万時間超の物理的な操作データを学習に使い、評価した作業群で平均99%の成功率を得たと発表した。事前学習には人間の操作を収録したデータを用い、各作業には約1時間のロボット実演データを使ったという。データの種類と評価対象を明らかにして性能を見ることが重要になる。
iRobot共同創業者でMIT名誉教授のロドニー・ブルックス氏は、米業界団体A3のインタビューなどで、ヒューマノイドの商用化を巡る短期的な期待に慎重な見方を示している。工場では照明、物体の位置、人の動きなどが変化するため、導入判断には、そうした条件の下で作業を繰り返した際の信頼性が問われる。
■RoboGymで実作業、人の実演、シミュレーションを組み合わせる
TUM RoboGymはミュンヘン空港のLabCampusに位置し、面積は2300平方メートル超となる。TUMのロボティクス・機械知能研究所MIRMIとNEURAが共同で整備した。TUMによると、48の訓練セルで、当初は約100台のヒューマノイドやサービスロボットが作業を学ぶ。
NEURAの発表では、データ作成は3つの方法を組み合わせる。実際のロボットが作業しながら動きや接触、結果を記録する方法、人がセンサー付きスーツや動作計測装置、遠隔操作を使って作業を示す方法、シミュレーションで条件の異なる場面を増やす方法だ。仮想環境で訓練した技能は、実機でも検証する。
同社によると、施設では2026年9月から企業が具体的な工程の訓練に参加している。自動車、製薬、医療技術、包装、物流、農業、介護など10を超える業界が関わり、段ボール箱の取り扱い、瓶への充填、木製部品の積み下ろしなどを対象とする。企業は自社への導入を広げる前に、適したロボットや必要な訓練を見極められる。
訓練施設とAI開発を結ぶのが、NEURAのプラットフォーム「Neuraverse」である。NEURAによると、顧客はNeuron AIを自社作業向けに調整し、学習した技能をロボット群へ展開できる。技能を非公開に保つこともでき、顧客が共有を選んだ技能や運用データは、将来のモデル開発などに活用できる。
共同事業は当初3年間を予定し、総投資額は約1700万ユーロ(約29億9000万円)、このうちNEURAが約1100万ユーロ(約19億4000万円)を拠出する。NEURAはロボット、技術基盤、計算資源、運用人員などを提供し、TUMは施設空間、科学的知見、研究・運営資源を担う。
■人の経験をロボットの学習資源にする
人間の動作データを増やす効果を調べた研究として、NVIDIAなどの研究者が2026年2月に公表した「EgoScale」がある。研究チームは、動作情報を付与した2万854時間の一人称視点の人間映像でVLAモデルを学習させた。人間データの量と検証時の損失に対数線形の関係を見いだし、データ量を増やすと実ロボットの操作性能も改善したと報告している。
この結果は、ロボットを動かして得るデータに加え、人が作業する様子を収録する方法にも学習資源としての価値があることを示す。RoboGymの3つの経路も、実際の接触や力の情報、人の熟練動作、仮想環境で作る多様な条件を組み合わせる構成だ。集める量に加え、どの作業や条件を収録するかが重要になる。
NEURAのデービッド・レーガーCEOは開所に際し、人が蓄積してきた材料加工、組み立て、複雑な工程の知識を、Physical AIの強みとして活用する考えを示した。TUMとの施設を通じ、その知識をロボットが学べる能力へ変えることを目指すとしている。
施設網も拡張する計画だ。NEURAは7月の発表で、欧州、米国、中国で計10拠点を開発し、2026年末までに5拠点を稼働させる方針を示した。ドイツではアーヘン工科大学とも提携し、同年末までの新施設開所を計画している。
■欧米中で進む開発競争と、Gen 4の導入段階
競合各社も開発や生産を進めている。Teslaは2026年10月21日の決算資料で、カリフォルニア州フリーモントの生産ラインでOptimusの生産を開始したと発表し、立ち上げ初期の段階に位置付けた。価格については、マスクCEOが2024年10月に将来的な目標として2万〜3万ドル(約316万~474万円)を示していた。
Figure AIとBMWは2026年6月、米スパータンバーグ工場で「Figure 03」を使う物流工程の取り組みを発表した。Figureのブレット・アドコックCEOは同年春の番組出演で、生産ライン稼働時には約90分に1台を製造していると説明している。Boston DynamicsはHyundaiグループの支援を受け、Google DeepMindとAtlasへのGemini Robotics導入に向けた共同研究を発表した。中国のUnitreeも、2025年にヒューマノイド5500台超を顧客へ納入したと公表している。
NEURAは2026年6月10日、Tether Investmentsを主幹投資家とする最大14億ドル(約2210億円)のシリーズC資金調達を発表した。参加者にはAmazon、NVIDIA、Qualcomm、Bosch、欧州投資銀行などが含まれる。A3は7月の報道で、この資金調達時の企業価値を70億ドル(約1兆1100億円)と紹介した。Tech Funding Newsは6月時点で、NEURAを欧州で最も多額の資金を集めたヒューマノイド企業と報じている。
TUM学長のトーマス・ホフマン教授は開所に際し、地政学的に不確実な時代にドイツの産業拠点としての力を示す協力だと述べた。RoboGym責任者のロレンツォ・マジア教授も、3月の計画発表時に欧州の技術的自立の重要性を挙げ、研究者と学生がロボット技術を学び、開発できる基盤を整える意義を強調していた。
Gen 4は量産準備の段階にある。2026年10月27日時点で、一般顧客向けの出荷日、価格、最小発注数量は公表されていない。NEURAによると、同社の訓練施設ではすでに稼働しており、企業は新世代機で作業の訓練を進められる。導入を検討する企業にとっては、自社工程を学ぶまでの時間と、条件が変わっても繰り返し作業できる信頼性が、評価の軸となる。
元記事: NEURA Robotics Launches Gen 4 Humanoid: Each Arm Makes Its Own Millisecond Decisions