FCC、StarlinkのAWS-3免許取得を承認 衛星サービスの履行条件を適用

2026年10月25日 16:52

米連邦通信委員会(FCC)は2026年10月21日、SpaceX傘下のStarlink Spectrum HoldingsによるAWS-3周波数免許3件の取得を承認した。地上網の整備義務に代え、EchoStarからの周波数取得で設定したものと同じ衛星サービスの履行条件を適用する。スマートフォンと衛星が直接通信する次世代ネットワークに向け、上り回線用周波数の利用地域を広げる動きだ。

■米8州62郡を対象とする免許取得

取得対象は、米ミシシッピ州を拠点とするTristar License Group傘下のTLG Unpaired Holdingsが保有する免許だ。Starlink Spectrum Holdingsが同社の持分を取得することで、免許保有会社をSpaceXの企業グループに組み入れる。

免許のコールサインはWQXW410、WQXW411、WQXW417で、対象地域は8州62郡、米国人口の約4%に相当する。FCCの免許資料によると、いずれも1695~1700MHzのA1ブロックに属し、異なる地域を対象とする各5MHz幅の免許である。1695~1710MHz帯に設けられた、上り回線専用のAWS-3周波数の一部だ。

通信専門メディアのLight Readingによると、Tristarはこれらの周波数をEchoStarの5G網と組み合わせて使う計画だった。EchoStarがSpaceXへの周波数売却に動いたことで、その計画を実行する見通しが失われ、未利用の免許について取得申請が提出された。

TeslaNorthが報じたFCC命令の内容によると、取得を阻止する申立てはなく、FCCは競争への悪影響が生じるリスクは低いと判断した。FCCは、未利用周波数の活用を進め、5G、衛星との端末直接通信、または両者を組み合わせたサービスに向け、地理的に連続したAWS-3の利用基盤を整える意義を認めている。

■衛星サービスの性能で利用実績を確認

10月21日の命令DA 26-1129では、地上網を前提とする整備要件などを免除する一方、衛星サービスによる履行を求める。TeslaNorthによると、上り回線の通信速度と周波数利用効率について、2027年11月30日を起点に2年後、4年後、9年後の達成目標が適用される。

この枠組みの基礎となるのは、FCCが2026年5月12日に採択したEchoStarの免許移転命令DA 26-471だ。同命令は、各免許地域の90%で、屋外にいる利用者に対して一定のサービス性能を確保することを条件としている。上り回線の速度や利用可能な時間の割合を段階的に引き上げる仕組みである。

上り回線の利用者速度は、低い方から5%の位置に当たる値で、1MHz当たり100kbps、200kbps、300kbps以上が各段階の基準となる。対象地域でサービスを利用できる時間の割合も、70%、80%、90%へと高まる。上り専用の今回の免許では、上り回線に関する条件を満たす必要がある。

EchoStarの命令には、中間目標を満たせなかった場合に最終期限を前倒しする措置もある。最初の中間目標の未達では1年、次の中間目標の未達ではさらに2年短縮される。最終条件を満たしていないとFCCの担当部局が判断した場合、該当する免許は自動失効し、SpaceXは後に再提供されても再取得できなくなる。

通常の日程では、最初の確認時点は2029年11月30日、次が2031年11月30日、最終期限は2036年11月30日となる。免許を保有する責任は、衛星を打ち上げることに加え、各免許地域で実際にサービス性能を確保し、その裏付けを提出するところまで及ぶ。

■上り専用周波数が担う役割

端末直接通信(D2D)では、スマートフォンから衛星に向かう通信が上り回線、衛星から端末へ向かう通信が下り回線となる。スマートフォンの送信電力には制約があり、衛星側は遠方から届く弱い信号を受信する必要がある。上り回線用の周波数確保は、この通信経路を設計するための重要な要素だ。

AWS-3の上り専用周波数は、別の下り回線用周波数と組み合わせて双方向通信を構成できる。SpaceXが取得を進めるEchoStarの免許には、AWS-4の2000~2020MHzと2180~2200MHz、Hブロックの1915~1920MHzと1995~2000MHz、最大15MHz幅の上り専用AWS-3が含まれる。取引全体では最大約65MHz幅に相当する。

SpaceXの目論見書によると、EchoStarとの取引対価は約196億ドルで、FCCは2026年5月12日に2段階の免許移転を承認した。5月22日には免許が信託へ移され、SpaceXへの最終移転は2027年11月30日ごろを予定している。

今回のTristar免許は、EchoStarとの取引や2026年6月の周波数オークションによる取得分を補い、上り専用AWS-3の利用地域をつなぐ役割を持つ。TeslaNorthによると、取引後の対象地域におけるSpaceXの携帯向け周波数保有幅は最大75MHzとなる。自ら免許を取得することで、通信事業者との提携に加え、自社周波数によるネットワーク設計の選択肢も広がる。

■衛星群の認可と800MHz帯の取得契約

FCCは10月6日、SpaceXが申請した最大1万5000基のD2D衛星システムを一部承認した。衛星通信専門誌Via Satelliteなどによると、衛星は高度326~335kmで運用する計画で、EchoStarの周波数を使う移動衛星サービス、地上携帯網の周波数を使う衛星補完通信、地上網へ接続するバックホールなどを担う。

衛星群の展開期限は、半数が2032年10月7日、全体が2035年10月7日である。衛星の配備期限と、個々の周波数免許に課されるサービス性能の期限は、それぞれネットワークの展開と利用実績を確認する節目となる。

10月8日には、Grain Managementが全国規模の800MHz帯免許をSpaceXへ売却する契約を発表した。対象は最大14MHz幅のペア帯域で、取引にはFCC承認などの条件が付く。ウォール・ストリート・ジャーナルは対価を約80億ドルと報じており、当事者は金額を公表していない。

800MHz帯のような低い周波数は、一般に中帯域より回折しやすく、建物などによる遮蔽への対応にも役立つ。Grainは、地上と宇宙を組み合わせた次世代D2Dサービスを支える取引と説明している。ロイターによると、発表後の10月8日の時間外取引では、AT&T、Verizon、T-Mobile USの株価が約6%下落した。

■拡大する利用規模と次世代サービス

SpaceXが公表した目論見書によると、2026年3月31日時点のStarlink Mobileは約650基の専用衛星で、約30カ国の月間ユニーク端末約740万台にサービスを提供していた。さらに、Investing.comが掲載した第3四半期決算説明会の発言記録では、同社は9月末の月間利用者が2200万人を超えたとしている。

SDxCentralによると、SpaceX幹部は3月のMWC 2026で、Starlink Mobileの月間利用者を2026年末までに2500万人超へ増やす目標を示した。同社のマイケル・ニコルズ上級副社長は、次世代衛星では現行世代の約100倍のデータ密度を目指すと説明している。これらは同社が示した目標値である。

米国ではT-Mobileが「T-Satellite」として衛星直接通信を提供する。衛星通信専門メディアAdvanced Televisionによると、同社のジョン・フライアー最高顧客責任者は2026年7月、衛星接続がネットワーク全体の利用量に占める割合を約0.0002%、夏の繁忙期には約0.0003%と説明した。

販促上の見せ方にも変化がある。PhoneArenaは10月、T-Mobileが主要な衛星サービス紹介ページからStarlinkへの言及を削り、T-Satelliteの名称を前面に出したと報じた。同媒体は、カナダのRogers CommunicationsのウェブサイトでもStarlinkへの言及が見当たらないと伝えている。

SpaceXは、より広いモバイル通信事業への展開を目指している。第3四半期決算説明会では、2027年にStarlink Mobile V2衛星の打ち上げを進め、取得する周波数を統合して2028年初めのサービス開始を目指す方針を示した。別途、固定向けブロードバンドを担うV3衛星については、同社の目論見書で1基当たり下り毎秒1テラビットの設計容量を掲げ、2026年後半からの展開を計画していた。

日本では、KDDIと沖縄セルラーが2025年4月10日に「au Starlink Direct」を開始した。既存のau周波数を用い、対応端末が地上網の圏外でStarlink衛星と直接通信するサービスである。KDDIは2026年9月、次世代のStarlink Mobile V2についても契約締結を発表している。

■10月29日はSCS規則の改正案を審議

衛星直接通信を巡る制度整備も続く。FCCの10月29日の公開会合では、地上携帯網を衛星で補うSupplemental Coverage from Space(SCS)の規則を見直す規則制定案告示を審議する予定だ。SpacePolicyOnlineによると、提案にはSCS対象周波数を482MHz追加する構想や、SCSと移動衛星サービスの規則を整理する検討が含まれる。

FCCがSCSの制度を採択したのは2024年3月である。衛星事業者と地上通信事業者が協力し、地上携帯網向けの周波数を衛星から補完的に利用する仕組みで、T-MobileとStarlinkのサービスもこの制度を利用している。10月29日の議題は、規則案について意見を募る手続きを始めるものだ。

対象帯域が広がれば、Starlinkに加え、通信事業者との提携を進めるAST SpaceMobileやLynk Globalなどにも、周波数やネットワーク設計の選択肢が増える可能性がある。自社で免許を取得する方式と、地上事業者の周波数を活用する方式の双方で、D2Dの事業基盤が整えられつつある。

履行条件の運用を考えるうえでは、過去の地上無線サービスの事例も参考になる。米政府説明責任院(GAO)が2014年に公表した調査では、対象とした5種類の無線サービスの免許の9%について期限延長が申請され、その74%が認められていた。GAOは、予期しない問題への柔軟な対応を評価する意見と、延長が整備義務の実効性を弱めることを懸念する意見の両方を紹介している。

今回の免許取得で問われるのは、確保した周波数を各地域の通信サービスへどう結び付けるかだ。上り回線の速度、利用可能な時間、周波数利用効率を段階的に確認する条件は、その進展を評価する具体的な基準となる。

元記事: FCC Trades Tower Mandate for Orbital Milestones in Starlink Mid-Band License Transfer

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