英バークレイズ、年内に約5000人削減へ AI活用で開発者を含む支援部門を効率化
2026年10月25日 16:52
英金融大手バークレイズは10月22日、2026年中の構造改革に伴い、世界の従業員の約5%に当たる約5000人を削減する見通しを明らかにした。対象の約6割は開発者を含む支援部門で、同行はAIによる生産性向上を効率化の一因に挙げている。
同日公表した2026年7〜9月期決算では増収増益となり、上限5億ポンドの自社株買いも発表した。労組Uniteは、技術の進歩に合わせて従業員のスキルを高め、雇用を維持するよう求めている。
■約5000人を削減、約6割は支援部門
削減計画は10月22日木曜日の第3四半期決算発表に合わせて示された。BBCによると、約1000人分のポストはすでに廃止されており、残る約4000人分を年末までに削減する予定だ。
アナ・クロス最高財務責任者は決算説明で、構造改革の約6割が支援部門に関係すると説明した。AIによって従業員の生産性が高まり、開発者の人数も減るとしている。同行は、これらの施策による2027年の総効率化益を11億ポンド超と見込む。
C.S.ヴェンカタクリシュナン最高経営責任者は、これまでの効率化の大部分を支えてきたのは、技術への投資と業務プロセスの簡素化だと説明した。AIの役割は今後さらに重要になる可能性があるとし、大規模な活用の前提として基盤整備の必要性を挙げた。
BBCによると、コスト削減の重点は英国の個人向け銀行部門にあり、投資銀行部門も対象となる。英国向けの事務処理の一部はインドで行われており、同国でも相当数の削減が見込まれるという。
■Claudeを顧客対応、メール処理、開発業務に展開
バークレイズはAIの利用範囲を広げている。Anthropicは10月1日、同行との協業拡大を発表し、ソフトウェア開発の迅速化、既存システムの刷新、業務効率化にClaudeを活用すると説明した。
Anthropicによると、同行の「Colleague Knowledge Assistant」は2025年から稼働している。英国の個人向け銀行部門で、従業員が顧客対応に必要な情報を探すためのツールであり、2026年10月1日の発表時点で1万6000人超が利用し、検索回数は100万回を超えた。
グローバル・マーケッツ部門では、Claudeを使ったシステムが顧客から届くメールを分類し、必要な情報を補い、適切な処理先を判断している。Anthropicの発表では、処理量は1日約12万通で、手作業を減らしながら担当者の対応を支援する。
コーディング支援ツール「Claude Code」は、2026年末までに開発者の50%、2027年にはソフトウェアエンジニアの過半数が利用する見通しだ。同行は、既存基盤の刷新やソフトウェア品質の向上に活用し、技術者が複雑な課題に集中できるようにする方針を示している。
■独自研究が捉える、職業を構成するスキルの変化
バークレイズは、労働市場に対するAIの影響も研究している。中国のテックメディア網易科技によると、同行が9月22日に発表した「AI Automation and Amplification Framework(3A Framework)」は、830を超える職業を対象に、AIによる自動化と能力向上の可能性を分析したものだ。
同報道によると、分析の基本単位は、職業を構成するスキルである。情報や言語などを扱うAIと、ロボットなどの物理的な作業を担うAIを対象とし、前者による自動化の影響を受けやすい職業は、コンピューター、工学、科学の分野に集中したという。
一方、この研究はAIが人の能力を高める側面も扱っている。網易科技によると、現在のAIで高度に再現可能と評価されたスキルは約20%だった。職業を複数のスキルに分ける視点は、情報処理をAIに任せ、人が判断や対人対応を担うといった仕事の組み替えを考える手掛かりになる。
■増収増益と自社株買い、効率化投資も拡大
バークレイズの2026年7〜9月期の収益は前年同期比3%増の74億ポンド(約1兆5500億円)、税引前利益は12%増の23億ポンド(約4830億円)だった。1株当たり利益は18%増え、費用収益率は63%から62%に改善した。
有形株主資本利益率(RoTE)は7〜9月期単独で11.7%、1〜9月累計では13.8%となった。ヴェンカタクリシュナン氏は、2026年のグループ目標は達成済み、または達成に向けて順調に進んでいると説明した。
ロイターによると、税引前利益のアナリスト平均予想は約24億ポンドだった。投資銀行部門の収益は約31億ポンドで、予想の約33億ポンドを下回った。株式業務の収益は47%増の10億1000万ポンド(約2120億円)となる一方、債券・為替・商品を扱うFICC業務は19%減の10億1200万ポンド(約2130億円)だった。
同行は2026〜2028年に約20億ポンドの総効率化益を目指している。2025年通年の税引前利益は約91億ポンドで、決算資料では前年比13%増だった。2028年のRoTE目標には14%超を掲げる。
今回発表した自社株買いの上限は5億ポンドだ。同時に、構造改革費用として7〜9月期に2億100万ポンド(約422億円)を計上し、10〜12月期にも約3億ポンドを予定する。同行は技術を使って費用基盤を縮小し、事業への追加投資余力を生み出す方針を示した。
■金融業界で進む人員構成の見直し
AIや自動化を取り入れた人員構成の見直しは、他の金融機関でも進んでいる。スタンダードチャータードは5月19日、2030年までに管理・支援機能の職務を15%超削減する方針を発表した。ロイターの当時の試算では約7000人分に相当し、同行は自動化とAIの利用拡大を掲げている。
HSBCについては、ブルームバーグが3月、今後数年で約2万人に影響する可能性のある削減を検討していると報じた。これを伝えたロイターによると、検討は初期段階で、最終決定前だった。HSBCのジョルジュ・エルエデリーCEOは5月、AIが一部の仕事をなくす一方で新たな仕事も生み出すと述べ、再訓練を進めていると説明した。
Fintech News Networkの集計では、2026年1〜7月にAIとの関連が示された金融・フィンテック業界の削減発表は20件、対象は7万415人分だった。2025年通年の7件、約8200人分に対し、月平均の対象人数は約15倍に増えたという。この集計には、将来の削減計画や、AI以外の再編要因も含む案件が入っている。
より長期の見通しとして、ブルームバーグ・インテリジェンスは2025年1月、銀行の情報・技術部門幹部への調査に基づき、その後3〜5年で世界の銀行の雇用が最大20万人分減る可能性を示した。ブルームバーグによると、調査対象の幹部は平均で約3%の人員純減を見込んでいた。
金融以外でも、AIを理由に挙げる削減発表が増えている。米雇用支援会社Challenger, Gray & Christmasによると、米国企業が2026年4月に発表した削減計画のうち、AIが理由として挙げられたのは2万1490人分だった。1〜4月累計では4万9135人分となる。
■労組は再訓練と雇用維持を要求
Uniteのシャロン・グラハム書記長は10月22日の声明で、バークレイズがAIを口実に従業員を切り捨てようとしていると批判した。新技術によって職場が変わっても働き続けられるよう、雇用主は従業員のスキル向上に力を入れるべきだと訴えた。
Uniteは、新技術の導入を従業員とともに進め、効率化の利益を労働者にも分配するよう求めている。金融担当のリック・コイル氏は、同行と緊急の協議を行っていると説明し、AIを含む新技術に適応するための支援を要求した。
同行には過去にも大規模な人員削減の経緯がある。英経済メディアCity AMによると、バークレイズは2023年に世界で約5000人分の人員を削減した。経営階層の縮小、技術や自動化の改善を含む効率化策の一環で、解雇に加えて採用凍結後の欠員不補充も含まれていた。
また、City AMは2025年6月、同行が投資銀行部門の効率化を検討するため、マッキンゼーを起用したと報じている。検討対象には業務の重複や自動化の余地が含まれた。今回の再編でも、技術投資によって仕事の進め方を変える方針と、再訓練によって雇用を維持すべきだという労組の要求が並んでいる。
■英国では銀行課税も議論に
決算発表は、ジョン・ヒーリー英財務相が10月28日に予定する初の予算案発表を前に行われた。ロイターは、銀行への追加課税が盛り込まれる可能性を報じている。
英国労働組合会議(TUC)は10月22日、バークレイズの増益を受け、予算案で銀行課税を強化するよう求めた。銀行利益への上乗せ税率を2023年の引き下げ前の8%へ戻すだけでも、4年間で90億ポンド(約1兆8900億円)の税収を確保できるとの試算を示している。
銀行の効率化と利益の使い道は、従業員への支援、株主還元、公共財源という複数の面から問われている。バークレイズでは、年末までの人員削減計画と並行して、Uniteが再訓練と雇用を巡る協議を進めている。
元記事: Barclays Cuts 5,000 Jobs After Its Own AI Research Flagged Developer Roles