シチリア沖でM5.5の地震、津波警報は約1時間後に解除 学校や公共施設で避難

2026年10月25日 13:41

イタリア・シチリア島北方の南部ティレニア海で2026年10月23日、モーメントマグニチュード(Mw)5.5の地震が発生した。エオリア諸島やシチリア北岸で揺れが感じられ、学校や公共施設で予防的な避難が行われた。

イタリア国立地球物理学火山学研究所(INGV)の津波警報センター(CAT)は、地震発生後に津波に関する情報を送り、続いてオレンジ警報へ引き上げた。近隣の潮位観測で津波の発生を示す変動が認められず、警報は約1時間後に解除された。

■20日夜から続いた地震活動

INGVによると、一連の地震活動は10月20日夜から観測されていた。震源域はエオリア諸島最西端のアリクーディ島から北西約30kmの海域に位置する。以下、時刻は特記した場合を除きイタリア現地時間である。

イタリア紙イル・ファット・クオティディアーノによると、22日には同じ海域で7回の地震があり、最大はM3.7だった。専門メディアのMeteoWebは、23日午前2時10分にもM3.4、深さ約32kmの地震が発生したと報じた。

23日午前11時51分には、深さ約24kmでローカルマグニチュード(ML)4.3の地震が発生した。続いて午後0時19分、日本時間午後7時19分に、今回最大のMw5.5の地震が起きた。INGVが当初公表した震源の深さは約9kmだった。

イル・ファット・クオティディアーノは、23日の約2時間に12回の地震が起きたと報じている。INGVの同日午後2時20分時点の集計では、20日夜からの地震は29回で、23日午後0時24分にはML4.0の地震も記録された。

■発生4分後に情報、10分後にオレンジ警報

CATが国家市民保護局(DPC)へ最初の「Information」を送ったのは午後0時23分だった。地震発生から4分後で、迅速計算によるマグニチュード5.7の推定値と震源位置に基づく情報だった。

午後0時29分には、警戒レベルを「Advisory」に当たるオレンジ警報へ引き上げた。CATの説明では、想定された津波の波高は50cm未満、陸上を駆け上がる高さである遡上高は1m未満だった。DPCはSiAMの手順に従い、地方当局や市民保護に関わる機関へ情報を伝達した。

その後、CATは環境保護研究所(ISPRA)が運用するストロンボリッキオとジノストラの潮位計データを確認した。南部ティレニア海で津波が進行していることを示す変動が認められず、午後1時22分に解除メッセージを送った。

CATによると、今回の地震は、確率的津波予測「PTF」に基づく新しい警戒レベル評価手順の運用開始後、地中海で初めて対応した事例だった。PTFは、津波の発生や伝わり方に伴う不確実性を考慮し、沿岸への影響を確率的に評価する手法である。

■学校や公共施設で予防避難

イタリア公共放送RAIによると、パレルモの一部の学校では、地震の揺れを受けて児童・生徒を校外へ避難させた。ANSA通信は、メッシーナでも学校や公共施設から人々が退避し、トラパニでは裁判所が避難対象になったと報じている。

イル・ファット・クオティディアーノによると、アリクーディ島やフィリクーディ島では住民が屋外に出た。エオリア諸島の学校でも生徒らが教室を離れ、リーパリとサリーナ島の3自治体では、市民保護当局がカラビニエリの協力を得て状況を確認した。

地元メディアStrettoWebによると、市民保護当局の連絡・状況確認の対象には、パレルモ、バゲリーア、ボロニェッタ、ボンピエトロ、カルタヴトゥーロなどが含まれた。シチリア州は、パレルモ県とメッシーナ県の自治体に、建物の安全確認、受け入れ場所の点検、特に脆弱な施設での予防措置を求めたと発表した。

ANSA通信は、フィリクーディ、サリーナ、アリクーディで集落から離れた場所の斜面崩壊を報じた。同通信の23日の報道では、人や建物への被害の報告はなかった。トラパニ県の政府出先機関も、同県では人的・物的被害や重要な公共サービスの中断は報告されていないと発表した。

■津波を生む海底の変形と震源の深さ

地震による津波は、断層運動によって海底が隆起・沈降し、その上の海水が動かされることで生じる。海面の変動が周囲へ伝わり、沿岸では水深や海底・海岸の地形に応じて波の高さが変化する。

震源の深さは、海底がどの程度変形するかを左右する要素の一つである。気象庁の解説では、震源が浅いほど断層のずれによる海底の地殻変動が大きくなり、津波が発生しやすくなる。津波の評価では、地震の規模に加え、位置や深さ、断層運動、沿岸までの距離を考慮することが重要になる。

米地質調査所(USGS)は、太平洋津波警報センターの手順と過去の観測に沿った一般的な目安として、M7.6~7.8では震源近くで破壊的な津波が発生する可能性があり、M7.9以上ではより広い地域に影響が及び得ると説明している。一方、SiAMでは、担当海域の推定M5.5以上の地震を津波評価の対象とし、各沿岸で予想される影響に応じて情報や警報を送る。

■3機関が担うイタリアの津波警報網

SiAMは、地中海の地震による津波を対象とするイタリアの国家警報システムである。2017年2月17日付の首相指令で正式に設けられ、同年6月5日付の官報第128号に掲載された。

運用は3機関が分担する。CAT-INGVは地震を監視し、津波発生の可能性や沿岸への到達時刻などを評価する。ISPRAは潮位観測データを提供し、DPCはシステム全体を調整するとともに、地方当局などへ情報を伝達する。

CATは2014年10月に国際的な試験運用を始め、2017年1月から国内向けの本格運用に入った。24時間体制で監視し、ユネスコ政府間海洋学委員会が調整する北東大西洋・地中海・接続海域津波警報システム(NEAMTWS)の情報提供機関も務める。フランスのCENALT、ギリシャのNOA/HL-NTWC、トルコのKOERI-RETMCなども、この国際的な枠組みに参加している。

SiAMのメッセージには、津波が予想されない場合の緑の「Information」と、オレンジの「Advisory」、赤の「Watch」がある。赤は、沖合の波高が0.5mを超える、または遡上高が1mを超える影響が想定される場合に当たる。オレンジでも海岸近くの低地にいる人には危険があり、地域の計画に基づく避難が必要になる。

■沿岸近くでは迅速な評価と行動が重要に

地中海は比較的小さく、陸地に囲まれた海域である。沿岸近くで津波が発生すると、地震データの記録・解析や情報伝達を進めている間に、波が海岸へ到達する場合がある。イタリア政府は、SiAM設立時の説明でも、この時間的な制約を挙げていた。

CATの過去の対応例では、2018年10月25日にギリシャのザキントス島付近で発生したM6.8の地震について、最初の警報メッセージを地震発生から8分後に送った。迅速な震源推定と、潮位観測による津波の確認を組み合わせるのが運用の基本となる。

オレンジ警報時の避難区域は、赤の警報時より狭く設定される。警戒レベルに応じて海岸や低地から離れる行動と、観測結果を踏まえた情報更新を組み合わせる仕組みだ。今回についてCATは、地震・津波影響の計算から地方への情報伝達までの手順が良好に機能し、システムの運用を確認する機会になったと評価した。

■浅い地殻内地震と深発地震が共存する地域

エオリア諸島周辺は、南部ティレニア海の背弧海盆とカラブリア弧が接する複雑な地域にある。イオニア海側の海洋プレートがイタリア南部の下へ沈み込み、その内部に沿う和達・ベニオフ帯では、深さ約550kmに達する地震活動が研究で報告されている。

ストロンボリ、ブルカノ、リーパリ、パナレーア、サリーナ、フィリクーディ、アリクーディの7島は、こうした沈み込みに関係する火山弧を構成する。INGVによると、この火山弧は第四紀に形成・発達した。岩石学の研究では、カルクアルカリ質や高カリウムのカルクアルカリ質の岩石が広く分布し、中部から東部にはショショナイト質の岩石も見られる。

地域の主要な構造の一つが、北北西―南南東方向に延びるエオリア・ティンダリ・レトヤンニ断層系(ATLFS)である。シチリア沿岸からパッティ湾を通ってエオリア諸島へ延び、右横ずれと引き伸ばしを伴う変形が研究されている。沈み込むプレートの側縁に発達する「STEP断層(Subduction-Transform Edge Propagator fault)」の浅部の表れと解釈されている。

INGVの今回の解析では、震源域はアリクーディ島とウスティカ島の間にある南北方向の圧縮が働く領域に位置し、主要な地震の断層運動も圧縮的だった。同研究所は、この海域では浅い地殻内地震が繰り返し起きていると説明している。周辺の深発地震の例としては、10月8日のML4.7があり、INGVの更新後の震源深さは375kmだった。

■活動は24日も継続、建物の確認を進める

INGVによると、今回のMw5.5は、この地域では1980年5月28日のMw5.7以来の大きさだった。地震活動は24日も続き、同日午後6時時点で、23日の最大地震以降に154回の地震を記録した。最大地震を含む集計ではM4.0以上が4回、うちM5.0以上が2回だった。

地震活動を追う際には、発生回数と規模の両方を見る必要がある。気象庁の解説では、本震後の余震回数には時間とともに減る統計的な傾向がある一方、大きな余震などに伴って一時的に増えることもある。INGVは今回の活動についても監視と解析を続けている。

シチリア州の市民保護当局は、自治体に対し、学校や病院など重要施設の点検と、脆弱な建物での公共活動の一時停止の検討を求めた。パレルモ市も23日、学校と大学施設の閉鎖や建物・インフラの確認を含む予防措置を発表した。津波警報の解除後も、地震活動に対応する安全確認が進められている。

元記事: Shallow Aeolian Swarm Triggers Tsunami Alert Across Sicily, Schools Evacuated

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