Dell、AI Factoryを拡充 Vera CPUとGroq LPUでエージェント型AIの処理を分担

2026年10月24日 14:56

Dell Technologiesは2026年10月21日、ベルリンで開催されたNVIDIA GTCで「Dell AI Factory with NVIDIA」の拡充を発表した。Vera CPU搭載の空冷サーバー、256基のCPUを収容するラック、Groq 3 LPU搭載の推論システム、コンテナ型データセンターを展開し、企業のエージェント型AIを開発から本番運用まで支える。

新製品群の軸となるのは、エージェントの制御やコード実行を担うCPUと、モデルの計算を担うGPU、低遅延の推論処理を加速するLPUの役割分担だ。既存設備に導入しやすい空冷サーバーと、高密度なラック単位のシステムを用意し、処理内容や設備条件に応じた構成を提供する。

■エージェント型AIで増える処理を分担

エージェント型AIは、モデルによる応答生成に加え、ツールやAPIの呼び出し、コード実行、状態管理、結果の評価などを組み合わせる。複数のエージェントを連携させる場合には、モデル推論と、その前後にあるCPU処理の双方を支える能力が必要になる。

Dellは、Omdiaの2026年6月の調査を引用し、エージェント型AIが2028年までに企業向けの最大のワークロードとなり、2030年までに生成AIの約3倍の速さで成長するとの予測を示した。さらにGoldman SachsとGartnerの予測を引用し、エージェント型AIによってトークン消費が24倍に増える一方、推論コストは2030年までに90%超低下するとの見通しを紹介している。

こうした処理を支える構成の一つが、CPUとGPUのリソースを分離し、それぞれの必要量に応じて拡張する方式だ。CPU側でツール実行やエージェントの制御を処理し、GPU側でモデル推論を実行すれば、用途ごとに計算資源や電力、冷却能力を割り当てやすくなる。Dellは、新しいCPUラックをこの分離型構成に位置付けている。

NVIDIAの創業者兼CEO、ジェンスン・フアン氏は発表に寄せたコメントで、推論し、ツールを使い、学習するAIエージェントには新しいコンピューティング基盤が必要だと説明した。Dellと共同で、デスクサイドからデータセンターまで、企業がAIエージェントを安全かつ大規模に運用するための基盤を整えるとしている。

■空冷のR8822と256 CPUのM9882

Dell PowerEdge R8822は、標準的な19インチラックに対応する空冷式の2ソケット、2Uサーバーだ。Dellは2026年10月中の提供開始を予定しており、エージェントの制御やサンドボックスでの実行、強化学習、データ処理、分析を用途に挙げる。最大4基のダブルワイドGPUも搭載できる。

搭載するArmベースのNVIDIA Vera CPUは、1基当たり88個のOlympusコアと176スレッド、最大1.2TB/sのメモリ帯域幅を備える。NVIDIAは2026年3月の発表で、従来のラック向けCPUに対して2倍の効率と50%高い処理性能を掲げた。同社の技術資料では、コンパイラーやスクリプト、エージェントのツール呼び出しなどを含むサンドボックス処理での性能向上を説明している。

R8822の特徴は、空冷の標準ラック環境でVera CPUを利用できる点にある。高密度の液冷ラックとは異なる導入経路となり、既存施設の電力や冷却能力に合わせて、エージェント実行用のCPU資源を追加できる。

一方、Dell PowerEdge M9882は、48Uラック1台に256基のVera CPUを搭載する。合計コア数は2万2528で、エージェントの制御、ツール利用、コード実行、評価を担当し、モデル推論用のGPUインフラと併用する。提供開始は2027年第1四半期の予定だ。

NVIDIAが公表するVera CPU Rackのリファレンス仕様は、最大400TBのLPDDR5Xメモリと最大300TB/sの合計メモリ帯域幅を備え、2万2500以上のCPU環境の同時実行を想定する。StorageReviewによると、リファレンス構成には64基のBlueField-4 DPUも含まれる。同媒体は、2026年10月21日時点でM9882独自のメモリ・ネットワーク構成は未公表としている。

CPU資源を独立して拡張する設計は、他社にも広がっている。AMDは10月12日に発表したHelionで、第6世代EPYCによる最大3万2768コアのCPU専用ラックと、CPU・GPUを組み合わせた構成を提示した。OCP仕様に基づく設計をコミュニティーに提供する計画で、パートナーによる構成の提供開始を2026年11月に予定している。

■Groq LPUがGPU推論を補完する仕組み

Dell PowerEdge XE9810は、NVIDIA Groq 3 Language Processing Unit(LPU)を採用するラックスケール推論システムだ。直接液冷式のコンピュートトレイ16基を搭載し、高スループットが求められる本番環境のエージェント型AIを対象とする。Dellは既存GPUクラスターを補完するシステムとして、2027年第1四半期に提供する予定だ。

GPUとLPUでは、計算とメモリの設計上の重点が異なる。GPUが採用するHBMは、DRAMを積層して大容量と高帯域幅を両立するメモリで、モデルの重みや長い入力の処理を支える。NVIDIAの公表仕様では、H200は141GBのHBM3eと4.8TB/sのメモリ帯域幅を備える。Blackwell世代では、B200の公表仕様に192GBのHBM3eを備える構成もある。

例えば700億パラメーターのモデルをFP8で保持する場合、重みだけで概算70GBを使う。実際の推論では、これに加えて中間データや、生成済みの文脈に関する情報を保持するメモリも必要となる。GPUの大容量メモリは、こうした処理を担う基盤となる。

一方、NVIDIAによるとGroq 3 LPUは、チップ当たり500MBのSRAMを内蔵し、150TB/sのSRAM帯域幅を備える。同社のGroq 3 LPXリファレンスラックは256基のLPUを接続し、合計128GBのSRAMと40PB/sのチップ内メモリ帯域幅を提供する。これらはNVIDIAのリファレンス仕様であり、Dell製XE9810の製品仕様とは区別される。

低遅延化を支えるのは、SRAMに加え、コンパイラーと実行時ソフトウェアが計算、データ移動、通信を明示的に管理する設計だ。NVIDIAは、処理の進み方を予測しやすくし、不規則な待ち時間を減らす仕組みとして説明している。エージェントがモデルを繰り返し呼び出す用途では、トークン生成速度と応答時間の安定性が、処理全体の進み方に関わる。

NVIDIAの技術資料が示す構成では、Vera Rubin NVL72のGPUが入力を処理するプリフィルや、生成時の注意機構の計算を担い、LPXがフィードフォワードネットワークや混合エキスパートモデルの一部処理を加速する。同社は、1ユーザー当たり毎秒400トークンという条件で、GB200 NVL72比の電力当たり推論スループットを最大35倍とする比較を示した。収益機会を最大10倍とする試算も、サービスの価格帯や処理量を前提とした同社の予測である。

■Groqとの協業とコンテナ型の導入モデル

Groq 3 LPUは2026年3月のGTCで発表された。その背景には、2025年12月24日にGroqが公表したNVIDIAとの非独占的な推論技術ライセンス契約がある。契約に伴い、創業者ジョナサン・ロス氏、社長サニー・マドラ氏らがNVIDIAへ移る一方、Groqは独立企業として推論クラウド事業を継続するとした。

Groqは2026年8月、Dellと協力してGroq 3 LPXとVera Rubin NVL72を推論クラウドに導入する計画を発表した。CTOのシンクレア・シューラー氏は、対話性の高いAI推論を顧客に提供するため、両システムを大規模に展開すると説明している。Dellのコンピュート・ネットワーキング担当幹部、Arunkumar Narayanan氏も、Groqの推論クラウドに必要な速度と規模を支えるインフラを提供するとしている。

大規模な導入を施設単位で支えるのが「Dell Modular Data Center with NVIDIA DSX POD」だ。コンピュート、ストレージ、ネットワーク、ラックレベルの配電、液冷をコンテナ内にまとめ、工場で統合・検証してから出荷する。容量はコンテナを追加する形で拡張し、2027年初頭の提供開始を予定する。

Dellは、設置側のインフラが準備された場所であれば、導入期間を6カ月から14日に短縮できるとしている。工場で統合を済ませることで、現地での組み立てや検証を簡素化する設計だ。同社は、この製品をモジュール型データセンターの統合、導入、運用管理に関する20年以上の知見に基づくものと位置付ける。

設備計画では、R8822の空冷構成、Vera CPU Rackの高密度な液冷設計、XE9810の直接液冷方式を踏まえ、導入先の電力と冷却能力を確認する必要がある。コンテナ型では、工場で統合する範囲と、設置側で準備する設備の範囲が、導入工程を決める重要な条件となる。

■デスクサイド製品と導入テンプレートも拡充

Dell Pro Precision with GB10には、64GBのユニファイドメモリ構成を追加する。搭載するのはNVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchipで、ArmベースのCPUとBlackwell GPUを統合する。Dellが発表した提供開始予定日は2026年10月23日で、日本語の公式発表では、デスクサイド製品の国内提供時期は異なるとしている。

Dellは2台・4台の接続構成に加え、最大8ノードのGB10クラスターへの拡張も紹介した。モデル容量や同時利用者数に合わせて、個人開発者からチーム利用へ規模を広げる狙いだ。NVIDIAも同じ10月23日から、パートナー各社によるDGX Spark 64GB構成を4999ドル(約78万5000円)から提供すると発表している。

さらにDell Pro Precision with GB300にはWindows対応を追加する。Dellによると、NVIDIA GB300 Grace Blackwell Ultra Desktop Superchipを採用し、最大748GBのコヒーレントメモリと最大20ペタフロップスのFP4 AI演算性能を備える。発表時点の提供時期は「近日」としている。

ソフトウェア面では「Dell Deskside Agentic AI Solutions for NVIDIA」の検証済み導入テンプレート5種類をGitHubで公開した。対象はエージェント型コーディング、映像検索・要約のVSS、NVIDIA NemoClaw、NemoClaw上のHermes Agent、高等教育向けAIラボだ。用途ごとのハードウェア、モデル、ソフトウェア構成を示し、開発者1人の環境から1000台以上の全社展開までを支援する。

■ソフトウェア、セキュリティー、運用を一体化

Dell AI Factory with NVIDIAでは、Reflectionのオープンウェイトモデル「Beam」を検証済みとし、利用可能にした。Apache 2.0ライセンスで提供され、ソフトウェア開発や長期にわたるエージェント型タスクを対象とする。Mistralによるナレッジアシスタントとエージェント型AIプラットフォームも利用できる。

Dellの提供計画では、DynatraceによるAIの可観測性機能と、Fogsphereによるコンピュータービジョン機能を2026年第4四半期に追加する。SUSE Linuxは、2027年第1四半期初頭に対応OSへ加わる予定だ。

セキュリティーでは、ハードウェアを起点とするDellのインフラ、プラットフォーム運用を管理するRed Hat AI Factoryソフトウェア、実行時のガバナンスを担うNVIDIA OpenShell Reference Architectureを組み合わせる。エージェントの実行環境、ネットワーク、データ、インフラを横断して管理する構成である。

2027年第1四半期には「Dell Managed Services for AI」も提供する予定だ。リソースの最適化、アクセス管理、AIの利用量とコストの管理を支援し、開発者向けのセルフサービスとIT部門の統制を両立させる。

■顧客拡大と保有型インフラの経済性

Dellによると、2026年8月の受注データに基づくDell AI Factory with NVIDIAの顧客数は6500社超となり、前四半期の5000社から増えた。同社は、自社で所有・管理するインフラ上で、エージェント型AIを実証段階から本番運用へ移す需要を取り込もうとしている。

Dellは、Signal65とFuturum Groupの分析を引用し、2年間の運用でパブリッククラウドに比べ最大90%のコスト優位が得られるとの試算を紹介した。Dellが委託した分析で、ナレッジ業務、営業、ソフトウェア開発を対象に、デスクサイド製品とデータセンター製品を評価している。クラウドの推定割引、設備の設置・電力・管理、Dellのサポート費用を含む、条件付きの比較である。

保有型とクラウドの比較では、利用率、運用期間、必要なモデル、応答性能、管理費用が費用対効果を左右する。継続的に稼働するエージェントでは、トークン従量課金と設備保有費用を、想定する処理量に沿って比較することになる。Dellのマイケル・デル会長兼CEOは、AIインフラを成長や生産性、競争力につながる投資として位置付けている。

Moor Insights & Strategyのアナリスト、マット・キンボール氏は発表に寄せ、顧客の関心がインフラ構築から測定可能な事業成果へ移っていると指摘した。検証済みのソリューション、エコシステム、自動化、サービスを組み合わせることが、本番導入を支えると評価している。

Dellの製品拡充は、CPUによるエージェント実行、GPUによるモデル計算、LPUによる低遅延処理を、導入規模に合わせて組み合わせる選択肢を広げる。AMDのHelionのような設計や、ハイパースケーラー、CoreWeaveなどのクラウド型AI基盤もある中、2027年に向けては、性能だけでなく設備条件、運用支援、総費用を含めた提案力が競争の焦点となる。

元記事: Dell AI Factory at GTC Berlin Adds Inference Chip Tier GPU Clusters Structurally Cannot Match

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