ESA「Space Rider」実物大試験機が墜落、着陸用パラフォイルが展開中に分離
2026年10月24日 14:26
欧州宇宙機関(ESA)が開発する再利用型無人宇宙船「Space Rider」の実物大試験機が、2026年10月6日、イタリア・サルデーニャ島での投下試験中に墜落した。着陸用パラフォイルが展開中に分離したもので、ESAは原因究明に向けた独立調査を進めている。
■高度約3kmからの投下試験で墜落
European Spaceflightによると、ESA宇宙輸送部門ディレクターのジェラルディーヌ・ナジャは10月22日のメディア説明会で、事故の経緯を説明した。試験機はサルデーニャ島の軍事試験場で、ヘリコプターから高度約3kmで投下された。
最初に開く減速用のドローグパラシュートは正常に作動した。その後、着陸地点へ機体を誘導する大型のパラフォイルが展開中に分離し、試験機は地面に衝突した。
今回使われたのは、再突入モジュールの質量や形状、慣性特性を再現した実物大モデルだ。降下から着陸までの一連の動作を評価するため、自律誘導・航法・制御用の機器を搭載していた。
ESAの広報担当者はSpace.comに対し、パラフォイル展開時の異常について独立調査を進め、根本原因と今後の対応を検討していると説明した。機体の部品は回収されており、調査結果が追加試験やシステム改修の判断材料となる。
■宇宙で実験し、試料を地上へ持ち帰る
Space Riderは、欧州初の再利用可能な軌道宇宙船として開発されている。ESAは、実験装置や試料などの搭載物を低軌道へ運び、宇宙での実験後に地上へ持ち帰る輸送基盤の構築を目指す。
ESAの2026年4月の説明によると、軌道上での滞在期間は約2カ月を想定している。任務終了後は再突入モジュールが搭載物とともに帰還し、回収・整備を経て次の飛行に備える計画だ。
想定する用途には、微小重力環境を利用した医薬品、生物医学、生物学、物理科学の実験や、宇宙で使う技術の実証がある。材料や生物試料を持ち帰ることで、研究者は地上の設備を使った詳細な分析も行える。
実験結果をデータとして受信することに加え、実物を回収できる点が、この輸送方式の価値となる。機体の再利用と搭載物の回収を組み合わせ、軌道上での研究を繰り返し実施できる仕組みを整える狙いだ。
■パラフォイルで自律誘導し、滑走路へ着陸
Space Riderの再突入モジュールは、翼の代わりに胴体そのもので揚力を生むリフティングボディ形状を採用する。再突入後の降下ではパラシュートを順に展開し、最終段階を操縦可能なパラフォイルで飛行する設計だ。
主に減速を担うドローグパラシュートに対し、翼状のパラフォイルは揚力を利用して滑空し、進行方向を制御する。目標地点へ誘導しながら降下することで、滑走路への精密な着陸を目指す。
ESAによると、搭載コンピューターが風や突風に対応しながら、2基のウインチでパラフォイルの操縦索を引く。地上からの操縦を要さずに進路を調整し、そり状の着陸装置で接地する仕組みである。
着陸時の衝撃を抑えることは、再利用する機体と科学実験用の搭載物を保護するうえで重要だ。今回の投下試験は、こうした降下・着陸システムを機体全体として検証する段階に位置付けられていた。
■過去の投下試験と熱防護試験
ESAは2024年4月から、サルデーニャ島のサルト・ディ・クイッラ試験場で投下試験を進めてきた。初期の試験では、実機に近い重量配分のモデルを使い、パラシュートやパラフォイルの展開、操縦機構を確認した。
2025年の試験では、パラシュートを順に展開させる動作に加え、自律誘導・航法・制御のソフトウエアを評価した。ESAによると、パラシュート系統の試験3回と、別のモデルによる自律降下・着陸試験3回を成功させた。
2026年5月にも実物大モデルで試験を試みたが、Space.comによると、投下前にセンサーが問題を検知したため中止した。同媒体によれば、イタリア国防省が運営する試験場は6~9月に使用できず、次の投下試験は10月となった。
着陸系統と並び、再突入時の熱から機体を守る技術の評価も進めている。ESAは2026年4月29日、イタリア航空宇宙研究センターのプラズマ風洞で、熱防護システムを最高1600℃まで加熱する試験を実施したと発表した。
熱防護は大気圏再突入時の加熱に耐えるために、誘導・着陸システムは帰還後の機体と搭載物を回収するために必要となる。Space Riderの開発では、帰還の各段階に対応する装置を個別に、また組み合わせて検証している。
■初飛行目標は2028年前半、調査後に日程を再評価
European Spaceflightによると、ESAは10月22日時点で、Space Riderの初飛行を2028年前半に目標設定している。ナジャは同日の説明会で、今回の事故が残る日程や認定試験の変更につながらないことを期待していると述べた。
ナジャは、残る認定作業は開発全体の完了時期を左右する「クリティカルパス」には含まれていないと説明した。原因調査と並行して、他の開発作業を進められるとの見方を示したものだ。
一方、同媒体によると、ESAは調査委員会の作業が完了した段階で日程を再評価する方針だ。初飛行に向けては、原因調査の結果を踏まえた対応と、必要な開発・認定作業を完了させることになる。
元記事: Europe’s Space Rider Reusable Spacecraft Crashes During Critical Parafoil Test