Uber、3万人超に「ChatGPT Work」の全社展開を開始 1000人の試行から拡大
2026年10月24日 14:26
Uberは2026年10月22日、世界の3万人超の全従業員を対象に、OpenAIの業務用AIエージェント「ChatGPT Work」の全社展開を開始した。1000人を対象とした試験導入から利用対象を広げ、オペレーション、財務、マーケティング、プロダクトなどの業務を支援する。
OpenAIの発表によると、ChatGPT WorkはChatGPT Enterprise内で、複数の手順を伴うタスクに取り組むエージェントだ。UberとOpenAIは今後、展開の進捗に合わせ、利用状況や具体的な用途、定量的な成果を共有する予定である。
■1000人の試行から3万人超へ
今回の展開では、試験導入の30倍を超える人数が利用対象となる。Uberにとって、知識労働向けエージェント型プラットフォームを全社に導入する初の取り組みとなる。
TechCrunchによると、試行段階の利用者の約80%は非エンジニアだった。データ分析など、ソフトウェア開発以外の業務にも利用を広げる狙いがある。
Uberの最高技術責任者(CTO)、Praveen Neppalli Naga氏は2015年に入社し、現在は同社のエンジニアリングとサイエンスの戦略、技術面の実行を統括する。2026年4月にサンフランシスコで開催されたHumanXでも、企業内でAIの効果を広げる取り組みについて登壇した。
同氏は今回の発表で、AIによって働き方が変わる中、従業員全員に革新や課題解決、Uberの将来づくりに役立つツールを届けたいと説明した。ChatGPT Workの全社展開を、その目標に向けた一歩と位置付けている。
■業務アプリをつなぎ、調査から成果物の作成まで支援
OpenAIによると、ChatGPT Workは、利用者が示した目標を小さな作業に分け、接続したアプリやファイルを使って処理を進める。情報収集に加え、文書、表計算シート、プレゼンテーションなどの成果物を作成でき、複雑なプロジェクトには数時間にわたって取り組むこともできる。
Uberでの活用を想定した連携先には、Google Drive、Gmail、Google カレンダー、Slackが含まれる。情報の調査、会議用資料の準備、プレゼンテーション作成、データ分析など、複数のアプリにまたがる作業を支援する。
例えば会議の事前資料を作る場合、予定や関連文書、業務上のやり取りを参照し、必要な情報をまとめる使い方が考えられる。利用者は目的と参照範囲を伝え、作業の進行に応じて内容を確認したり、指示を変更したりできる。
全社展開には、Uberの社内AIスキルライブラリ、承認済みの連携機能、専用の従業員研修を組み合わせる。音声や画像生成を含むOpenAIのマルチモーダル機能も活用し、業務に応じてモデルやツールを選べるようにする。
■標準モデルはGPT-6.1 Sol、長文処理と料金には利用条件
UberのChatGPT Workでは、GPT-6.1 Solが標準モデルとして導入される。OpenAIは2026年9月29日のDevDayで同モデルを発表し、コーディング、コンピューター操作、専門業務における性能とコスト効率を高めたと説明している。
2026年10月時点のOpenAIの案内では、ChatGPT WorkとCodexにおけるGPT-6.1 Solの標準コンテキストウィンドウは50万トークンである。コンテキストウィンドウは、モデルが一度の処理で扱える情報量の上限を示す。APIのモデル仕様では105万トークンに対応しており、長い文書や多くの関連情報を扱うための容量を備える。
サブスクリプションに含まれる利用枠でGPT-6.1 Solを使う場合、長文コンテキストの追加料金はかからない。長い会話やタスクも利用上限には算入され、購入済みクレジット、Enterpriseの従量課金、APIにはそれぞれの料金規則が適用される。
2026年10月時点の標準API料金は、入力100万トークン当たり2ドル(約314円)、出力100万トークン当たり10ドル(約1570円)である。入力が27万2000トークンを超えるリクエストには、入力・キャッシュ関連料金が2倍、出力料金が1.5倍になる長文料金が適用される。ChatGPT Enterpriseの価格は個別見積もりで決まる。
GPT-6.1 SolはPlus、Pro、Business、Enterprise、Edu向けのChatGPT WorkとCodex、および開発者向けAPIで提供される。Uberの開発者とソフトウェアエンジニアリングチームは、引き続きCodexを使って開発やコーディングを進める。業務アプリを横断する作業と、コードやリポジトリを扱う作業に応じた使い分けとなる。
■自動レビューと管理機能で実行範囲を統制
エージェントに作業を任せるには、参照できる情報と実行できる操作を管理する必要がある。OpenAIによると、ChatGPT Workでは管理者が利用者のアクセス権、利用できる社内情報、接続するツール、実行可能な操作を管理できる。
自動レビュー機能は、接続したツールやAPIで重要な操作を行う前に、高度なモデルで内容を審査する仕組みだ。OpenAIは、機密情報が権限なく共有されることを防ぐための保護策と説明している。利用者も、アクセス範囲や確認を求めるタイミング、実行前の承認が必要な操作を設定できる。
企業の監督を支える機能として、Compliance APIから会話や操作の記録を確認できる。管理者はプラグインや接続ツール、ブラウザーやネットワークの利用、接続先での機密性の高い操作などを制御する。管理できる項目は、ウェブやデスクトップといった実行環境によって異なる。
利用拡大に伴う費用も管理対象となる。EnterpriseやEduでは、ワークスペースの既定値、グループ別の上限、個人別の例外を設定し、追加クレジットの申請を確認できる。全社展開では、業務上の権限と利用費用の両方を管理することが運用上の課題となる。
■大企業の導入事例が広がる中、競合も業務用エージェントを展開
大規模な企業向けAI導入は、金融業界などにも広がっている。OpenAIが2025年12月に公開した事例では、オーストラリア・コモンウェルス銀行が約5万人を対象にChatGPT Enterpriseを展開している。同行は研修や社内の実践活動を通じ、AIを日常業務に定着させる取り組みを進める。
OpenAIが公開したモルガン・スタンレーの事例では、金融アドバイザーチームの98%超が社内アシスタントを利用している。社内情報の検索や会議内容の要約などを支援しており、用途ごとの評価と人による確認を組み合わせている。こうした事例からは、導入人数に加え、業務への組み込み方を設計する重要性が読み取れる。
企業向け市場はOpenAIの収益面でも存在感を増している。CNBCの2026年8月14日の報道によると、最高財務責任者(CFO)のSarah Friar氏は投資家向け会合で、企業向け売上高が消費者向けを上回ったと説明した。両事業が年末までに同規模になるという従来の見通しを前倒しした形だ。
CNBCによると、2026年7月の企業顧客向け売上高は前月比32%増となり、8月の報道時点でOpenAI全体の年換算売上高は400億ドル(約6兆2800億円)に達した。Reutersも9月、Friar氏の説明として企業向け売上高の拡大を報じている。年換算売上高は、その時点の売上ペースを年間に引き延ばした指標である。
競合では、Anthropicが2026年1月にClaude Coworkを投入し、Microsoftは6月16日にCopilot Coworkの一般提供を世界で開始した。Uberの全社展開は、業務用エージェントを比較する企業にとって、数万人への利用拡大と運用体制を検討する具体的な事例となる。
OpenAIの社長兼共同創業者Greg Brockman氏は今回の発表で、Uberの数万人への展開を、先端AIの機能とツールへのアクセスを広げる一歩と評価した。各チームが日々使うツールを連携させ、より複雑な業務に取り組めるようになるとの期待を示している。
■費用と成果の測定が全社運用の焦点に
調査会社Gartnerは2025年6月、エージェント型AIプロジェクトの40%超が、コスト上昇、不明確な事業価値、不十分なリスク管理を理由に、2027年末までに中止されると予測した。同社のアナリストAnushree Verma氏は、当時の多くの取り組みが初期の実験や概念実証にとどまり、期待先行で導入の費用や複雑さを見誤るおそれがあると指摘した。
Gartnerは同じ分析で、既存のアシスタントやRPA、チャットボットをエージェントと呼び換える「エージェント・ウォッシング」にも言及した。エージェント型AIを掲げる数千のベンダーのうち、実質的な能力を備える企業は約130社と推計している。
さらに2026年5月には、本番運用中の事故で明らかになるガバナンス上の欠陥を理由に、2027年までに企業の40%が自律型AIエージェントの自律性を引き下げるか、運用を廃止すると予測した。Gartnerは、エージェントが行動できる能力と、アクセスを許可する範囲を分けて管理するよう求めている。
Uberでは費用管理も課題となっている。Reutersは2026年9月、同社が年間のAI予算を4カ月で使い切ったとの報道を紹介した。また同月、Uberが約3300人、従業員の約10%を削減する計画を報じた。新型コロナウイルスのパンデミック以降で最大の削減で、Dara Khosrowshahi最高経営責任者は、管理階層を減らして組織を簡素化する方針を従業員に説明している。
これに先立つ7月22日には、カスタマーサービス業務の人員を10%削減した。Bloombergによると、Uberは組織の簡素化や対面での協働強化とともに、AI活用を進める取り組みとして説明した。
今回のChatGPT Workの展開では、研修、承認済みの連携機能、管理者による統制を組み合わせて利用を広げる。企業のIT責任者にとって注目点は、利用人数に加え、どの業務で成果が得られ、必要な管理と費用がどの程度になるかだ。UberとOpenAIが今後共有する利用状況や定量的な成果は、全社規模のAI運用を評価する材料となる。
元記事: Uber Puts Agentic AI on Every Desktop: ChatGPT Work Rolls Out to All 30,000 Employees