豪、Metaなど4社の5サービスで提訴準備 16歳未満SNS規制の順守巡り

2026年10月22日 21:50

オーストラリアで、16歳未満のSNSアカウント保有を制限する法律の執行が新たな段階に入った。Bloombergが2026年10月20日に報じたアニカ・ウェルズ通信相のインタビューによると、オンライン安全規制当局eSafetyは、Facebook、Instagram、TikTok、Snapchat、YouTubeについて、連邦裁判所で民事制裁を求める手続きの準備を進めている。

対象はMeta、TikTok、Snap、Googleの4社が運営する5サービスだ。ウェルズ氏は、ジュリー・インマン・グラント委員が9月に拡大された証拠収集権限を使って準備していると説明した。10月20日の報道段階では、今後の提訴に向けた動きとして伝えられている。

■16歳未満のアカウント保有を制限

規制の根拠は、オンライン安全法を改正した「Online Safety Amendment (Social Media Minimum Age) Act 2024」だ。2024年に成立し、アカウントに関する義務は2025年12月10日に施行された。対象サービスの運営者には、豪州の16歳未満の利用者がアカウントを作成・保有することを防ぐため、「合理的な措置」を講じる義務がある。

当初、eSafetyが対象と判断したのは、Facebook、Instagram、TikTok、Snapchat、YouTube、Reddit、X、Kick、Threads、Twitchの10サービスだった。このうち、eSafetyが3月に順守状況への重大な懸念を示したのが、今回の5サービスである。

法人に対して裁判所が科せる民事制裁金の上限は、2026年10月時点で1億920万豪ドル(約121億円)だ。子ども本人や保護者ではなく、必要な措置を講じる責任を負うサービス運営者が制裁の対象になる。

年齢確認では、政府発行の身分証明書や認定デジタルIDサービスを使わずに年齢条件を示せる、合理的な代替手段を提供する必要がある。eSafetyの指針は、既存の情報も活用して年齢を判断する考え方を示し、豪州の全利用者に一律に新たな年齢確認を求めることは、不必要に立ち入り過ぎる対応になるとしている。

■文書提出と証言を求める権限を拡大

eSafetyは2026年3月の順守状況報告で、対象の5サービスについて証拠収集を進めていると公表した。一部のサービスでは、年齢確認に失敗しても成功するまで繰り返し試せるほか、停止された利用者によるアカウントの作り直しを十分に防いでいないと指摘した。保護者らが未成年アカウントを通報する仕組みにも問題があるとした。

従来の権限では、運営者に順守状況の報告を求めることができた。政府は、実際の運用を裏付ける文書や第三者の情報も集められるよう、調査権限を強化する法案を6月29日に提出した。

改正法は9月10日に議会を通過し、9月12日に施行された。eSafetyは、順守状況の調査に関係する情報や文書を持つと合理的に考えられる者に、提出を求められるようになった。SNS運営者に加え、年齢確認事業者やアプリストア運営者なども対象になり得る。

経営幹部や元従業員らを呼び出し、宣誓または確約の下で証言や回答を求める権限も加わった。法律上求められた出頭や回答などの義務に違反した場合、最長12カ月の拘禁刑が科され得る。こうした手段により、各社の説明と実際のシステム運用を照合する材料が増える。

業界団体Digital Industry Group Inc.(DIGI)は、法案への意見書で、情報・文書提出要求の対象が広いことに懸念を示した。豪議会図書館の法案解説によると、DIGIは権限行使の範囲を明確にする保護措置に加え、通知の対象や調査開始の判断根拠について、公的な報告を充実させるよう求めた。

■アカウント停止と、続く利用の実態

ウェルズ氏は10月15日のナショナル・プレス・クラブでの演説で、16歳未満のアカウントが累計500万件超、削除、停止または制限されたと述べた。同時に、依然として多くの16歳未満の利用者がSNSに残っているとして、各社の対応を批判し、責任を追及する姿勢を示した。

Metaは8月の発表で、6月30日までに、16歳未満が保有すると判断したFacebookとInstagramの豪州アカウント75万件超について、アクセスを停止したと説明した。Snapも、豪州のSnapchatアカウント45万件超をロックまたは無効化したと公表している。Snapは、法律に基づく合理的な措置の実施と、若者のオンライン安全向上という目的への取り組みを表明している。

利用実態には、サービスごとの差がある。eSafetyが1月19日から2月2日に8~15歳の子どもの保護者ら898人を調べたところ、規制前に各サービスのアカウントを持っていた子どものうち、規制後も保有しているとの回答はFacebookで63.6%、Instagramで69.1%、Snapchatで69.4%、TikTokで69.3%だった。YouTubeでは48.5%だった。

シカゴ大学の研究者らによるワーキングペーパーでは、2026年3~4月の調査で、14~15歳の63.8%が過去7日間に対象サービスを使ったと回答した。研究者らは、友人が使い続けていることや、交流から取り残されることへの懸念が、利用継続の理由として挙がったと報告している。

医学誌The BMJに掲載された観察研究でも、施行約3カ月後の追跡調査に参加した16歳未満の86%超が、対象サービスの利用を報告した。研究チームは、実施や順守が不十分で、規制を回避する利用も見られたと考察している。各調査は対象者、調査時期、アカウント保有と利用の定義が異なり、それぞれの側面から施行初期の状況を示している。

■年齢を判断する技術と個人情報の保護

年齢確認には、身分証などで年齢を確かめる方法、顔画像から年齢を推定する方法、既存のアカウント情報から年齢を推測する方法がある。豪州の制度では、サービスの特性に応じて、こうした方法を組み合わせる運用が想定されている。

Metaによると、同社はAIを使い、投稿、コメント、プロフィール、画像の説明文などから、誕生日や学年への言及といった手掛かりを分析している。保護者らによる通報、通報内容のAIによる審査、停止後の再登録を防ぐ仕組みも対策に含めている。

年齢確認では、収集する情報や委託先での管理も重要になる。404 Mediaは2024年6月、TikTokなどの本人確認を手掛けるイスラエル企業AU10TIXの管理用認証情報がオンラインに露出し、身分証画像などの機微な情報へアクセスできる恐れがあったと報じた。

Discordは2025年、外部の顧客サポート事業者への不正アクセスにより、年齢判定への異議申し立てに使われた政府発行IDの写真が、約7万人分流出した可能性を公表した。Personaは2026年2月、非本番環境のフロントエンドのソースマップが公開状態だった事案を説明し、顧客データや秘密情報、バックエンドシステムへの影響はなかったとしている。

個人情報の開示を抑える手法としては、ゼロ知識証明を利用する年齢確認もある。信頼できる発行者が確認した属性情報などを基に、氏名や生年月日をサービス側に示さず、「16歳以上」という条件を満たすことを証明する仕組みだ。eSafetyも、プライバシーを保護する年齢確認の選択肢として、この種の技術を紹介している。

豪情報コミッショナー事務局(OAIC)は、年齢確認の導入時に、方法ごとのプライバシーへの影響を検討するよう求めている。年齢条件を確かめる精度に加え、収集情報の最小化、保管、共有、削除まで含めた設計が必要になる。

■最高裁では規制の合憲性を争う

執行に向けた調査と並行して、豪最高裁に当たるHigh Court of Australiaでは、制度の合憲性を争う訴訟が進んでいる。Digital Freedom Project側の事件とRedditの事件は、共通の法律問題について合同の手続きで審理されることになった。

Digital Freedom Projectは、リバタリアン党の州議会議員ジョン・ラディック氏が率いる団体だ。2025年11月に、提訴当時15歳だったメイシー・ネイランド氏とノア・ジョーンズ氏とともに訴えを起こした。SNSアカウントへの年齢制限が、若者による政治的な情報の受発信を過度に制約すると主張している。

Redditは2025年12月12日に提訴した。同社は、年齢確認が成人を含む利用者のプライバシーや政治的表現に及ぼす影響を問題視している。また、フォーラムを中心とするサービスの性質などを挙げ、自社が規制対象に含まれることにも異議を唱えている。

両事件の中心となるのは、憲法上の「政治的コミュニケーションの黙示的自由」だ。1992年以降の判例で認められてきた原則で、代表民主制を支える政治的な意思疎通を保護する。2015年のMcCloy対ニューサウスウェールズ州事件などで示された比例性の検討では、規制の目的と手段の適合性、より制約の少ない実行可能な代替策、制約と目的の重要性の釣り合いが論点になる。

原告側は、保護者の同意を伴う利用や、サービス側に危険の軽減を求める制度などを代替策として挙げている。法律事務所Addleshaw Goddardによると、審理は2026年11月期に2日間予定されている。規制の全部または一部を無効とする判断が出れば、民事制裁手続きの法的根拠や対象範囲にも影響する可能性がある。

■裁判で問われる「合理的な措置」

年齢制限を巡る制度づくりは国外にも広がっている。AP通信によると、インドネシアは2026年3月28日から高リスクのデジタルサービスで16歳未満のアカウント制限を段階的に始め、マレーシアは6月1日から16歳未満を対象とする規制を導入した。ロイターによると、ギリシャは2027年1月から15歳未満を対象とする措置を導入する方針を示している。

ウェルズ氏は10月15日の演説で、マレーシアやインドネシアなどでの制度導入に加え、トルコでの導入見通し、ギリシャやEUなどでの立法の動きに言及した。各国で対象年齢やサービスの範囲は異なるが、年齢を判断する仕組みと、運営者に実施を促す執行手段が共通の課題になる。

豪州で提訴に進めば、裁判所は各サービスの年齢判定、アカウント停止、再登録防止、通報対応などを踏まえ、「合理的な措置」が講じられたかを判断することになる。その判断は、事業者が対策を設計する際の手掛かりにもなり得る。今回の訴訟準備は、法律の要求を実際の運用にどう落とし込み、証拠に基づいて評価するかを問う動きだ。

元記事: Australia Prepares to Sue Meta, TikTok, Snap and YouTube Over Under-16 Non-Compliance

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