CoinbaseとThunesが提携、140カ国超の送金網とステーブルコイン基盤を接続
2026年10月21日 11:28
Coinbaseと国際決済インフラ企業Thunesは2026年10月19日、ステーブルコイン基盤と現地通貨での支払い網を接続する戦略的提携を発表した。米ラスベガスのMoney20/20 USAで発表された協業は、企業の仕入先への支払い、ギグワーカーへの報酬支払い、個人間の国際送金を対象とする。
■ステーブルコインを現地の受取手段へつなぐ
提携では、CoinbaseがThunesの「Direct Global Network」を自社プラットフォームに統合し、各国の決済システムや代替決済手段への接続を広げる。一方、Coinbaseはステーブルコイン関連のサービスを提供し、Thunesによるデジタル資産分野の事業拡大を支える。
Thunesの発表によると、同社のネットワークは2026年10月時点で140カ国超、90超の通貨に対応する。接続先はモバイルウォレット、ステーブルコインウォレット、銀行口座を合わせて120億超に及び、さらに150億枚のカードにも接続する。これらは同社のネットワーク全体の規模を示す数字だ。
対応する220超の決済手段には、フィリピンのGCash、アフリカ地域のM-PesaやAirtel、パキスタンのJazzCashやEasypaisaのほか、Alipay、WeChat Pay HKなどがある。Coinbaseはこの接続網を通じ、銀行インフラが限られる地域を含め、現地で使われている口座やウォレットへの支払い範囲を広げる方針だ。
仕入先が銀行口座での受け取りを求め、働き手がモバイルウォレットを日常的に利用する場合、送金サービスにはその受取手段まで資金を届ける機能が必要になる。今回の協業は、デジタル資産を移動する基盤と、受取人が利用する現地の金融サービスを結ぶものだ。提携の財務条件や国別の具体的な提供開始日程は公表されていない。
■事前資金と為替管理の負担を軽減
越境送金では、支払いに備えて送金先の通貨建て資金を確保する方式が使われてきた。複数市場で定期的に報酬や代金を支払う事業者にとって、資金の配分や為替取引、現地の銀行営業日に合わせた管理は、送金手数料とは別の運営上の負担となる。
例えば、ケニア、フィリピン、パキスタン、インドネシアへの支払いを現地通貨の残高で賄う方式では、ケニア・シリング、フィリピン・ペソ、パキスタン・ルピー、インドネシア・ルピアの資金需要をそれぞれ見積もる必要がある。送金経路が増えるほど、支払い時期と必要残高を調整する作業も増える。
Thunesは、自社の「SmartX Treasury System」により、資金を中央で管理し、実際の支払いに応じて各地へ配分できると説明している。資金の供給には法定通貨とステーブルコインを利用でき、支払い段階で通貨換算と現地の送金網への振り分けを行う。各市場に分散して置く残高を減らし、資金管理を集約する仕組みだ。
同社は2024年10月、米ドル連動型ステーブルコインUSDCの発行元Circleとの協業を発表した。Circleの導入事例によると、USDCによる資金供給をSmartX Treasuryと連携させ、流動性管理や照合作業を自動化した。従来は数営業日を要した資金供給を、数秒から数分で決済できるようにしたとしている。
こうした仕組みは、複数市場で繰り返し支払うギグプラットフォームや給与支払い事業者、仕入先決済サービスに関わる。Thunesのネットワーク参加企業にはUberやDeliverooも含まれる。資金を必要な時点で動かせることは、手数料の削減と並び、支払い業務を効率化する要素になる。
送金コストには、為替交換や現地での受け取り、現金化に伴う費用も関わる。世界銀行によると、200ドル(約3万1600円)を国際送金する世界平均コストは2025年第1四半期の6.49%から、同年第3四半期には6.36%へ低下したが、なお約12.72ドル(約2010円)に相当する。国連のSDGs目標10.cは、2030年までに移民送金の取引費用を3%未満とし、費用が5%を超える送金経路をなくすことを掲げている。
■両社幹部は現地金融システムとの接続を重視
ThunesのChloé Mayenobe副CEOは、デジタル通貨を法定通貨や各国の金融システムにつなぐことが、実社会での利用に不可欠だと説明した。伝統的な金融、モバイルウォレット、デジタル資産の橋渡し役として、Coinbaseと越境支払いを拡充する考えを示した。
Coinbaseのインフラ製品部門責任者Alec Lovett氏も、受取人まで資金を届ける最終区間の接続を重要な要素に挙げた。Thunesとの協業により、より多くの国と通貨で、迅速で円滑な支払い体験を提供する方針だ。
Thunesの北米部門責任者Kyle Rosen氏は、金融サービス、決済、フィンテック、デジタル資産分野の米国企業への事業展開を強調した。両社で、米国企業の海外成長を支える速度、規模、信頼性を提供するとしている。
■Thunesが広げてきた銀行・ウォレット接続
Thunesの前身であるTransferToでは、2005年に携帯電話の残高チャージ・リワード事業が始まり、2016年に越境決済事業が立ち上がった。2019年の再編で、チャージ事業はDT One、越境決済事業はThunesとなり、それぞれ独立して運営される形になった。Thunesはシンガポールに本社を置く。
同社は約50市場でライセンスを持ち、2025年4月にはシリーズDで1億5000万ドル(約237億円)を調達した。また、Thunesが公表した調査結果によると、Juniper Researchの「Cross-border Payments Market 2026–2030」は、14社を評価した競合ランキングで、同社をSwift、Visaと並ぶ上位3社に位置付けた。
2026年3月には、既存のSwift接続を通じて銀行がステーブルコインウォレットへ送金できるサービスを発表した。同社によると、Swiftネットワークにつながる1万1500の金融機関から、5億超のUSDC・USDTウォレットへの支払いに対応し、銀行側で追加の技術統合を行う負担を抑える。
同年6月3日には、米国向けの米ドル送金機能を拡張した。米国の大手金融機関への直接接続を通じて、ACH、Same-Day ACH、即時決済網を使い分けられるようにしたもので、通常のACHは一括処理、即時決済にはRTPやFedNowなどを利用する。
Circleとの関係も広がっている。Thunesは2026年4月8日、「Circle Payments Network Managed Payments」への参加を発表した。顧客が既存の法定通貨による業務を続けながら、ステーブルコインを使った決済機能にアクセスできるようにする取り組みだ。今回のCoinbaseとの提携も、こうした接続先拡大の流れに位置付けられる。
■Coinbaseはカードや加盟店決済でも協業
Coinbaseは暗号資産の売買に加え、企業向けの決済インフラを拡充している。暗号資産メディアDecryptによると、Brian Armstrong CEOは2026年の重点分野として、ステーブルコインと決済サービスの拡大を挙げていた。
2026年6月には、180カ国で支払いサービスを展開するMassPayとの提携を発表した。対象となる企業は、米ドルをCoinbase経由でUSDCへ換えるか、USDCを直接入金し、受取人へUSDC、ほかのデジタル資産、現地通貨で支払える。Coinbaseがウォレットや資産保管などの基盤を、MassPayが最終受取先への支払い管理を担う。
10月16日には、カード発行プラットフォームのMarqetaとの協業拡大が発表された。Marqetaの企業顧客がステーブルコイン残高を日常のカード支払いに使える仕組みで、Coinbaseは資産保管、法定通貨への換算、Base上での決済を提供する。
Baseは、Ethereumを基盤とするレイヤー2ネットワークだ。取引をEthereumのメインネット外で処理し、関連データをまとめてEthereumへ記録することで、利用者1件当たりの費用を抑える。OP Stackを使って出発し、2026年2月にはBaseが管理する統合ソフトウェア構成への移行方針を発表した。
Baseの公式決済ページは、2026年10月時点で1セント未満の手数料と、ほぼ即時の決済を特徴として掲げる。ネットワークは24時間稼働し、Ethereumメインネットで個別に処理する場合の負担を軽減する設計だ。企業の越境支払いでは、これに通貨換算や現地への送金サービスを組み合わせる。
9月28日に発表されたCitiとの協業拡大では、「Spring by Citi」を通じた加盟店のステーブルコイン受け入れを打ち出した。Coinbase Paymentsが受け入れ機能を提供し、法定通貨への自動換算後にCitiが資金を決済する仕組みで、米国から展開する方針を示している。
■発行者規制の整備と送金サービスの競争
米国では、決済用ステーブルコインの発行者を規律するGENIUS法が2025年7月18日に成立した。発行の認可、準備資産、情報開示などの要件を定め、発行者が保有・使用・保管だけを理由として保有者に利息や利回りを支払うことを禁じている。
法律の一般的な施行日は、成立から18カ月後の2027年1月18日か、主要な連邦規制当局による最終規則の公布から120日後の、いずれか早い日となる。CircleはUSDCの準備資産として銀行預金、短期米国債、米国債を担保とする翌日物リバースレポなどを公表している。企業が利用する決済基盤では、こうした発行者側の制度と各市場の利用条件が重要になる。
企業側の利用動向について、Cointelegraphが報じたCybridの調査では、回答企業の42%がステーブルコインを越境支払いに利用し、利用企業は平均35%のコスト削減を報告した。調査は2026年4月28日から5月4日まで、米国、カナダ、英国の企業幹部ら468人を対象に実施された。71%は、利用拡大への確信を高める要素として規制の明確化を重視していた。
取引規模も拡大している。Circleが紹介したArtemisのデータでは、2026年2月の30日間の調整後ステーブルコイン取引額は7兆2000億ドル(約1140兆円)で、比較対象の米国ACHの6兆8000億ドル(約1070兆円)を上回った。ステーブルコインの集計には金融市場での取引なども含まれ、企業の送金サービスでは、そのうち実際の支払い需要に対応する機能をどう組み立てるかが焦点となる。
競合各社も、ステーブルコインと現地の支払い網の接続を進めている。NiumとCircleは2026年5月27日、USDC決済を190カ国超への支払い網につなぐ提携を発表した。150カ国超にネットワークを持つTerraPayは、2025年11月に相互運用ネットワーク「Xend」を発表し、Swiftを通じた1万1500の銀行とウォレットの接続を打ち出した。
こうしたサービスを比較する際は、対応国数に加え、受取人が使う銀行口座やモバイルウォレットへの接続、対応通貨、着金時間、換算を含む費用が重要になる。CoinbaseとThunesの協業も、ステーブルコインの移動と現地での受け取りを一つの支払い体験につなぐ取り組みとして、その利用範囲を広げようとしている。
元記事: Stablecoin Cross-Border Payments Hit M-Pesa and GCash as Coinbase Joins Thunes’ 140-Country Network