米国、DeepSeekを連邦民間機関から排除 第三者の製品・サービスも対象
2026年10月21日 11:28
米国土安全保障省(DHS)は、中国のAI企業DeepSeekの製品・サービスを連邦政府の民間行政機関のITシステムと調達から排除する命令を公示した。対象には、DeepSeekの技術を使って開発された第三者の製品・サービスも含まれる。
命令は2026年7月24日付で、10月19日に公開閲覧に供され、20日付の連邦官報に掲載された。DHSは、機微な情報が中国に移転する恐れや、セキュリティー上の脆弱性への懸念を理由としている。
■第三者製品にも及ぶ削除・調達禁止
命令は、DeepSeekと関連会社が開発したIT製品・サービスを連邦民間機関の調達から除外するよう求める。既存のITシステムからは、これらの製品に加え、DeepSeekを使って開発された第三者製品・サービスも削除する必要がある。
対象は、環境保護庁(EPA)や連邦通信委員会(FCC)などを含む連邦民間行政機関である。各機関が調達に使う承認済み製品リストやオンライン市場などからも、対象製品を除外する。
命令は、2018年成立の連邦調達サプライチェーン安全保障法とその施行規則に基づく。DHSは、連邦調達安全保障会議の勧告と関連証拠を審査したうえで発出したとしている。個別機関による制限から、連邦民間機関を横断する排除措置へと対象が広がった。
調達からの除外とシステムからの削除は、命令の発出直後から求められる。一方、各機関が適用除外や履行の延期を申請する手続きも設けられた。申請は発出から60日以内に書面で行い、任務遂行上の必要性や代替のリスク軽減策などを示す規定で、米サイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁(CISA)が審査する。
■DHSが懸念するデータ移転と脆弱性
DHSは、DeepSeekのモデルに複数の脅威要因があると説明している。モデルにマルウェアやセキュリティー上の脆弱性が含まれる可能性を挙げ、政府システムと利用者へのリスクを指摘した。
また、米政府職員や取引先がサービスに情報を入力することで、機微なデータが中国へ移転する恐れがあるとした。DHSはその背景として、サーバーが中国に置かれ、中国の法制度が政府の情報・サイバー関連部門に民間企業のインフラへアクセスする広い権限を認めている点を挙げている。
DeepSeekの2026年2月10日更新のプライバシーポリシーは、個人データを中国で収集・処理・保存すると定める。収集対象には入力したテキストや音声、アップロードしたファイル、チャット履歴のほか、IPアドレスや端末識別子などが含まれる。日本の個人情報保護委員会も2025年2月、同サービスが取得したデータの中国での保存と、中国法令の適用について情報提供を行った。
AP通信が2025年2月に報じた調査では、Feroot Securityと大学の研究者が、DeepSeekのウェブ版の登録・ログイン処理にChina Mobileの認証基盤「CMPassport」へのリンクを含むコードを確認した。FCCは2019年、安全保障上の懸念から、China Mobileの米国法人による米国と海外間の国際通信サービス提供の申請を却下している。
■2025年から続く利用制限と立法の動き
州政府でも利用制限が進んできた。テネシー州の公式資料によると、同州は2025年1月30日に政府端末とネットワークからのDeepSeekへのアクセスを遮断した。テキサス州は翌31日、ニューヨーク州は2月10日、バージニア州は2月11日に、それぞれ政府端末などを対象とする禁止措置を打ち出した。
連邦機関でも先行する対応があった。CNBCは海軍と米航空宇宙局(NASA)の利用禁止を、ブルームバーグは国防総省のネットワークでのアクセス遮断を報じた。ロイターも2025年3月、商務省の複数部局が政府支給端末での利用を禁じたと報じている。
議会では2025年2月27日、超党派の上院議員が「No DeepSeek on Government Devices Act」(S.765)を提出した。行政機関のITでDeepSeekや対象となる後継アプリ・サービスを使用することを禁じる法案だ。
さらに、ビル・キャシディ、ジャッキー・ローゼン両上院議員は同年5月、連邦政府の契約履行にDeepSeekを使うことを委託事業者に禁じる「Protection Against Foreign Adversarial Artificial Intelligence Act of 2025」を提出した。政府内部の端末に加え、委託先が政府業務で使うAIも立法上の論点となってきた。
米政府は以前から、HuaweiやZTEの通信機器に対する調達制限や、法律に基づくTikTokの政府ITでの利用制限を導入している。TikTokについては2026年7月、米司法省が米国の合弁会社による運営版を禁止対象外とする見解を示した。
DeepSeekは2025年初頭、低コストで米国勢に対抗するモデルを開発したとして注目を集めた。開発も続けており、2026年10月17日には「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」を公開した。同社によると、前版に比べてベンチマーク性能が向上し、タスクの実行時間と出力が短くなったという。
元記事: Homeland Issues Ban Against DeepSeek AI on US Government Tech Due to Security Threats