Bluecore Energy、浮体式原子炉向け低濃縮ウランを確保 燃料製造と認可準備を前進
2026年10月18日 20:58
浮体式小型モジュール炉(SMR)を開発する米Bluecore Energyは2026年10月13日、核燃料取引を手掛けるWMCから低濃縮ウランを購入したと発表した。調達した物質はカリフォルニア州外の米国内施設に保管されており、同社は燃料製造や試験に向けた準備を進める。
ロングビーチ港を拠点とする同社は、燃料の確保と並行して、米原子力規制委員会(NRC)、米沿岸警備隊、船級協会ABSとの対応を進めている。港湾や沿岸インフラへの電力供給を目指す計画で、原子炉と海上設備の双方について安全性を具体化する段階にある。
■濃縮度4.95%のウランを確保
購入したのは、ウラン235の割合を4.95%に高めた六フッ化ウラン(UF6)だ。ウラン235の割合が20%未満の低濃縮ウラン(LEU)に該当し、一般的な商用軽水炉の燃料に用いられる濃縮度の範囲に入る。通常90%以上とされる兵器級ウランよりも濃縮度は低い。
World Nuclear Newsによると、購入量は公表されていない。保管先についてBluecoreが明らかにしたのは、カリフォルニア州外の米国核燃料施設という点だ。
UF6はウラン濃縮の工程で使われる形態である。軽水炉用燃料の製造では、これを二酸化ウランに再転換し、ペレットに加工して燃料棒や燃料集合体へ組み上げる。今回の調達は、燃料を使う試験に必要な供給体制を整える一歩となる。
WMCはオランダの商品商社で、ウランの売買に加え、物流、保管、資金調達、加工などを扱っている。同社の原子力燃料チームのディレクター、Per Janderは発表に寄せたコメントで、安定した核燃料供給の確立を原子炉開発の基盤と位置付け、Bluecoreとの協力に期待を示した。
■港では燃料を使わず試作機を開発
Bluecoreの研究開発拠点は、ロングビーチ港のピアDにある。港が2026年7月に公表した環境審査関連資料では、倉庫や隣接する陸域、はしけを係留する水域を使い、燃料を使用しない原子炉モジュールの試作機を組み立て、試験する計画が示されている。
試作機は、センサーや制御機器を取り付ける鋼製容器を用いたものだ。監視・制御系の動作を確かめるほか、はしけに載せ、水上での船体の動きに関するデータを集める用途も想定する。
同資料は、港の開発拠点で核燃料を使用せず、原子力に固有の部分の試験をアイダホ国立研究所で行う計画を記載している。燃料を州外施設に保管する今回の発表と、港で進める試作・検証作業は、それぞれ異なる開発工程を担う。
Bluecoreは、燃料供給から設計、試験、安全評価、認可、船級対応までを並行して整備する方針だ。創業者兼CEOのKofi Asanteは今回の声明で、迅速な開発には厳密な取り組みが伴う必要があるとの考えを示した。
■既存の加圧水型技術を海上へ
同社が開発するのは、はしけに搭載する加圧水型原子炉(PWR)である。Bluecoreは主力の浮体式発電所を「Nautilus」と呼んでいる。海事専門媒体The Maritime Executiveは、原子炉モデルをBC-15と紹介し、標準化された商用燃料集合体を使う設計だと報じている。
2026年10月時点の同社公式サイトは、初期システムの電気出力を10メガワットと説明する。World Nuclear Newsによると、同社は約1万5000世帯相当への電力供給を目標に掲げ、複数のシステムを組み合わせて大きな需要に対応する構想を示している。世帯数は同社が示した供給規模の目安だ。
PWRでは、核分裂で生じた熱を一次冷却水で取り出す。一次系は高圧に保つことで水の沸騰を抑え、蒸気発生器の伝熱管を介して二次系の水へ熱を渡す。二次系で生じた蒸気がタービンと発電機を動かし、発電後は復水器で水に戻って循環する。
一次系と二次系を分けて熱を伝える構造は、陸上のPWRにも共通する。Bluecoreの構想は、この水冷式の発電システムを海上プラットフォームにまとめ、海底ケーブルなどで陸側へ電力を送るものだ。同社は、1回の燃料装荷で数年間運転する設計を目指している。
■原子力と海事の審査を並行して進める
NRCの公開記録には、Bluecoreが設計の概要と規制対応方針を説明する2026年8月17日の会合が掲載されている。同社によると、沿岸警備隊も参加し、商用展開に向けた原子力・海事双方の論点について協議を進めている。
NRCは、浮体式発電所や原子力推進船について、既存の連邦規則集10 CFR Part 50、Part 52、Part 53に基づく認可が可能だと説明している。海上用途への適用方法を整理するホワイトペーパーの作成も進め、2026年5月14日には公開会合を開いた。
立地審査では、周辺の人口分布、事故時の防護措置、地震や気象、近隣施設からの影響などが重要になる。例えば、排除区域は事業者が区域内の活動を管理する権限を持つ範囲であり、低人口区域は重大事故時の防護措置などを考慮する区域である。港湾で運用する場合も、施設と周辺環境の関係を具体的に示す必要がある。
海上設備には、船体の動揺、係留、荒天、衝突、浸水などに対応する設計が求められる。ABSも海上原子力設備の検討において、環境条件、船体構造、係留設備、地震や衝突の影響を評価項目に挙げている。原子炉の冷却・停止設備についても、設置環境を踏まえた安全評価が重要になる。
こうした評価を支える手法の一つが、事故の進展と発生頻度、影響を体系的に調べる確率論的リスク評価(PRA)だ。海上施設では、原子炉内部の機器故障に加え、船体や外部環境に起因する事象を組み合わせて検討することになる。
NRCと沿岸警備隊は2026年6月22日、民生用海上原子力プロジェクトでの連携に関する了解覚書を締結した。Bluecoreによると、ABSは同年6月に同社の浮体式発電所設計へ基本承認を付与した。同社は、米国設計の浮体式原子力発電所に対するABS初の基本承認としており、今後の設計段階で対応すべき技術要件も整理されたという。
■カリフォルニア州の制度と立地選定
カリフォルニア州は1976年、高レベル放射性廃棄物の処分に関する条件を満たすまで、新たな原子力発電所の建設・認可を制限する制度を導入した。州公共資源法第25524.2条は、実証された処分技術または方法が存在し、連邦政府の権限ある機関が承認していると州エネルギー委員会が認定することなどを求める。
連邦最高裁は1983年、この州の制度について、廃棄物処分の不確実性に伴う経済上の懸念を理由とする規制を支持した。米エネルギー省も2026年5月の説明資料で、カリフォルニア州を原子力開発への制限が残る州の一つに挙げている。
Bluecoreが将来の運転場所を選ぶ際には、連邦の認可に加え、州・地域の制度、環境審査、立地ごとの安全条件を整理することになる。ロングビーチ港で現在進める研究開発と、燃料を装荷した発電所の設置・運転は、それぞれの内容に応じた手続きで進む。
■ロシアの運転実績と競合各社
浮体式原子力発電所の商用運転例には、ロシア国営原子力企業ロスアトムの「アカデミック・ロモノソフ」がある。北極圏のペベクで2019年12月に送電を始め、2020年5月に商業運転へ移行した。砕氷船向け技術を基にしたKLT-40S原子炉を2基搭載し、設備の電気出力は各35メガワット、合計70メガワットである。
ロスアトムの燃料部門は2024年の年次報告で、同施設が最初の燃料サイクルを完了したと報告している。また、World Nuclear Newsは2025年1月、累計発電量が10億キロワット時に達したと報じた。電力はペベクを含むチャウン・ビリビノ地域の独立した電力網へ供給されている。
英国のCORE POWERも、浮体式発電所と原子力推進商船の両方を開発対象としている。同社は2026年6月、BWX TechnologiesのmPower SMR技術を浮体式発電所へ組み込む可能性について、技術・規制・商業面の実現性調査を始めたと発表した。
CORE POWERは同年8月19日、米テキサス州のコーパスクリスティ港当局との協力覚書も発表した。浮体式発電所による港湾・地域への電力供給と、将来の原子力推進商船の寄港を対象に、必要な設備や手続きを調べる。浮体式発電と船舶推進では用途が異なる一方、港湾の安全体制や受け入れ設備には共通する検討事項がある。
米国のSMR分野では、NuScale PowerがNRCの設計認証を取得している。同社技術を使う計画だったCarbon Free Power Projectは2023年11月に終了した。事業主体のUAMPSは、事業成立に十分な電力購入参加を確保する見通しが立たなかったと説明しており、設計審査と並んで顧客・資金の確保も実用化の重要な条件となる。
■資金調達と港湾・データセンター需要
Bluecoreは2026年7月21日に事業を公表し、9月8日には5000万ドル(約79億円)のシード資金調達を発表した。World Nuclear Newsによると、Silverton Partnersが主導し、Kevin HartのHartBeat Ventures、NBA選手のJoel Embiid、Ripple共同創業者のChris Larsen、Tesla、Uber、Amazon、Googleの元幹部らに関係する投資家が参加した。
SiliconANGLEは、先行する1000万ドル(約15億8000万円)の調達を含む投資総額を2026年9月時点で6000万ドル(約94億8000万円)と報じている。調達資金は設計・ハードウェア開発、試験、製造、採用、認可や船級への対応に充てる。Asanteは9月のTechCrunchの取材で、核燃料の発注を近く行う予定だと述べていた。
需要面では、港湾設備の電化とデータセンターの電力消費が背景にある。Bloombergの2026年9月の報道によると、Asanteはデータセンターから毎週問い合わせを受けていると述べた。Bluecoreは、港湾に加え、沿岸インフラや地域社会への継続的な電力供給を目指している。
米政府も海事分野の原子力利用を後押ししている。Sean Duffy運輸長官と米海事局は2026年5月、商業海運向けSMRの開発を促す取り組みを発表した。港湾電力と船舶推進の双方で関心が高まるなか、Bluecoreは燃料調達、試作機の検証、原子力・海事の認可準備を並行して進めている。
元記事: Bluecore Energy Buys Enriched Uranium for Floating Reactor: Land-Based NRC Rules Don’t Apply