米陸軍、対ドローンレーザー「LOCUST X3」を量産へ 車両間の載せ替えを重視
2026年10月18日 13:27
米陸軍が、対ドローン用の高エネルギーレーザー兵器を量産する段階へ進む。2026年9月2日、AeroVironmentとの間で「Enduring-High Energy Laser(E-HEL)」計画の量産契約を発表した。契約額は同社発表で4億6480万ドル(約734億円)で、採用機種は30kW級の「LOCUST X3」だ。
10月にワシントンD.C.で開かれた米陸軍協会の年次総会「AUSA 2026」では、車両間の載せ替え、現場での整備、構成部品の更新を重視する方針が示された。Military Timesによると、陸軍は2028年初頭の運用開始を目指している。
■車両と兵器を切り離せる設計へ
The War Zoneによると、防御火力分野の能力プログラム執行責任者を務めるガイ・イェルバートン陸軍准将は、10月12日のAUSAのパネル討論で、さまざまな保有車両への高エネルギーレーザー搭載を目指すと説明した。E-HELは、取り外し可能な搭載架台であるスレッドに載せ、複数の車種への統合を検討する構成だ。
陸軍指向性エネルギー担当部門の主任エンジニア、カーク・ウィリアムズも、車両がオイル交換に入るだけでレーザー兵器まで使えなくなる問題を挙げた。同誌によると、兵器を車両から取り外し、別の車両へ移せる構造を目標の一つとしている。
この背景には、従来の車載システムで得た経験がある。50kW級レーザーをストライカー装甲車に搭載した「DE M-SHORAD」は、2024年に中東で運用された。Breaking Defenseによると、当時の陸軍調達責任者ダグ・ブッシュは同年5月の上院公聴会で、兵士の評価が厳しかったことを明かし、移動を繰り返す車両への搭載では放熱、電子機器の量、戦術環境での摩耗が課題になっていると説明した。
DE M-SHORADを配備するため2022年に再編された第60防空砲兵連隊第4大隊は、その後、通常の防空任務を担うようになったとThe War Zoneは報じている。一方、陸軍は2025年6月12日、DE M-SHORADのフォート・シル博物館への収蔵を発表した。同発表では、現地で実施した評価でグループ1~3の無人航空機を模した標的への実射交戦を50回行い、運用手順を洗練したとしている。
■30kW級レーザーでドローンに対処
AeroVironmentによると、LOCUST X3は同社レーザー兵器の第3世代で、製品としては20~35kW超の出力構成に対応する。E-HEL向けに選ばれたのは30kW級で、同社はグループ1~3の無人航空機への対処を掲げている。
これらは米軍の無人航空機の分類だ。重量の目安ではグループ1が20ポンド以下、グループ3が55ポンド超から1320ポンド未満に相当し、分類には飛行高度や速度も使われる。Inside Defenseによると、AeroVironmentはX3を、シャヘド系のような比較的大きい攻撃ドローンへの対処を重視して開発した。
Janesによると、X3のレーザーはスペクトルビーム結合方式を採用する。この方式は、異なる波長のレーザー光を回折格子などで同じ方向へ重ね合わせ、高出力のビームを得るものだ。複数の光源を組み合わせながら、目標へ光を集中させるためのビーム品質を確保する技術である。
LOCUSTのターレットは、レーザーの投射装置と目標捕捉・追跡用の電気光学/赤外線カメラを備える。AeroVironmentによると、X3の射撃管制ソフトウェア「AV_Halo PINPOINT」はAIを活用して探知、追跡、交戦の自動化を支援し、動く目標への安定した照射を図る。
レーザーによる無力化では、目標の一定部位へエネルギーを集中させ、構造や機能部品を熱で損傷させる。Inside Defenseが2026年3月に報じた同社幹部アーロン・ウェストマンの説明では、X3がドローンを破壊する時間は通常5~7秒だ。照射を安定させる追跡・照準制御は、次の目標へ移るまでの時間にも関わる。
■電力とセンサーを組み合わせる防空
AeroVironmentの仕様書によると、X3は搭載した能動・受動センサーや上位の指揮統制システムから目標情報を受け取れる。小型レーダーや無線周波数の受動探知装置、外部のレーダーなどを組み合わせ、レーザーの照準装置を目標へ向ける構成だ。DefenseScoopによると、同社はAndurilの指揮統制システム「Lattice」とも接続できると説明している。
連続して交戦できる量は、電力供給と冷却能力に左右される。The War Zoneによると、イェルバートン准将はレーザー兵器一般の蓄電量を「弾倉」に例え、システムによって80秒や120秒程度の照射時間があり、交戦を終えると再び蓄電できると説明した。
AeroVironmentは、2026年3月のX3発表で1回の交戦費用を5ドル未満としている。低い使用時費用は、高価な迎撃弾の消耗を抑えるうえで魅力になる。CBSの「60 Minutes」も同年3月15日、低価格ドローンへの対抗手段としてLOCUSTを取り上げた。
迎撃手段の価格には大きな幅がある。The War Zoneが2023年に伝えたCoyote Block 2の推定単価は約10万ドル(約1580万円)だ。米陸軍の2026会計年度予算要求資料では、PAC-3 MSEのミサイル本体を333万1000ドル(約5億2600万円)、付随装備や生産維持関連費を含む単価を387万1000ドル(約6億1200万円)と見積もっている。こうした調達価格とレーザーの使用時費用は、費用の対象範囲を区別して読む必要がある。
レーザーの有効性は、標的までの見通しや大気条件にも左右される。ほこり、煙、霧、雨などは目標へ届くエネルギーを減らし、交戦可能な距離に影響する。陸軍はレーザーを、センサー、電子戦装置、火砲、迎撃ミサイルなどを組み合わせる多層防空の一部として位置付けている。
■オープンな構造で改良を続ける
米陸軍はE-HELを、自軍初の高エネルギーレーザー兵器の量産契約と説明する。AeroVironmentは、米国史上初の同種の量産契約と位置付けている。契約形態には、通常の調達契約とは異なる枠組みであるOther Transaction Agreement(OTA)を用いた。
陸軍発表では、E-HELは11の主要インターフェースからなるモジュラー・オープン・システムズ・アプローチ(MOSA)に基づく。固定拠点、半固定の戦術拠点、移動車両での利用を想定し、技術の進歩に合わせて構成要素を更新する設計だ。ブレント・イングラハム陸軍次官補は、将来の改良用インターフェースを備えた装備を迅速に配備する例としてE-HELを挙げている。
MOSAは、構成要素をモジュール化し、主要な接続部分に広く支持された標準を使う考え方である。2017会計年度国防権限法で主要装備調達計画への適用が法定化され、2019年の陸海空軍共同覚書でも重視された。接続仕様や必要な技術データの利用権を整えることで、異なる供給者の部品を導入し、改良時の競争を促す狙いがある。
Aviation Weekによると、陸軍が改良用試作開発の対象とするのは12分類だ。発電、蓄電、構造、ソフトウェア、センサー、通信、レーザー光源、ビーム指向装置、ビーム結合器、ビーム伝送、蓄熱、システム全体を含む。AeroVironmentがシステム統合を担いながら、第三者の技術も取り込める構成を目指している。
同誌によると、陸軍は2031会計年度に、小型の歩兵分隊車両の汎用型「ISV-U」へ搭載できる新型E-HELの量産に進むか判断する計画だ。現行型はJLTVへの搭載や、JLTVがけん引するトレーラー上での運用を想定する。ISV-Uの寸法、重量、電力の制約に収めるには、大幅な小型化と改良が必要とされる。
■国境での運用と空域の安全管理
旧世代LOCUSTを用いた運用も続いている。米南部国境統合任務部隊は2026年8月27日、25日と26日の深夜帯に「Army Multipurpose High Energy Laser(AMP-HEL)」で敵対的な無人航空機3機を無力化したと発表した。同部隊は、軍人や税関・国境警備局(CBP)の要員に物理的な脅威をもたらす活動を支援していた機体と説明している。
DefenseScoopによると、AeroVironmentは同社のシステムが使われたと認めた。任務部隊の発表はフォート・ブリス発だが、実際の交戦場所の詳細は公表していない。
国内運用では、関係機関との調整が課題になった。DefenseScoopによると、2026年2月にはエルパソ近郊でCBPが借用したレーザーを気球に使用した事案と、フォート・ハンコック近郊で軍側がCBPのドローンを撃墜した事案が起きた。これらに伴って連邦航空局(FAA)が一時的に空域を閉鎖した。
3月にはホワイトサンズ・ミサイル実験場で、安全装置や退役したボーイング767の胴体への照射影響を調べる試験が行われた。FAAと米戦争省は4月10日の共同発表で、安全評価により適切な安全制御を確認し、旅客機に過度のリスクをもたらさないと判断したと説明した。両機関は、航空機や操縦士、航法機器、航空交通業務に影響を与えずに運用するため、調整を続けるとしている。
■高出力型の開発と海外市場
米軍は、E-HELと並行して高出力のレーザーも開発している。米戦争省は2026年7月9日、「Joint Laser Weapon System(JLWS)」でnLIGHT DefenseとLockheed Martin AculightにOTAを授与したと発表した。初期契約額は計8600万ドル(約136億円)、計画全体の上限額は8億4700万ドル(約1340億円)だ。
発表によると、JLWSは地上・艦艇への搭載を想定するコンテナ型システムで、初期試作機は約150kWとなる。その後は巡航ミサイル防御に向けて300~500kW級へ拡張し、高エネルギーレーザー出力拡大計画「HELSI」の光源を使う500kWの統合システムも並行開発する。
The War Zoneによると、AUSAの討論に参加したnLIGHTのスコット・キーニーCEOは、さらに1MW級への拡張が視野に入っていると述べた。米海軍も将来の目標として1MW級に言及している。
海外でも開発と輸出の動きがある。Army Recognitionによると、中国のNORINCOは2026年1月にアブダビで開かれたUMEXで、50kW級の移動式地上レーザー「OW5-A50」を紹介した。The War Zoneは、中国で地上型や艦載型のレーザー開発が進み、中国企業が外国軍へレーザー兵器を販売していると報じている。
AeroVironmentは9月8日、LOCUSTで初めてとなる海外からの購入注文を受けたと発表した。金額は5000万ドル超(約79億円超)で、顧客名は公表していない。Army Recognitionによると、AUSA 2026ではAmerican Rheinmetallの無人地上車両「MUSKOX」に搭載したX3も展示し、有人車両以外への展開案を示した。
■2028年の運用開始へ、信頼性と整備性を磨く
Military Timesによると、最初のJLTV搭載LOCUST X3は、米国の2027会計年度第4四半期に納入する予定だ。暦では2027年7~9月に当たる。納入後は試験や検証を進め、兵士による運用へ移す。
イェルバートン准将は同誌に、2028年春を目標の後ろの区切りとしつつ、2027年12月~2028年1月に実現できれば大きな成果になると説明した。早期配備の協力先として第7歩兵師団が候補に挙がっている。同誌が伝えたAeroVironment副社長ジョン・ギャリティの説明では、契約対象は計26システム超となる。Fast Companyは、5年間での供給計画を報じている。
第7歩兵師団の支援担当副師団長チャールズ・キーン大佐は、AUSAで、太平洋の湿気や泥などさまざまな環境で早期に試し、改良を繰り返す重要性を述べたとThe War Zoneは伝えている。ウィリアムズも、兵士が必要なときに信頼でき、戦場で保守・修理できる装備へ仕上げることを重視した。
米政府監査院(GAO)は2023年の報告書で、指向性エネルギー兵器の試作から調達計画への移行に課題があると指摘した。技術の成熟度に加え、開発側と調達側の役割や移行計画を整える必要があるという内容だ。E-HELでは、量産と並行して整備性を高め、部品単位の改良を続けられる仕組みを実際の部隊運用につなげることが重要になる。
元記事: AeroVironment’s LOCUST X3 Wins Army’s First Laser Weapon Contract; Sled Beats Fixed Mount