ServiceNow、AIエージェントの権限を実行時に検証する「AI Passport」を発表
2026年10月17日 17:14
クラウド型の統合型業務プラットフォームを手掛ける米サービスナウ(ServiceNow)は2026年10月15日、企業向けAIエージェントの権限を実行時に検証する「AI Passport」を発表した。エージェントごとに暗号署名付きの認証情報を割り当て、許可された操作やアクセス先を確認する仕組みだ。AI Passport、シャドーAI検出、AI Cost Managementは同年第4四半期に提供を始める見込みとしている。
■エージェントごとの権限を実行時に検証
AI Passportは、各エージェントに固有の認証情報を与え、操作を行う際に権限の範囲を確認する。ServiceNowによると、同社製と外部製のエージェントに加え、エージェントが外部のツールやデータに接続する際に使うMCPサーバーも管理対象となる。認証情報と操作の記録を通じ、誰が権限を承認したかを追跡できる設計だ。
権限の判断には、ServiceNowの構成管理データベース(CMDB)、ガバナンス・リスク・コンプライアンスの方針、業務上の承認を利用する。エージェントが別のエージェントに作業を委ねる場合も、各段階で認証情報を検証し、委任する権限の範囲を絞れるとしている。操作後の監査に加え、操作時点で権限を確かめることが狙いだ。
ServiceNowが報道向けに示したデモでは、外部製の顧客対応エージェントに25ドル未満の返金を許可した。18ドル(約2840円)の返金は自動処理され、40ドル(約6320円)の要求は人による確認が必要なしきい値を超えたため、実行時に拒否された。この例は、設定された返金条件を取引ごとに適用する仕組みを示している。
■一時停止から無効化まで段階的に制御
ServiceNowが示す運用では、セッショントークンの取り消しによる一時停止、利用できるツールや接続先の制限、認証情報の取り消しによる無効化を選べる。無効化したエージェントは、理由を記録したうえで復元できるとしている。AI製品担当シニアバイスプレジデントのNenshad Bardoliwalla氏は、この段階的な制御を調光器に例えた。
AI Passportはオープン仕様に基づき、他のガバナンス製品、IDプロバイダー、実行制御システムも認証情報の発行・検証に参加できるよう設計されている。複数の基盤でエージェントを運用する企業にとって、製品をまたいで権限を管理するための仕組みとなる。
VentureBeatが2026年7月に実施した107社対象の調査では、利用するエージェントのオーケストレーション基盤は1社平均3.1だった。複数の基盤にまたがる運用は、外部製エージェントも対象にする権限管理の背景にある。ただし、この数値は同調査の回答企業についての平均値だ。
■既存のセキュリティ課題とNVIDIAとの連携
AIエージェントの権限設定を巡っては、AppOmniが2025年11月、ServiceNowのNow Assistに関する検証結果を公表した。エージェントが読み取るレコードに埋め込まれた指示を介し、別の高権限エージェントに想定外の操作をさせる手法を示したもので、検証時にはプロンプトインジェクション対策が有効だった。AppOmniは、エージェント間の連携設定や自律実行の許可範囲を確認するよう勧めている。
ServiceNowのAI Platformでは、別件としてCVE-2025-12420も確認されている。ServiceNowの公表によると、認証されていない利用者が別の利用者になりすまし、その権限で操作できる可能性があった。同社は2025年10月にホスト環境の大半へ修正を適用し、パートナーと自社運用の顧客にも更新を提供した。この脆弱性のCVSS v4.0スコアは9.3だ。
NVIDIAはAI Passportの設計・提供開始に向けたパートナーとして参加する。両社は、NVIDIAの「Open Agent Safety Platform」に含まれる安全な実行環境「OpenShell」と「Sentry」を使い、企業の権限方針をエージェントの実行環境で適用する仕組みを開発している。両社は2025年10月にも、ServiceNowの業務フローとNVIDIAのAI向けインフラの連携を発表していた。
■シャドーAIの検出とコスト管理も拡充
ServiceNowは、組織が把握していないAIの検出機能を管理基盤に追加する。発表資料によると、400超のコネクターを通じて異なる製品・基盤上のAIを発見し、アクセス権の対応付けやエージェントの動作監視を行う計画だ。
シャドーAIの広がりについて、Cloud Security Allianceは2026年5月の分析で、従業員の約8割が組織に承認されていないAIツールを使うとの調査結果を紹介した。同資料は、未承認ツールが検出されるまでの期間を中央値403日とする別の調査も引用している。Gartnerは同年4月、世界のFortune 500企業で使われるAIエージェントが、1社平均で2025年の15未満から2028年には15万超に増えると予測した。
新たな「AI Cost Management」は、利用者・部門・実行環境ごとのAI支出を把握する機能だ。ServiceNowによると、先端モデルの利用料、SaaSに組み込まれたAI、クラウド事業者の費用、データセンターのGPU費用を一つの画面で確認し、消費量や品質を業務上の成果と照らし合わせる。金融機関向けにガバナンス、リスク、セキュリティを統合する「Operational Resilience」は、同社が提供開始を発表した。
■EmployeeWorksでは従業員がアシスタントを作成
同日発表された「ServiceNow EmployeeWorks」の更新では、従業員がコードを書かずに業務用AIアシスタントを作成・調整できるようにする。管理者が定めた権限の範囲内で、使うツール、参照する情報、動作を設定する。基盤となる仕組みは、推論、記憶、業務システムとの接続を組み合わせる。
「Productivity Assistants」には、調査や予定調整に使うアシスタントのほか、採用・人材情報、人事業務、管理職向けの機能が含まれる。「Productivity Routines」は反復作業をバックグラウンドで処理する。ServiceNowは、営業担当者が予定表を確認し、訪問先を調べ、会議資料を準備する使い方を例に挙げた。
開発者向けの「ToolSmith」は、自然言語による指示からアシスタント用のツールや連携機能を作る環境だ。ServiceNowによると、7万5000超のAPIを学習に利用し、連携の計画、ログの取得、修正案の提示、テストを支援する。「Conversations API」は、EmployeeWorksの機能を社内アプリやキオスクなどに組み込むための仕組みとなる。
EmployeeWorksには、ServiceNowが2025年12月に買収を完了したMoveworksの対話型AIと企業内検索の技術が使われている。同社はMoveworksについて、同年3月に28億5000万ドル(約4500億円)の買収契約を発表していた。今回発表したアシスタント、ルーチン、ToolSmith、Conversations APIなどは、対象を限定した提供段階にある。
■競合製品と導入企業の動き
企業のAIエージェントを一元管理する製品は、他社も展開している。Salesforceは2026年9月、外部製AIも含めてIDやポリシーを管理する構想を発表した。Microsoftは同年5月から「Agent 365」を一般提供し、SAPも「AI Agent Hub」を打ち出している。ServiceNowは、オープン仕様に基づく認証情報と実行時の権限確認をAI Passportの特徴としている。
NTT DATAは、管理対象外のITツールへの対応にServiceNowのAI管理基盤を利用し、EmployeeWorksの導入も始めている。SiliconANGLEの報道によると、同社はAIツールや利用目的の重複、従業員向けシステムの分断を課題として挙げた。NTT DATAのServiceNow担当責任者Jamie Robins氏は、プロセスやシステム、ツール、データの統合には時間がかかると説明している。
AI Passport、シャドーAI検出、AI Cost Managementの提供予定は2026年第4四半期だ。SiliconANGLEによると、価格体系は利用者数に基づくライセンスと、同社が「assists」と呼ぶAI利用枠を組み合わせ、必要に応じて追加購入できる。EmployeeWorksも同じ利用枠を使う。
元記事: ServiceNow Gives Enterprise AI Agents Cryptographic IDs to Enforce Limits at Runtime