NVIDIA「RTX Spark N1X」実機レビューを検証 強力な統合GPUと最大128GBメモリ、CPU性能は用途で差
2026年10月17日 16:50
NVIDIAのArmベースの新プラットフォーム「RTX Spark N1X」を搭載したWindows PCが、2026年10月16日に海外で発売された。初期レビューでは、統合GPUの高い性能と最大128GBの共有メモリが目立つ。一方、CPU性能やゲームの対応状況は用途ごとに確かめる必要がある。日本ではASUSが「ProArt P16」と「ProArt P14」の予約を受け付けており、10月23日から順次発売する。
■GPUとCPUが共有する最大128GBのメモリ
RTX Spark N1Xは、NVIDIAのBlackwell RTX GPUと、MediaTekが設計に協力したArmベースのGrace CPUを組み合わせたチップだ。CPU側とGPU側のダイはNVLink-C2Cで接続され、ComputerBaseが示したチップ間の双方向帯域幅は600GB/s。ノートPC向けの動作枠は45~80Wで、最大128GBのメモリをCPUとGPUで共有する。
上位版はCortex-X925を10基、Cortex-A725を10基備える20コアCPUと、6144基のCUDAコアを持つGPUで構成される。下位版は各9基の18コアCPUと5120基のCUDAコアを搭載する。高性能コアの最大クロックは上位版が4.0~4.1GHz、下位版が3.9GHzだ。
共有メモリにはLPDDR5X-9400を使い、256ビットのインターフェースによる最大帯域幅は300GB/s。これはダイ間の600GB/sとは別の数値で、GPUがモデルの重みなどをメモリから読み出す処理に関わる。128GB構成では最大96GBをGPU用に割り当てられるとComputerBaseは説明している。
設計の系譜は、2025年発売の小型AI開発機「DGX Spark」に搭載されたGB10 Grace Blackwellに連なる。RTX Spark N1XはWindowsノートPCや小型デスクトップ向けに構成を変え、DGX SparkにあるConnectX-7ネットワーク機能を省いた。小型デスクトップには最大140Wの構成も予定されている。
■統合GPUの強さとCPUの世代差
上位版のCUDAコア数6144基は、デスクトップ向けGeForce RTX 5070と同数で、GeForce RTX 5070 Laptop GPUの4608基を上回る。メモリ帯域幅は後者の384GB/sより低く、コア数だけでゲーム性能は決まらない。ComputerBaseのテストでは、RTX Spark N1Xは3DMark Steel Nomadで3119点を記録し、同媒体が比較したRTX 4070 Laptop GPU搭載機の2798点を上回った一方、RTX 5070 Laptop GPU搭載機の3347点には届かなかった。
Trusted Reviewsのテストでは、「サイバーパンク2077」が1080p・Ultra設定で平均69.73fps、QHDで47.12fpsだった。1080pでレイトレーシングのUltraプリセットを使うと30.63fpsとなった。同媒体は、画質設定やDLSSの使い方によってプレー体験が変わると評価している。
CPUのCortex-X925とCortex-A725はArmの2024年世代の設計だ。MediaTekが発表した「Dimensity 9600 Pro」には、より新しいArm C2系コアが採用されている。Windows Centralの20コア機はGeekbench 7.1でシングルコア2710点、マルチコア2万3571点を記録した。同媒体はマルチコア性能をM4 Proに近い水準と評価する一方、シングルコアでは新しい競合チップが上回るとしている。
PassMarkの2026年10月16日時点の公開データでは、20コア版のCPU Markは4万2224、シングルスレッド評価は4452だった。ただし、この時点の登録結果は2件で、同データベース自身が誤差の大きさを示している。CPU性能を見る際は、実機レビューで使われた設定や電源状態も合わせて確認したい。
■ローカルAIは容量と実行環境が鍵
大容量の共有メモリは、ノートPC上で大規模なAIモデルを扱う際に役立つ。4ビット量子化した700億パラメータ級のモデルには数十GBのメモリが必要で、64GBや128GBの構成が選択肢になる。実際に使える容量と速度は、量子化方式、コンテキスト長、OSやほかのアプリの使用量によって変わる。
NVIDIAは最大1200億パラメータのモデルと最大100万トークンのコンテキストへの対応を掲げる。10月に公開した「Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B 24GB」は、総パラメータ数740億、推論時に使うパラメータ数90億のモデルで、同社は2ビット量子化などによって24GBに収めたと説明している。NVIDIAの発表では、RTX Sparkで特定のベンチマークを実行した際に毎秒84トークンを記録した。
ソフトウェア面では、NVIDIAがWindows on Arm向けのCUDAやPyTorchのCUDA版、TensorRTなどを提供する。AMDのRyzen AI Maxシリーズも大容量の共有メモリを備える製品があり、対応するGPU計算環境はROCmだ。使用するAIツールがCUDAとROCmのどちらを利用できるかは、機種選びに直結する。
AppleのM4 Maxは最大128GBの共有メモリに対応し、40コアGPU構成の公称メモリ帯域幅は546GB/s。RTX Spark N1Xの最大容量はこれと同じで、帯域幅の公称値は300GB/sだ。AIモデルの生成速度にはメモリ帯域幅に加え、モデル形式や推論ソフトウェアなども影響するため、毎秒トークン数は同じ条件の実測値で比べる必要がある。
■DLSS 5、Windows on Arm、バッテリー駆動
NVIDIAは10月16日、「NBA 2K27」に更新版DLSS 5モデルを導入した。同社によると、モデルは約1億1800万パラメータへ24%縮小し、4K時のVRAM使用量を20%削減した。3D-Guided Neural Renderingの処理は9月版の2倍高速になり、対応ゲームのフレームレートは最大1.4倍になるという。GeForce RTX 50シリーズ、RTX Spark、GeForce NOWに提供される。
同じ発表では、フレーム生成の新しい軽量モードもベータ版として公開された。NVIDIAが示すRTX 5060での最大35%の高速化は、このフレーム生成モードの数値だ。DLSS 5は「ホグワーツ・レガシー」に11月5日、改造ツール「RTX Remix」に10月23日に追加される予定である。
RTX Spark搭載機はWindows 11 on Armを使用する。NVIDIAは発売時に「Counter-Strike 2」「Dota 2」「Fortnite」「Marvel Rivals」「Rocket League」「THE FINALS」などを遊べると案内した。アンチチート機能の対応はゲームによって異なり、「Call of Duty」シリーズのRTX Spark対応は2027年を予定している。
MicrosoftとNVIDIAは、ローカルAIエージェントの初期設定を支援する仕組みや、エージェントの権限を制御するMicrosoft Execution Containersも案内している。N1Xの55TOPSのNPUについては、ComputerBaseがNVIDIAへの取材を基に、現時点ではCopilot+機能向けで、サードパーティー製ソフトウェアからは利用できないと報じた。
HotHardwareがSurface Laptop Ultraで実施したPCMark 10のバッテリーテストは14時間35分だった。同じ機体で、電源接続時に比べてバッテリー駆動時のSpeedometerスコアは約18%低下したが、Cinebenchのマルチコア性能はほぼ維持された。同媒体が測定した一時的なシステム全体の消費電力は最大約138Wで、チップの80Wという動作枠とは測定対象が異なる。
■日本での発売と選び方
NVIDIAによると、海外ではASUS、Dell、HP、Lenovo、Microsoft、MSIの搭載ノートPCが10月16日から発売され、米国での開始価格は2599ドル(約41万1000円)だ。製品にはASUSのProArt P14・P16、Dell XPS 16、HP OmniBook Ultra、Lenovo Yoga Pro 9n、Microsoft Surface Laptop Ultraなどがある。価格と構成は地域ごとに異なる。
日本ではASUS JAPANがProArt P16(H7607)とProArt P14(H7407)の予約を開始した。128GBメモリ搭載モデルは10月23日から順次発売し、48GBモデルは11月中旬以降に発売する予定だ。ASUS公式ストアに掲載された128GB・1TB構成の価格は、2026年10月17日時点でP16が124万8000円、P14が119万8000円となっている。
ローカルAIや大きな3Dデータを扱い、Windows上でCUDAを使いたい開発者や制作者には、共有メモリ容量が大きな魅力となる。ゲームを主目的に選ぶ場合は、遊びたいタイトルのArm対応と、実機の画質設定別の結果を確認したい。CPU中心の作業やAI推論速度を重視する場合も、コア数やメモリ帯域幅の公称値だけでなく、目的のアプリとモデルを使った測定結果が判断材料になる。
元記事: RTX Spark Reviews Are In: Class-Leading GPU Meets Aging CPU Cores at Launch