EU、スマートグラスの個人情報保護で声明 撮影表示と事業者・利用者の責任を整理

2026年10月16日 11:46

欧州データ保護会議(EDPB)は2026年10月13日、スマートグラスによる個人データの扱いについて声明を採択した。撮影やAI機能の利用を周囲の人が認識できる設計を促すとともに、製品のメーカー、関連サービスの提供者、利用者が負う責任を利用状況に応じて整理した。日本でも販売される製品を含め、カメラ付き眼鏡の設計と使い方に関わる内容だ。

■撮影を周囲に伝える設計

スマートグラスは普通の眼鏡に似た外観のまま、写真や動画の撮影、音声の記録、翻訳などに使える。EDPBは、周囲の人が個人データの処理に気づきにくい点を重視した。病院、学校、職場、更衣室などでは、撮影される人への影響が特に大きくなり得るとしている。

声明は、処理の内容をその場で伝える方法として、LEDなどの表示灯、撮影音や声による操作、近くのスマートフォンへの通知、普通の眼鏡と区別しやすい外観を挙げた。これらは設計時に組み合わせを検討する例であり、一律に同時搭載を求める仕様ではない。表示灯については、照明条件が変わっても見えやすく、撮影やAIによる画像処理を周囲の人が認識できる時間だけ点灯することを重視する。

EDPBは、表示灯を覆った状態で情報を記録できないようにすることにも言及した。白色LEDは反射や日光のぎらつきと見間違えられる場合があり、視覚に障害のある人には光だけでは伝わりにくいとも指摘する。Bluetoothを利用した近接通知は将来の選択肢として示されたが、通知を受けるアプリを持たない人もいるため、表示方法の組み合わせが重要になる。

■メーカー、サービス事業者、利用者の責任

GDPR上、誰が個人データの管理者に当たるかは、処理の目的と手段を誰が決めるかで変わる。EDPBは、メーカーや連携アプリ、AIサービスの提供者が管理者となる場合、それぞれが自らの処理について義務を負うと説明した。周囲の人への情報提供を含む自社の義務を、製品の利用者任せにはできない。

利用者が写真や動画を家族や友人だけに共有するなど、純粋に個人的な活動にはGDPRの家庭内活動の例外が適用され得る。一方、不特定多数が閲覧できるSNSへの投稿や、業務、公務、政治活動での使用では、利用者自身が管理者または共同管理者となり得る。適用関係は個々の使い方に応じて判断される。

EDPBは、録画されていると感じることで、人々が公共空間での振る舞いを変える可能性にも触れた。周囲の人を継続的に記録する理由として、一般的・仮定的な安全上の懸念だけを挙げることは適切でないとしている。

■AI学習とデータ保存への視点

GDPRの対象となる個人データの処理には、収集前から有効な法的根拠が必要だ。EDPBは、撮影後に得た同意を、その撮影時の収集の根拠にはできないと説明する。周囲の人のデータをAI学習に使う場合、事業者が「正当な利益」に依拠するには、本人の権利や合理的な期待との慎重な比較衡量が必要になる。

声明は、連続撮影や保存期間を制限し、共有・再利用の前に周囲の人を識別しにくくする対策を挙げた。可能であれば端末上で処理し、主にリアルタイムの支援を目的とする製品では、継続的な保存を初期設定で無効にすることも提案する。保存が機能上必要な場合や、利用者が保護策の下で明示的に有効化する場合は、個別に扱う。

スウェーデンのSvenska DagbladetとGöteborgs-Postenは2026年2月、Metaのスマートグラスに由来する私的な映像を、ケニアの委託先の作業員が確認していたと報じた。ハンブルクのデータ保護当局は同年9月、検証したRay-Ban Meta Wayfarerの第1世代モデルについて、周囲の人の撮影やMetaによるAI学習の法的根拠に厳しい見解を示した。

■各国の動きと日本で販売される製品

フランスのデータ保護当局CNILは2026年5月、スマートグラスへの行動計画を公表した。同当局が実施した調査では、フランスの成人回答者の67%がプライバシーへのリスクを感じると答えた。6月にはG7のデータ保護当局が各国の対応をまとめ、欧州議会のRenew Europe所属議員も、女性が気づかないうちに撮影されたとの報道を受けて欧州委員会に質問を提出した。

ドイツの人権団体HateAidは8月、Ray-Ban Metaなどを巡り、Metaや眼鏡ブランド、販売事業者の経営陣を刑事告発した。同団体は、外見から撮影機器と分かりにくい製品の販売がドイツ法に反するとの見解を示している。EDPBは声明と併せ、スマートグラスの社会的な受け止め方を調べた外部専門家の報告書「The Connected Gaze」も公表した。

Metaは日本で2026年5月にRay-Ban MetaとOakley Metaの販売を始め、9月にはRay-Ban Metaの第3世代モデルを発売した。同社の日本語資料では、撮影中に白色の「キャプチャLED」が点滅し、覆われたことを検知するとカメラが無効になると説明している。また、カメラを搭載しないRay-Ban Meta Audioは米国で10月13日に出荷を始め、日本での展開は2027年を予定する。

EssilorLuxotticaの発表によると、Ray-Ban MetaとOakley Metaを合わせた2025年の販売本数は700万本超だった。Googleも眼鏡型端末向けのAndroid XRに取り組んでいる。EDPBは今回の声明を初期的な見解と位置づけ、スマートグラスに関する検討を続けるとしており、各社には撮影の分かりやすさとデータの扱いを製品ごとに検討する課題がある。

元記事: EU Requires Smart Glasses LED to Shut Camera Off When Covered: GDPR Now Falls on Makers

関連記事

最新記事