中国・舟山沖でグリーンアンモニア1,000トンを船舶間給油 大型ばら積み船へ商用供給

2026年10月16日 09:49

2026年10月13日から14日未明にかけ、中国・舟山沖の錨泊地で、アンモニア燃料の大型ばら積み船「Mineral Europa」にグリーンアンモニア1,000トンが船舶間方式で給油された。中国船級社は、グリーンアンモニアを外航船へ商用供給する一連の工程が稼働した事例としている。海運向けの供給を各地へ広げるには、燃料の生産、貯蔵設備、安全な給油体制の整備が続く。

■舟山沖で大型ばら積み船に給油

給油を担った「盛航永楽」は、液化ガス運搬船を改造したアンモニア給油船だ。中国船級社によると、同船は舟山・秀山東錨泊地で、ベルギー船籍の21万重量トン級ばら積み船「Mineral Europa」にグリーンアンモニアを移送した。作業には舟山の海事当局が立ち会い、安全管理を支援した。

この供給には、中国能源建設集団傘下の水素事業会社、ベルギーのCMB.TECH、物流を担う江蘇安徳福能源科技が関わった。生産地から陸上輸送、港での貯蔵、給油船による海上輸送を経て、外航船へ届ける経路が実際に使われた。

「Mineral Europa」は、中国船舶集団の青島北海造船がCMB.TECH向けに建造したアンモニア・ディーゼル二元燃料船である。CMB.TECHは同船を、アンモニアを主燃料に使える初の大型ばら積み船と説明している。同社は2029年までに、ばら積み船18隻、コンテナ船1隻、ケミカルタンカー2隻の計21隻を受け取る計画だ。

■エンジンと燃料タンクの仕組み

主機はWinGDの2ストローク二元燃料エンジン「X72DF-A」だ。WinGDによると、同系列のエンジンをスイスで全負荷試験した際、アンモニア運転時の熱効率はディーゼル運転時と同等で、未燃焼アンモニアは10ppm未満、温室効果ガスの一酸化二窒素は3ppm未満だった。これらは排ガス後処理装置を使わない試験で得られた値である。

WinGDは2026年6月、中国のCSSC Engineで「Mineral Europa」向けX72DF-Aの工場受入試験を完了した。同社によると、アンモニアは高圧で噴射し、全負荷時には着火用のパイロット燃料を燃料消費量の約5%使用する。船の温室効果ガス排出量を考える際には、アンモニアの製造・輸送と、パイロット燃料の使用も含めて評価する必要がある。

アンモニアの発熱量は1kg当たり約18.6メガジュールで、舶用ディーゼル燃料の約44メガジュールより小さい。質量だけで比べると、アンモニア1,000トンの燃焼エネルギーはディーゼル燃料約423トンに相当する。「Mineral Europa」は、容量3,000立方メートルのアンモニア燃料タンクを2基備える。

■吉林省から南京を経て舟山へ

今回の燃料は、中国・吉林省にある中国能源建設集団の松原水素エネルギー産業パークで製造された。同施設は再生可能電力を使って水から水素を製造し、空気中の窒素と反応させてアンモニアを合成する。第1期設備は2025年12月に稼働を始めた。

第1期の計画には、800メガワットの再生可能エネルギー設備と、年間約4万5,000トンの水素生産能力が含まれる。グリーンアンモニアとグリーンメタノールの計画生産能力は、それぞれ年間約20万トンだ。蓄電池や水素の貯蔵も使い、変動する再生可能電力を燃料製造につなぐ。

CMB.TECHの2025年12月の発表によると、松原の事業は同月2日にISCC EU RFNBO認証を取得した。RFNBOは「非生物由来の再生可能燃料」を指し、認証では再生可能電力の調達、温室効果ガス排出量、供給経路の追跡などが審査対象となる。CMB.TECHは松原産グリーンアンモニアの購入契約を結び、江蘇安徳福への少数持分出資も発表している。

松原から南京港には、グリーンアンモニア5,000トンが先行して陸送された。今回給油された1,000トンは南京の貯蔵拠点を経て「盛航永楽」に積まれ、舟山沖へ運ばれた。CMB.TECHによると、江蘇安徳福は遼寧省・盤錦港にもアンモニア貯蔵拠点を計画し、2027年後半の稼働を目指している。

■日本の先行事例と錨泊地給油

日本郵船などは2026年9月17日、ジャパンマリンユナイテッド有明事業所の岸壁で、アンモニア輸送船「松栄丸」から建造中のアンモニア燃料アンモニア輸送船へ、船舶間方式で燃料を補給した。海上試運転に向けた給油であり、アンモニア燃料船への船舶間補給の先行事例だ。

舟山での作業は、錨泊中の外航商船へグリーンアンモニアを供給した点に特徴がある。専用の給油船を使えば、燃料を受け取る船が停泊する場所まで運べる。供給範囲を広げるには、燃料を積み込む拠点と、寄港地ごとの安全手順や許可の整備が欠かせない。

CMB.TECHは10月9日、「Mineral Europa」が豪州への初航海を始めたと発表した。同船は豪資源大手Fortescueとの傭船契約に基づき、豪州からの鉄鉱石輸送に使われる。FortescueはCMB.TECHから最大12隻の大型ばら積み船を傭船する計画で、その中にはアンモニア二元燃料船と、将来の転換に備えた船が含まれる。

■船隊と供給網の拡大

商船三井もCMB.TECHとの間で、アンモニア燃料のケープサイズばら積み船3隻、ケミカルタンカー2隻、将来の燃料転換に備えたケミカルタンカー4隻の計9隻について、共同保有や定期用船を決めている。日本郵船による試運転向け給油とともに、日本企業も船舶と燃料供給の両面で導入を進めている。

豪州のピルバラ港湾当局は、ポートヘッドランド港の指定錨泊地でアンモニアを船舶間給油する試験を2026年に実施する計画を示している。DNVは海運燃料としてのアンモニアについて、エンジンと船舶の開発が進む一方、低排出アンモニアの供給量、港湾設備、安全基準、乗組員の訓練が普及の課題だと分析する。

DNVが公表した需要推計では、海運用アンモニアは2030年に年230万トン、2040年に年6,200万トン、2050年に年2億4,500万トンに達する。これらは将来の需要を見積もった数値であり、舟山で稼働した供給経路を各地に広げるには、継続的な生産と給油拠点の整備が求められる。

国際海事機関(IMO)の2023年戦略は、国際海運の温室効果ガス排出を2050年ごろまでに実質ゼロにする目標を掲げる。2008年比の排出削減については、2030年に少なくとも20%、2040年に少なくとも70%を目指す目安を示し、それぞれ30%、80%への上積みを目指す。アンモニア燃料船と供給網の整備は、この目標に向けた海運業界の取り組みの一つとなる。

元記事: World First: Commercial Green Ammonia Refueled Ship in Open Water, Closing Carbon-Free Fuel Chain

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