インドネシア産パーム油、国内需要に森林伐採リスクの67% Traseが供給網を分析

2026年10月16日 12:05

Traseが2026年10月13日に公表した分析によると、インドネシア産パーム油の国内需要には、2024年の供給網を通じて評価した森林伐採リスクの67%が結び付いていた。同国ではパーム油由来のバイオディーゼルを軽油に50%混ぜる「B50」が始まり、国内の原料需要が一段と増える見込みだ。分析はまた、アブラヤシ農園のために排水された泥炭地からの排出が、生産に伴う温室効果ガスの大半を占めると示した。

■国内需要に集中する森林伐採リスク

Traseはストックホルム環境研究所(SEI)とGlobal Canopyが主導する供給網の透明化事業だ。今回の分析は2023~2024年のパーム油供給網と、2025年までの森林伐採データを扱う。2024年のインドネシアのパーム油生産量は約4700万トンで、約2460万トン、全体の53%が国内で使われた。

Traseによると、2024年の国内需要に結び付く森林伐採エクスポージャーは62万9000ヘクタールだった。これは、その年に新たに伐採された面積ではなく、過去10年間の農園開発に伴う森林伐採を、現在の調達量に応じて市場へ割り当てた指標である。最大の輸出先インドに結び付く7万1400ヘクタールの約8.8倍に当たる。

国内需要には食用、加工品、バイオディーゼルなどが含まれる。2024年にはバイオディーゼルのB35混合義務や、輸出前に一定量を国内市場へ供給する政策も需要を支えた。2024年の供給網に関する数字から、用途ごとの森林伐採面積を直接読み取ることはできない。

■泥炭地の排水が排出量を押し上げる

泥炭土は、水が多く酸素の乏しい場所で植物遺体が分解されきらずに積み重なった土壌だ。農園用の排水路によって地下水位が下がると、有機物の分解が進み、蓄積された炭素が主に二酸化炭素として放出される。地表が沈む「泥炭沈下」にもつながる。

Traseが評価したインドネシアのパーム油生産に伴う温室効果ガス排出量は、土地利用変化、泥炭沈下、泥炭火災を合わせ、2015~2024年に年平均約2億1500万トンのCO2換算だった。2024年には泥炭沈下に伴う排出が約1億4800万トンに達し、泥炭火災と合わせて評価対象排出量の約85%を占めた。

学術誌「Biogeosciences」に掲載された東南アジアの農園を対象とする研究では、排水後5年間の泥炭沈下は平均142センチメートルで、うち75センチメートルが最初の1年に起きた。排水から18年後までの累積沈下の92%は泥炭の酸化によると推定された。同研究は、農園で可能な地下水位管理による炭素損失の削減幅を、調査時の条件と比べて最大20%と見積もっている。

環境団体Pantau Gambutの調査では、スマトラ、カリマンタン、パプアの泥炭地を横切る水路の総延長は約28万1000キロメートルに上る。同団体が対象とした泥炭地の水文単位約2420万ヘクタールのうち、約1640万ヘクタールは火災への脆弱性が中程度または高いと評価された。

■森林開墾の前線と供給網の変化

Traseによると、パーム油向けの新たな森林伐採は2024年に約3万2000ヘクタールで、2008~2015年の年平均を81%以上下回った。一方、パプアでは2024年の約3600ヘクタールから2025年には7300ヘクタール超へ増えた。2025年の全国の森林伐採の56%は、インドネシア領ボルネオのカリマンタンが占めた。

輸出ではRoyal Golden Eagle、Sinar Mas、Musim Mas、Wilmarの4企業グループが2024年の取扱量の52%を占めた。Royal Golden Eagleはシェア15.5%で最大だった。一方、船積み記録の不足によりTraseが出所を「不明」と分類した輸出量の割合は、2018年の1%未満から2024年には約17%へ上昇した。

Traseの2025年の別の分析は、ブラジル産牛肉とインドネシア産パーム油・木材パルプの輸出を調べ、JBS、Marfrig、Minerva、Musim Mas、Royal Golden Eagle、Sinar Mas、Wilmarの7グループに、2022年の森林伐採・泥炭地劣化に伴う排出への大きなエクスポージャーが集中すると推計した。これは調達先に伴うリスクの推計であり、企業ごとの直接排出量を測定した数字ではない。

■B50の導入と国内の原料需要

インドネシア政府は2026年7月1日にB50の実施を始め、プラボウォ・スビアント大統領が同月9日、西ジャワ州カラワンで正式に開始を宣言した。B50は軽油にパーム油由来のバイオディーゼルを50%混合する制度で、2025年に導入されたB40から混合率を引き上げる。

エネルギー鉱物資源省は、B50の実施に必要なバイオディーゼルを年167億~180億リットル、粗パーム油を年約1520万~1630万トンと見込む。同省は外貨節約額を年170兆ルピア、二酸化炭素の排出削減効果を年約4446万トンと推計している。これらはいずれも政府による見通しである。

環境団体Greenpeace Indonesiaは、B50による原料需要の増加が森林開墾を促すおそれがあると指摘している。Traseが示した2024年の国内需要の内訳には食用や加工品も含まれるため、森林保全を考える際には、燃料向けだけでなく国内の調達先全体を把握する必要がある。

■既存農園への対策と追跡可能性

Traseによると、泥炭地にある生産中のアブラヤシ農園は2015年の約128万ヘクタールから2024年には約164万ヘクタールへ、28%増えた。新規開発を抑える取り組みに加え、既存農園の排水管理や泥炭地の再湿潤化も、継続する排出を減らすための課題となる。

政府は小規模農家の古いアブラヤシを植え替える「Peremajaan Sawit Rakyat(PSR)」を進め、2024年には助成額を1ヘクタール当たり6000万ルピアへ引き上げた。2026年の実施目標は5万ヘクタールで、事業を運営する機関の発表では、同年8月までに2万229ヘクタールが実施された。既存農地の生産性を上げる手段だが、農地の権利関係や植え替え期間中の収入減が参加の障壁となっている。

2026年1~8月には、MapBiomas Fireの集計でインドネシアの焼失面積が67万7743ヘクタールに達した。Traseは、乾燥した泥炭地では干ばつ時に火災が広がりやすく、農業生産と温室効果ガス排出の双方に影響すると指摘する。

■輸出向け規制が届く範囲

Traseによると、2024年に観測できたパーム油輸出量の約93%は、森林破壊ゼロを掲げる企業が取り扱っていた。一方、査読誌「PNAS」に掲載された研究では、2018~2020年に誓約を掲げる企業の調達先で年間の森林伐採率は1%未満だったものの、誓約のない企業の調達先と比べた追加的な削減は確認されなかった。

EU森林破壊防止規則はパーム油を対象に含み、対象製品の生産地を示す情報などを事業者に求める。大・中規模の事業者には2026年12月30日から、多くの小規模事業者には2027年6月30日から適用される。インドネシアからEUへのパーム油輸出は2018年の378万トンから2024年には190万トンへ減少しており、TraseはEUの再生可能エネルギー政策や企業の調達方針を背景に挙げている。

輸出先に関する制度の対象は、その国へ出荷される製品である。生産量の過半を国内で使うインドネシアでは、国内の買い手や調達元を把握できる情報を充実させることが、森林伐採と泥炭地への影響を追ううえで重要になる。

元記事: Trase Earth Data Pins Palm Oil Peat Carbon to Buyers: Indonesia’s B50 Mandate Expands Its Blind Spot

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