米FRB、ステーブルコイン規制案を公表 1対1準備・資本要件、バー理事は償還とAMLに論点
2026年9月26日 19:05
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月24日、GENIUS法に基づき、FRB監督下の決済型ステーブルコイン発行体に準備資産、資本、償還、リスク管理などの要件を課す規則案と、銀行が発行子会社の承認を申請するための手続き案を公表した。理事会は2案の公表を全会一致で承認した。
意見募集期間は連邦官報への掲載後60日間となる。マイケル・バーFRB理事は提案を支持する一方、金利・為替リスクへの対応、額面での償還権、マネーロンダリング対策(AML)を巡る監督・執行基準について、最終規則までに検討が必要だとの考えを示した。
■FRBが主要4当局で最後の規則案
2025年7月18日に成立したGENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)は、決済型ステーブルコインに連邦・州レベルの規制枠組みを設けた。主要な連邦決済型ステーブルコイン規制当局はFRB、通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)、全米信用組合監督庁(NCUA)の4機関である。
OCC、FDIC、NCUAはFRBに先行して、所管する発行体などを対象とするGENIUS法の実施規則案を公表していた。FRBは主要4当局のうち最後に、所管する決済型ステーブルコイン発行体に対する包括的な規則案を示した。
FRB案の対象となる発行体には、FRBの承認を受けた保険加入州加盟銀行の子会社のほか、州当局の認可を受けた発行体のうち、無保険の州認可預金取扱機関で発行残高が100億ドル以上となり、GENIUS法に基づいてFRBの規制枠組みに移行する事業体が含まれる。
■1対1の準備資産と段階的な資本要件
規則案は、FRB監督下の決済型ステーブルコイン発行体に対し、発行残高の額面以上の公正価値を持つ適格準備資産を常時保有する「1対1」の裏付けを求める。準備資産は発行体のその他の資産から分別して管理する必要がある。
適格資産には米ドル現金、連邦準備銀行への預け金、保険加入預金取扱機関への要求払い預金、残存期間93日以内の米国債、米国債を裏付けとする翌日物レポ取引などが含まれる。発行体には、無保険預金やレポ取引の取引先が一部の金融機関に集中するリスクを抑えることも求める。
資本要件では、発行・償還や準備資産管理に伴うオペレーショナルリスクに対し、発行残高の最初の200億ドルに2%、次の300億ドルに1.5%、500億ドルを超える部分に1%を課す段階的な計算方式を採用する。
この計算では、発行残高が500億ドルの場合、発行残高に連動するオペレーショナルリスク資本は計8億5000万ドルとなる。最初の200億ドルに対する4億ドルと、次の300億ドルに対する4億5000万ドルの合計である。
これとは別に、非準備資産に関連する事業収益について、過去3年間の年平均収益の25%を基にしたオペレーショナルリスク資本を求める。無保険預金など一部の準備資産には2%の信用リスク資本も課すほか、実際のオペレーショナル損失に応じて所要資本を調整する仕組みも設ける。
■償還は原則2営業日以内、月次で準備資産を開示
発行体は償還方針を公表し、原則として2営業日を超えない期間で償還する必要がある。一方、安全性・健全性や金融安定への脅威がある場合などには、FRBが償還期間の延長を認められる仕組みも盛り込まれた。
準備資産が1対1の水準を下回った場合、発行体はFRBに通知しなければならない。その後は準備資産を清算して発行済みステーブルコインを償還するのが原則だが、速やかに1対1の水準へ戻す計画を提出し、FRBがその実行を指示する場合は是正を進めることができる。
発行体には、発行残高と準備資産の価値・構成を示す月次報告の公表も求める。準備資産の構成に関する月次報告は、公表前に登録済み会計事務所による検証を受ける必要がある。
最高経営責任者(CEO)と最高財務責任者(CFO)は月次報告の正確性をFRBに認証する。発行残高が500億ドルを超える一定の発行体には、年次財務諸表について独立監査を受ける追加要件も設けられる。
■取り付けリスクと準備資産の信用・流動性
ステーブルコインの取り付けリスクを巡っては、準備資産の構成と損失吸収力が重要な論点となる。ニューヨーク連銀の元総裁ウィリアム・ダドリー氏とブルッキングス研究所シニアフェローのネリー・リャン氏は2026年5月、OCCに提出した意見書で、無保険の銀行預金は米国債などより信用・流動性リスクが高く、こうした資産に対して十分な資本を求める必要があると指摘した。
FRB案はこの点について、無保険預金など一部の準備資産に2%の信用リスク資本を課し、準備資産の分散も求めている。一方、バー理事は9月24日の声明で、提案が金利リスクと外国為替リスクを十分に扱っているかについて、意見募集を通じた検討が重要だとした。
銀行預金を準備資産として保有するリスクが表面化した例が、2023年3月のシリコンバレー銀行(SVB)破綻時のUSDCである。発行元のCircleは当時、USDCの準備資産33億ドルをSVBに預けていた。USDCは流通市場で一時0.87ドル前後まで下落したが、米当局がSVBの預金者を全面的に保護する措置を発表した後、額面に向けて回復した。
バー理事は、ステーブルコインが安定した決済手段となるには、市場ストレスや発行体自身に問題が生じた場合も含め、額面で確実かつ迅速に償還できる必要があるとの考えを示した。最終規則では、保有者が額面で償還を求められる権利を明確にすることが重要だとも述べた。
■バー理事、AML執行基準にも懸念
バー理事がもう一つ問題視したのが、AMLを巡る監督・執行基準である。規則案は、銀行秘密法(BSA)・AML上の不備について、FRBが監督・執行措置を取るには問題が「重大またはシステミック」であることを求める。
バー理事は、この基準がFRBによる適切なAMLプログラムの監督にどのような影響を与えるか不明だとして、最終規則で対応を検討する意向を示した。準備資産の制限や透明で標準化された資本要件には肯定的な見方を示しつつ、信頼できる決済手段とするには今後も作業が必要だとしている。
■銀行向けには発行子会社の申請手続きを整備
2本目の規則案は、FRB監督下の保険加入州加盟銀行が、決済型ステーブルコインを発行する子会社の承認を求める際の申請手続きを定める。申請には事業計画、財務情報、関連する方針、資本構成に関する資料などを提出する。
FRBは、必要な情報がそろった申請について120日以内に判断する。規則案は不服申し立て、聴聞、最終判断の手続きも定める。
GENIUS法には銀行子会社以外の発行体にも別の認可経路が設けられており、発行体の種類や設立形態に応じて所管する規制当局が異なる。FRBの今回の申請手続き案は、そのうち保険加入州加盟銀行の子会社を対象とする制度を具体化するものとなる。
■ステーブルコインに預金保険は適用されず
GENIUS法の規制枠組みは、適格な発行体に準備資産、償還、情報開示などの要件を課す一方、決済型ステーブルコイン自体を連邦政府が保証するものではない。FDICの預金保険や、NCUAの信用組合預金保険も適用されない。
発行体が破綻した場合、ステーブルコイン保有者は法令上必要な準備資産に対し、他の債権に先立つ按分比例の請求権を持つ。ただし、銀行預金のような政府による元本保証が付くわけではない。
■CLARITY法案は上院で審議入りできず
ステーブルコイン以外のデジタル資産市場を広く対象とするH.R.3633(Digital Asset Market Clarity Act)を巡っては、9月15日に米上院で審議入りのためのクローチャー動議が採決され、賛成49、反対50で否決された。可決には上院の5分の3の賛成が必要だった。
この採決では法案は審議入りできなかったが、GENIUS法とは別の立法手続きであり、FRBの今回の規則案の法的根拠や意見募集の日程には影響しない。
■GENIUS法は2027年1月18日までに発効
GENIUS法の規定は、2025年7月18日の成立から18カ月後にあたる2027年1月18日か、主要な連邦決済型ステーブルコイン規制当局が同法を実施する最終規則を公布した日から120日後の、いずれか早い日に発効する。
FRBの9月24日の規則案はまだ最終規則ではない。意見募集期間は連邦官報への掲載から60日間で、その後、FRBが寄せられた意見を検討した上で最終規則の策定を進めることになる。
OCCのジョナサン・V・グールド長官は8月、同庁の最終規則を11月までに公表する方針を示した。ただし、FRBを含む各当局の最終規則がいつ出そろうかは現時点では確定していない。
元記事: Federal Reserve Sets Stablecoin Capital Floor; Barr Flags Run Risk and AML Gap