トランプ氏側近、米アンソロピック・アモデイCEOへの批判強化―AI安全論争が政治争点に

2026年9月25日 16:34

 トランプ米大統領の側近らが、人工知能(AI)開発企業Anthropicのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)に対する批判を強めている。高度なAIの危険性を巡る議論が政治色を増すなか、アモデイCEOを過度なAI悲観論の象徴として位置付けようとする動きである。

 米ニュースサイトのAxiosによると、今週、ホワイトハウス内で回覧された文書は、アモデイCEOと「効果的利他主義(EA)」との関係を取り上げている。効果的利他主義とは、証拠と合理的な分析に基づき、利用可能な資源によって社会的な利益を最大化しようとする思想運動である。

 文書を作成したのは、ホワイトハウスには勤務していないトランプ氏の政治顧問だという。

 今回の動きは、高度なAIがもたらし得る危険に米国がどう対応すべきかを巡る政治的対立の新たな局面となる。トランプ氏はAIが人類の存続を脅かすとの警告を退けている。一方、アモデイCEOは、急速に能力を高めるAIシステムに対し、より強固な安全対策が必要だと主張する業界の代表的な人物となっている。

 トランプ氏は9月14日、SNSへの投稿で「AIが世界を支配し、人類を滅ぼす」との懸念を「でっち上げ」と表現した。AIに必要な唯一の安全装置は「強く賢明な大統領」だとも主張し、AI開発の減速や規制強化を求める業界関係者を批判した。

 回覧文書は、効果的利他主義について「AIによる破滅論に至る導線を築いた」と主張し、アモデイCEOとAnthropicを同運動に結び付けようとしている。動物福祉や将来世代、極めて高度なAIが将来的に道徳的配慮の対象になり得るとの考え方も批判した。

 さらに、効果的利他主義は「市民より外国人を、家族よりエビを」優先し、現在生きている人々より仮想的な将来世代を重視していると主張した。文書は、ダリオ・アモデイCEOと妹でAnthropic社長のダニエラ・アモデイ氏を、同運動に関係する人物として名指しした。

 Anthropic側は、効果的利他主義という呼称から距離を置いてきた。ダニエラ・アモデイ社長は2025年のWIREDのインタビューで、「その呼び方を自分の立場を示すものとは考えていない」と語った。

 Anthropicの研究者であるアマンダ・アスケル氏も、社内で効果的利他主義者に会ったことはあるとしながらも、この思想は「組織を特徴付けるテーマではない」と説明している。ダリオ・アモデイCEOも過去のインタビューで、自身を同運動の一員とは考えていないと述べている。

 ただ、Anthropicは創業初期に、効果的利他主義やAIの存亡リスクに関する活動と関係の深い人物から多額の出資を受けた。初期の出資者には、スカイプ共同創業者のヤーン・タリン氏や、暗号資産交換業大手FTXの創業者サム・バンクマンフリード氏が含まれる。FTXの破産財団が保有していたAnthropic株は、その後、破産手続きのなかで売却された。

 ダニエラ・アモデイ社長の夫であるホールデン・カルノフスキー氏は、慈善団体の評価機関GiveWellと助成団体Open Philanthropyを共同設立し、2025年にAnthropicへ入社した。両団体は効果的利他主義と密接な関係を持つ組織として知られる。

 政治的な対立は、Anthropicが大規模な新規株式公開(IPO)に向けた準備を進めるなかで浮上した。同社の生成AI「Claude」は、巨額の資金が流入する最先端AI市場で競争している。トランプ政権との対立が再び激しくなれば、投資家にとって新たな懸念材料となる可能性がある。

 今回の対立は、急速に進歩するAIに米政府がどう対応するかを巡る、より広範な意見の相違も映している。アモデイCEOは、自律性を高めるAIシステムが十分な安全対策なしに開発されれば、深刻なリスクをもたらす恐れがあると繰り返し警告してきた。

 AIの安全性に対する懸念は、Anthropicや効果的利他主義の関係者に限られない。OpenAIのサム・アルトマンCEO、Google DeepMindのデミス・ハサビスCEO、実業家のイーロン・マスク氏も、高度化するAIシステムの開発を慎重に進めるよう求めている。

 一方、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOとマイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、AIを巡る社会的な不安が高まるなかでも、AIがもたらす経済的、社会的な恩恵を強調している。

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