サムスン、次世代スマホ向けLPDDR6をSnapdragonで検証完了 最大114GB/sの帯域幅
2026年9月25日 11:24
サムスン電子は、クアルコムの次世代モバイルプラットフォーム「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」で、16GBのLPDDR6メモリの検証を完了した。最大114GB/sのメモリ帯域幅と、従来のLPDDR5Xに比べて最大21%の電力効率向上を実現したとしている。スマートフォン上で動作するAIの高度化に向け、高速性と省電力性を両立する次世代メモリの実用化が進んだ。
■次世代SnapdragonでLPDDR6の動作を検証
サムスン電子は、クアルコムの「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」において、次世代低消費電力DRAM「LPDDR6」のプラットフォーム検証を完了した。2026年9月22~24日に米ハワイ州マウイ島で開催された「Snapdragon Summit 2026」に合わせて発表したもので、クアルコムの次世代モバイルプラットフォームにおける業界初のLPDDR6検証となる。
今回検証されたのは、容量16GB、入出力速度が最大10.7GbpsのLPDDR6メモリだ。サムスンとクアルコムは開発の初期段階から技術協力を進め、メモリ単体の性能だけでなく、システム・オン・チップ(SoC)と組み合わせた際の性能や電力効率、信頼性について検証した。
プラットフォーム検証は、新しいメモリを実際の製品に採用するための重要な工程となる。メモリ自体が所定の仕様を満たしていても、搭載するSoCとの組み合わせで安定して動作するとは限らないためだ。今回の検証完了により、サムスンのLPDDR6を次世代スマートフォンなどに採用するための技術的な準備が進んだ。
クアルコムは9月22日、Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6とSnapdragon 8 Elite Gen 6の2製品を発表した。両製品は、CPUやGPU、NPUを活用して端末上でAI処理を行う次世代モバイルプラットフォームとして位置付けられている。今回のLPDDR6検証は、このうち上位モデルのExtreme Gen 6で実施された。
■最大114GB/sの帯域幅でAI処理を支援
LPDDR6は、スマートフォンやタブレットなどで使用される低消費電力DRAMの新しい規格だ。半導体標準化団体JEDECが2025年7月に「JESD209-6」として規格を公表した。従来のLPDDR5Xからメモリの入出力構造を改良し、高速なデータ転送と効率的なメモリアクセスを目指している。
サムスンによると、同社のLPDDR6は最大114GB/sのメモリ帯域幅を実現する。メモリ帯域幅は、プロセッサとメモリの間で単位時間当たりに転送できるデータ量を示す指標だ。今回検証された製品のピン当たり転送速度は最大10.7Gbpsで、既存の高速LPDDR5X製品と同水準だが、入出力構造の拡張によって総帯域幅を高めている。
この性能は、端末上で大規模言語モデル(LLM)を動作させるオンデバイスAIで重要になる。LLMの推論処理では、応答を生成する際にモデルの重みや、過去の処理結果を保持するKey-Value(KV)キャッシュなどのデータを繰り返し参照する。処理するデータ量が増えるほど、メモリとプロセッサの間で効率よくデータを転送することが求められる。
メモリ帯域幅の拡大は、データ転送が処理速度を制約している場合に、その待ち時間を短縮する効果が期待できる。特に、大規模なモデルを使う場合や、長い会話履歴を保持しながら応答を生成する場合には、メモリから必要なデータを供給する能力が重要となる。ただし、実際のAI処理速度はプロセッサの演算能力やモデルの構成、ソフトウェアの最適化などにも左右される。
■DVFSとDEMで電力効率を最大21%改善
サムスンのLPDDR6は、メモリの使用状況に応じて消費電力を調整する2つの機構を採用している。動的電圧・周波数スケーリング(DVFS)と、Dynamic Efficiency Mode(DEM)だ。両者を組み合わせることで、高いデータ転送性能を維持しながら、必要以上の電力消費を抑えることを目指している。
DVFSは、処理負荷に応じてメモリの動作電圧と周波数を動的に調整する技術だ。高い性能が必要な場合と、比較的軽い処理を行う場合で動作条件を切り替え、消費電力を最適化する。一方、DEMはメモリの使用率が低い時間帯に不要な電力消費を削減する仕組みで、負荷の変動に応じた電力管理を可能にする。
オンデバイスAIでは、集中的な演算が必要な場面と、処理負荷が比較的軽い場面が交互に発生することがある。DVFSとDEMは、こうした負荷の変化に合わせてメモリの動作を調整するという点で、AI処理時の省電力化に役立つ。
サムスンによると、これらの技術によってLPDDR5Xに比べて電力効率を最大21%改善した。同社の標準ベンチマークを用いた社内試験に基づく数値であり、実際の性能や消費電力は端末構成や使用条件によって異なる。メモリの電力効率向上は、AI処理時の消費電力を抑え、スマートフォンのバッテリー駆動時間を維持するうえでも重要となる。
■PRACで長時間のメモリ動作における信頼性を向上
LPDDR6には、メモリへのアクセスが集中した際の信頼性を高めるため、Per-Row Activation Counting(PRAC)と呼ばれる機構も採用されている。これは、DRAM内の特定の行が繰り返し活性化される状況を監視し、データへの干渉が生じるリスクを管理する技術だ。
DRAMでは、特定のメモリ行を短時間に繰り返し活性化すると、隣接する行のデータに影響が及ぶ場合がある。この現象は「Rowhammer(ロウハンマー)」として知られ、データのビット反転につながる可能性がある。PRACは行ごとの活性化回数を把握し、過度にアクセスが集中する状況への対策を可能にする。
オンデバイスAIの高度化に伴い、メモリには複雑な処理を長時間にわたって安定して支えることが求められている。複数の情報を組み合わせるマルチモーダルAIや、会話の文脈を保持しながら複数段階の処理を行うAIエージェントでは、メモリの性能だけでなく、継続的な動作における信頼性も重要になる。
サムスンは、PRACによる保護機能が、複雑なマルチモーダル処理や長時間動作するオンデバイスAIエージェントの信頼性向上に寄与するとしている。メモリ行への反復的なアクセスを監視する仕組みは、処理が長時間続く環境で安定した動作を支えるための技術の一つとなる。
■サムスンとクアルコム、次世代AI端末向けの協力を継続
サムスン電子のメモリ事業部で製品企画を担当するJangseok Choi副社長は、同社による業界初のLPDDR6開発に続き、クアルコムの次世代モバイルプラットフォームでサンプル提供と検証を完了できたことに言及した。そのうえで、今回の成果はLPDDR6の技術面での先進性と製品化に向けた準備状況を示すものだと述べた。
クアルコム・テクノロジーズの製品管理担当副社長、Salman Saeed氏も、Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6でのLPDDR6検証完了について、両社の緊密な協力を示す成果だと説明した。LPDDR6は、高度化するオンデバイスAIを支えるうえで必要な帯域幅と電力効率を提供するとしている。
次世代メモリの開発では、サムスン以外のメーカーも製品化を進めている。SK hynixは2026年3月、第6世代10nm級プロセス「1c」を用いたLPDDR6の開発を発表した。同社によると、転送速度は最大10.7Gbpsで、LPDDR5Xに比べてデータ処理速度を33%、電力効率を20%以上改善した。2026年後半に製品供給を開始する計画も示している。
今回のサムスンの検証完了は、LPDDR6が次世代モバイルプラットフォームへの採用に向けて前進したことを示す。一方、実際にどのスマートフォンへ搭載されるかは、端末メーカーによる製品発表を待つ必要がある。
■LPDDR6搭載スマートフォンの登場時期は
クアルコムは、Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6とSnapdragon 8 Elite Gen 6を搭載するスマートフォンについて、HONOR、iQOO、Motorola、OnePlus、OPPO、REDMI、RedMagic、vivo、Xiaomiなどのメーカーから登場すると発表している。ただし、今回検証されたサムスン製LPDDR6が、これらのメーカーのどの端末に採用されるかは明らかになっていない。
次世代SoCへの対応が確認されたことで、LPDDR6は今後の高性能Androidスマートフォンに採用される可能性がある。もっとも、同じSoCを搭載する端末であっても、採用されるメモリの種類や容量は製品ごとの設計によって異なる。今回の検証完了だけで、特定のスマートフォンへの搭載や発売時期が確定したわけではない。
LPDDR5Xを搭載する既存のスマートフォンについては、ソフトウェア更新によってメモリをLPDDR6へ変更することはできない。メモリの種類や接続構成は端末のハードウェア設計に依存するためだ。
今後、LPDDR6搭載端末が登場すれば、メモリ帯域幅の拡大や電力効率の向上が、実際のAI処理速度やバッテリー駆動時間にどの程度反映されるかが注目される。特に、端末上で大規模なAIモデルを利用する際には、メモリの性能とプロセッサの処理能力を組み合わせたシステム全体の性能が重要となる。
元記事: Samsung LPDDR6 Passes Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6 Validation for 2027 Flagships