Figure AIの「Helix 2.5」、未知の30住宅で家事タスク成功率56% Index事前学習の効果を検証

2026年9月20日 18:21

Figure AIは2026年9月17日、ヒューマノイドロボット向けニューラルネットワーク「Helix 2.5」を発表した。事前にデータを収集していない米サンフランシスコ・ベイエリアの30住宅で家事タスクを実行させ、全420回の試行における成功率は56%だったという。

同社は、人間の行動動画を集めたデータセット「Index」による事前学習の効果を調べるため、モデル構造、学習手順、タスク固有データ、評価方法をそろえた比較実験も実施した。Indexで事前学習したモデルの成功率が56%だったのに対し、事前学習を行わずランダムな重みからタスク学習を始めた比較モデルは9%だったと報告している。

一方、今回の結果はFigure AIが設計、実施した社内評価であり、第三者による再現実験は公表されていない。56%という成績も、監督なしで家庭へ導入できるほどの信頼性を示すものではなく、未知の環境への適応能力を測る初期の検証結果と位置付けられる。

■未知の30住宅で同じモデルを使用

評価したのは、リビングの片付け、タオルたたみ、ベッドメーキングの3種類である。Figure AIによると、全30住宅で同じ固定済みモデルを使い、現地で追加データを収集したり、住宅や評価物体に合わせてモデルの重みを調整したりすることはなかった。

評価に使う玩具、タオル、寝具は実験開始前に取り分けられ、タスク固有の学習データに同じ物体が含まれていないことをAIと人の双方で確認したという。ソファやベッド、作業面などには、それぞれの住宅に置かれていた家具を使用した。

リビングの片付けでは、室内に散らばった13〜15個の玩具をすべて拾い、バスケットに入れることを求めた。玩具1個当たりの制限時間は1分で、すべてを片付けなければ成功とは認められなかった。

タオルたたみでは、タオルを拾ってたたみ、バスケットに入れるまでを評価した。ベッドメーキングでは、枕2個をベッド上部3分の1の範囲に置き、掛け布団の両側を伸ばして上端まで届かせることを成功条件とした。安全上の理由で人が介入した試行は失敗として扱われた。

■3種類のタスクで成功率に差

Figure AIが公表したタスク別の成績では、ベッドメーキングが140回中94回成功して67%、タオルたたみが140回中87回で62%、リビングの片付けが140回中56回で40%だった。合計では420回中237回の成功となり、四捨五入した成功率が56%となる。

これらの作業には、周囲や物体の認識、歩行、両手による操作、姿勢の調整を長い手順の中で組み合わせる必要がある。例えばベッドメーキングでは、寝具の位置まで移動し、左右を両手でつかみ、体の位置を変えながらベッド全体へ広げる一連の動作が求められる。

今回使われたハードウェアは第3世代ヒューマノイドの「Figure 03」である。Figure AIは、ハードウェアやタスク固有データを変えず、Indexによる事前学習の有無を主な違いとした比較によって、未知環境での成功率が9%から56%へ上がったとしている。

ここでいうゼロショット汎化は、評価対象となる住宅や物体に合わせた追加学習を行わず、別の場所で学んだ行動を新しい環境へ転用することを指す。タスクそのものを学習していないという意味ではなく、3種類の行動については別の環境で集めたタスク固有データを使って調整されている。

■人間の行動動画を集めるIndex

Helix 2.5の事前学習に使われたIndexは、人間が実世界で作業する様子をクラウドソーシングで収集するFigure AI専用のデータ基盤である。同社は4カ月間の非公開運用を経て、2026年8月25日にIndexを公表した。

公表時点で、データ収集用アプリは108カ国で26万4000件以上ダウンロードされ、週間アクティブユーザーは4万4000人を超えていた。アップロードされた動画は1600万本以上で、データ提供者への累計支払額は1500万ドルに達したという。

同社によると、Indexのデータ1000時間当たりには、373種類のタスク、1146種類の操作対象物、116種類の環境が含まれていた。動画はフィルタリング、不正の審査、重複除去、データ構成の再調整、アノテーションという5段階の処理を経て学習に使われる。

Helix 2.5の発表時点では、毎秒約35分相当の動画が追加されているという。これは動画の総時間を単純換算すると1日当たり約5.7年分に相当するが、収集量や多様性だけで学習データの品質が決まるわけではない。今回の結果も、Indexの規模と未知環境でのタスク成功率の関係を独立に検証したものではない。

■事前学習でタスク固有データを削減

Helix 02などの従来システムは、ロボットが実際に作業する環境で収集したデータを利用していた。Helix 2.5では、ランダムな重みから始めたモデルをIndexで事前学習し、その後、より少量のタスク固有データで3種類の行動に調整したという。

Figure AIによると、Helix 2.5は、固定された既知の環境でHelix 02の代表的な行動が達成した成功率に、半分のタスク固有データで到達した。さらに、学習対象とは異なる30住宅へ評価範囲を広げたとしている。

この結果は、広範な人間の行動から得た事前知識が、個別の作業を習得する際のデータ効率にも寄与する可能性を示す。ただし、Helix 02との比較では評価範囲が異なるため、両モデルの総合的な性能を直接比較する数字ではない。

Figure AIは、Index内の単一の評価関連タスクがデータ全体に占める割合を最大1.90%に抑えたとしている。特定の作業だけを大量に繰り返すのではなく、物体、環境、動作の多様性を事前学習に取り込む設計である。

■行動予測で示されたスケーリング則

Figure AIは、Indexのデータ量を増やしたときのモデル性能についても実験した。同じ構造のモデル4種類を、データ量が全体で8倍の範囲になるよう、段階的に倍増させたIndexのサブセットで事前学習した。

その後、各モデルをタスク固有データで調整し、学習に使っていないデータにおけるロボット行動の予測損失を測定した。データ量を増やすにつれて損失が滑らかに低下し、小規模な実験結果だけを使って、最大規模の実験における損失を訓練前に小数点以下4桁まで予測できたという。

同社は、予測誤差が、8倍のデータ範囲で観測された損失の変動幅全体に対して0.54%だったと報告している。この結果を、人間の行動データからヒューマノイドの行動予測へ転移する際のスケーリング則と位置付けた。

もっとも、測定対象は次のロボット行動を予測する際の損失であり、住宅内で家事を最後まで完了できる確率ではない。Indexのデータを増やせば、今回の56%という実タスク成功率も同じように予測可能な形で向上するかは、まだ測定されていない。

■失敗から立て直す動作も公開

Figure AIは評価映像の中で、成功例だけでなく、把持の失敗や動作のやり直しも公開した。ベッドメーキングでは、掛け布団を十分に広げられなかったロボットが後退して姿勢を変え、反対側へ移動して再び操作する場面がある。

同社は、こうした動作の修正もIndexによる事前学習の効果だと説明している。人間が作業中のずれや失敗に対応する場面を含む多様な動画から学ぶことで、固定的な回復手順を個別に指定しなくても、同じ学習済み方策の中で次の動作を選べるようになったという見方である。

公開映像は、モデルがどのような状況で止まり、やり直し、失敗するかを検討する材料になる。ただし、映像の公開だけで評価結果の再現性が確認されたことにはならず、事前学習と自己修正動作の因果関係についても、現段階では同社の分析に基づく。

■家庭導入には信頼性の向上が必要

成功率56%は、全試行の約44%が失敗したことも意味する。特にリビングの片付けは成功率40%で、成功より失敗が多かった。家庭内で監督なしに継続運用するには、タスクや環境が変わっても安全かつ安定して完了できる水準まで、信頼性を高める必要がある。

30住宅で使われた採点基準は事前に固定され、部分点を認めず、安全介入も失敗に数える方式だった。一方、実験の設計、実施、採点はいずれもFigure AIによるもので、第三者機関による追試や査読論文としての検証は確認されていない。

Figure AIは2026年9月3日、AIインフラ企業Nscaleとの提携を発表した。最大10万基のNVIDIA製GPUを利用する可能性を含み、計算資源への当初の契約額は35億ドル、将来的には60億ドル超への拡大を意図している。最初のGPUは2027年後半から米テキサス州バーストーで導入する計画である。

同社はIndexで収集するデータと、この計算基盤を使ってHelixの学習規模を拡大する方針だ。行動予測損失のスケーリングが実際のタスク完了率、安全性、長期稼働時の信頼性へどう結び付くかが、家庭で利用できるヒューマノイドへ進むうえでの次の検証点となる。

■BMW工場ではFigure 03を物流工程に展開

Figure AIは家庭向けの研究と並行して、産業現場への導入も進めている。BMWは2026年6月、米サウスカロライナ州のスパータンバーグ工場で、Figure 03を物流のシーケンシング工程に導入すると発表した。

この工程では、一定の向きにそろっていない部品を容器から取り出し、組立ラインで必要になる順序に合わせて台車へ配置する。Figure 03は、部品を両手で扱いながら足の位置や姿勢を調整する全身動作を、Helix 02によって制御する。

これに先立ち、Figure 02は同工場の車体工程で板金部品を溶接設備へ投入する作業に使われた。BMWによると、約10カ月の導入期間中に3万台を超えるBMW X3の生産を支援した。

Helix 2.5の家庭内評価では、こうした特定の工場環境とは異なり、住宅ごとに変わる家具、物体、空間配置への適応が試された。今後は、限られた3種類の家事で示された汎化性能を、より幅広い作業と長期間の運用に拡張できるかが焦点となる。

元記事: Figure AI Helix 2.5 Enters 30 Homes Cold: Index Pretraining Yields Sixfold Leap

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