マクファーレンが語る「King Spawn」の条件 暗く不穏なホラーを目指す理由

2026年9月20日 00:48

Blumhouseが企画する実写映画「King Spawn」は、トッド・マクファーレンが脚本を承認しておらず、公開日も決まっていない。マクファーレンは、暗く荒々しく、不穏なホラーを目指すうえで、2026年のヒット作『バックルームズ』と『オブセッション』が参考になると語っている。

『バックルームズ』の成功は、派手なスーパーヒーロー映画とは異なる方向性にも観客が集まることを示した。ただし、それによって「King Spawn」の脚本上の課題が解消されたわけではない。

■『バックルームズ』が示した商業的な可能性

ケイン・パーソンズの長編監督デビュー作『バックルームズ』は、2026年5月29日に米国で公開され、北米の初週末興行収入は約8100万ドルに達した。約1000万ドルの製作費に対し、それぞれ約127億円と約15億7000万円に相当する(1ドル=157円換算)。

初週末の世界興行収入は1億1800万ドルに達し、A24作品として過去最大の北米オープニングを記録した。日本ではハピネットファントム・スタジオの配給により、邦題『バックルームズ』として2026年9月4日に公開された。

マクファーレンは2026年9月のインタビューで、『オブセッション』と『バックルームズ』を例に挙げ、観客が暗く荒々しい作品を受け入れることが示されたと説明した。「King Spawn」では、巨額の予算を投じたスーパーヒーロー映画を小規模に模倣するのではなく、異なる方向を目指すべきだとしている。

もっとも、この比較は具体的な物語や映像表現をそのまま取り入れるという意味ではない。特殊効果や大規模な戦闘に頼らなくても、Spawnを強大で不穏な存在として描けるという、作品規模と演出方針の参考例である。

■脚本を承認できない理由

マクファーレンとBlumhouseの提携は2017年に発表された。2018年にはジェイミー・フォックスがアル・シモンズ/Spawn役、ジェレミー・レナーが刑事トゥイッチ・ウィリアムズ役として発表されたが、レナーが現在の企画にも参加するかどうかは確認されていない。

その後、スコット・シルヴァー、マルコム・スペルマン、マット・ミクソンが脚本に参加した。2024年7月には「King Spawn」と記された脚本の表紙が公開され、3人が脚本家としてクレジットされていた。

マクファーレンは2026年9月時点でも、「頭の中にあるもの」が脚本に表れていないため、承認していないと説明している。脚本がコミックから離れすぎる場合と、逆に原作へ忠実になりすぎる場合があり、その中間を見つけられていないという。

特に避けたいのは、アル・シモンズが死後にSpawnとして戻ってくる初期の物語を再び中心に据えることだ。1997年の実写映画が扱ったオリジンを繰り返すのではなく、1992年から蓄積されてきたコミックの広い世界を利用したいとしている。

■目指すのはスーパーヒーロー映画ではなくホラー

マクファーレンは、新作を一般的なスーパーヒーロー映画として作る考えを否定している。求めているのは、暗く、荒々しく、醜さや恐怖を伴い、ときに観客を落ち着かなくさせる作品である。

『バックルームズ』は、黄色い壁と蛍光灯に照らされた部屋や廊下が果てしなく続く異空間を舞台にしている。見覚えのある室内でありながら、配置や用途、そこにいるはずの人間の気配が欠けていることが不安を生み出す。

カーディフ大学のアレクサンダー・ディールとマイケル・ルイスが2022年に発表した研究では、建築空間の予測可能な構造からの逸脱が、不気味さと関係するかが実験的に検討された。歪みを加えた公共空間では、人の姿を配置すると不気味さが低下した一方、私的な部屋では反対の傾向も見られた。

この研究が示しているのは、慣れ親しんだ建築の構成から外れた空間が、不気味な印象を生み得るという点である。脳が必ず脅威と判断することや、特定の神経回路がリミナル空間への恐怖を引き起こすことまで実証した研究ではない。

■アル・シモンズと「境界にいる」感覚

「King Spawn」と『バックルームズ』を結び付ける補助線としては、リミナリティという人類学上の概念がある。リミナリティは、社会的・儀礼的な状態から離れたものの、次の状態にはまだ移行していない中間段階を指す。

この概念は、アルノルト・ファン・ヘネップが1909年の『通過儀礼』で示した、分離、移行、再統合という枠組みに由来する。ヴィクター・ターナーは後に、移行過程にある人物を、既存の分類や社会的位置の「あいだ」にいる存在として論じた。

アル・シモンズは死後、妻ワンダに会うために悪魔マレボルギアと契約し、Spawnとして地上へ戻る。以前の人生には戻れず、地獄の兵士になることも拒み続けるという設定は、人間と悪魔、過去と現在の境界に置かれた人物として読むことができる。

見慣れた場所でありながら通常の用途や出口を失った『バックルームズ』の空間表現は、こうしたアル・シモンズの立場を映像化する手掛かりになり得る。キャラクターの抱える不安定さと、舞台の不安定さを重ねるという点で、両作品には通じる発想がある。

■有限の力が生む物語上の緊張

Spawnの能力には、ネクロプラズムと呼ばれるエネルギーが関わっている。初期のコミックでは残量が数値で示され、能力を使うと減少するという設定が、Spawnの行動に制約を与えていた。

重要なのは、この仕組みを現実の生物学へ直接対応させることではなく、強大な能力が無制限ではないという物語上の構造である。力を使うたびに残量を意識させることで、戦闘や変身を単なる見せ場ではなく、選択と消耗を伴う行為として描ける。

生きたスーツであるK7-Leethaも、Spawnを守り、能力を拡張する一方で、完全には本人の意思だけで制御できない存在として描かれてきた。使用者と装備の境界が曖昧になるこの関係も、アル・シモンズが自分自身の身体や力を完全には所有できないという不安につながっている。

こうした設定を中心に据えれば、大規模な特殊効果を連続させなくても、Spawnの強さと危うさを同時に表現できる。マクファーレンが求めるホラー寄りの映画との相性も、この点にある。

■「King Spawn」に残された課題

『バックルームズ』の興行的成功は、インターネット発の題材と、不穏な空間演出を中心にしたホラーが、大規模な観客を獲得できる一例となった。それは、マクファーレンが目指す低予算寄りの「Spawn」にとって商業面の追い風になり得る。

一方で、『バックルームズ』の成功を理由に「King Spawn」の製作が正式に前進したとの発表はない。マクファーレンの発言から確認できるのは、脚本の調整が続き、本人がまだ承認しておらず、公開日も決まっていないという状況である。

必要なのは、1997年版と同じオリジンの反復でも、巨額予算のスーパーヒーロー作品の縮小版でもない。アル・シモンズが人間と地獄の「あいだ」に置かれた存在であることを、物語、空間、能力の制約を通じて一つの映画体験にまとめられるかが、企画の中心的な課題となっている。

元記事: King Spawn Needs Backrooms Dread: Neuroscience Explains Why McFarlane Is Right

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