『スター・ウォーズ』新作グラフィックノベル、ジャバの賞金争奪戦をゲーム理論で読み解く

2026年9月18日 02:17

Papercutzの『スター・ウォーズ』新作グラフィックノベル『Star Wars: Smugglers and Scoundrels Vol. 1 — Race for Jabba’s Bounty』は、ジャバ・ザ・ハットの盗まれた家宝を巡り、ハン・ソロやボバ・フェットらが競い合う物語だ。米国での発売日は2026年10月6日と案内されており、出版社の公式サイトでは予約を受け付けている。

物語の中心に立つのは、1977年のコミックで初登場した緑色のレピ族の密輸業者、ジャクソン・T・タンペラッキである。複数の追跡者が一つの報酬を争う展開には、全員が時間や危険といったコストを負担し、勝者だけが賞金を得る競争モデルのイメージを重ねられる。

■一つの家宝を追う密輸業者と賞金稼ぎ

ジャバ・ザ・ハットは、盗まれた一族の家宝を取り戻すため、銀河各地の密輸業者や賞金稼ぎを競わせる。参加者にはハン・ソロとチューバッカ、ジャクソンのほか、ボバ・フェット、オーラ・シング、グリードらが名を連ねる。

ハンとチューバッカはミレニアム・ファルコン、ジャクソンは宇宙船ラビット・フットで争奪戦に加わる。出版社の紹介では、危険な駆け引きや裏切り、正しさだけでは割り切れない行動が連続する物語とされている。

本作はカヴァン・スコットが執筆し、クリスチャン・コルバートが作画を担当する。Mad Cave StudiosとLucasfilm Publishingによる新たな出版展開の一作で、児童向けレーベルPapercutzから刊行される。出版社は112ページ、判型6.5×9インチのミドルグレード向け作品として案内している。

■賞金レースに重なる全員支払い型競争の発想

ジャバは一人の請負人に仕事を任せるのではなく、能力や人脈の異なる複数の人物を同じ家宝の捜索へ向かわせる。この構図は、経済学やゲーム理論で扱われる「全員支払い型」の競争を連想させる。

全員支払いオークションでは、勝者以外も投入した費用を取り戻せない。本作でも、それぞれの参加者は移動、情報収集、燃料、危険の引き受けといった負担を背負うが、賞金を獲得できるのは家宝を届けた者だけである。

もっとも、劇中で参加者が金額を入札するわけではないため、厳密な意味でのオークションではない。注目すべきなのは、複数の競争者が回収できないコストを投入し、一つの報酬を目指すという共通構造だ。この見方を採ると、ジャバが自ら捜索部隊を編成する代わりに、異なる技能を持つ者たちを同時に走らせる理由も理解しやすい。

■協力が裏切りへ変わる利得の構造

家宝の捜索では、競争相手同士が一時的に情報や労力を共有することも考えられる。手掛かりを交換すれば、単独で行動するより早く目的地へ到達できる可能性があるからだ。

しかし、家宝を発見した段階では状況が変わる。賞金を一人しか受け取れないなら、協力相手を出し抜こうとする誘因が強くなる。公式紹介が掲げる「裏切り」と「疑わしい道徳」は、登場人物の性格だけでなく、勝者を一人に絞る報酬設計から生じる駆け引きとしても読める。

これは、協力によって双方が利益を得られる一方、個々には裏切る動機が生まれるという、囚人のジレンマに通じる発想である。ただし、物語の賞金レースには人数、情報、交渉、人物ごとの目的など多くの要素があるため、特定のゲーム理論モデルと完全に同一視するより、協力と競争が切り替わる仕組みを考える補助線として捉えるのが自然だ。

■初期コミックから戻ってきたジャクソン

物語の主役となるジャクソンは、長い耳と緑色の体毛を持つ人型種族レピの密輸業者だ。1977年11月刊行のMarvel版『Star Wars』第8号で、ハン・ソロやチューバッカと行動する人物の一人として登場した。

ジャクソンは、人間ほどの大きさを持つ緑色のウサギを思わせる姿と、機知に富んだ言動を特徴とする。専用船ラビット・フットを操り、周囲から軽く見られながらも実力を示す、コミカルなアウトサイダーとして描かれてきた。

カヴァン・スコットは本作の発表時、ジャクソンを『スター・ウォーズ』の偉大な「アンダードッグ」、言い換えれば「アンダーラビット」と表現した。スコットにとって、ジャクソンは映画を見るより前に触れた初期の『スター・ウォーズ』キャラクターの一人だったという。

本作では、ジャクソンと長年のライバルとなるハン・ソロとの最初の出会いが描かれる。重々しい存在感を持つ賞金稼ぎや犯罪王の世界に、機知と大胆さで割って入るジャクソンの役割は、ウサギ型のトリックスターという造形にもよく合っている。

■コミックだから生まれる読者の参加

Lucasfilm Publishingは、Mad Cave Studiosとの取り組みで、ミドルグレード読者を対象とするオリジナル・グラフィックノベルを展開すると説明している。クリエイティブディレクターのマイケル・シグレインは、コミックという媒体を生かし、コミックでしかできない表現に取り組む方針を示した。

コミックでは、読者は静止したコマと次のコマの間で起きた動作や時間の経過を頭の中で補う。コミック研究で「クロージャ」と呼ばれるこの働きは、部分的に示された絵から一続きの出来事を組み立てる、読者の能動的な参加を意味する。

本作のような追跡劇では、宇宙船の移動、登場人物の駆け引き、場面の急転をコマの配置やページをめくるタイミングで表現できる。複数の競争者が同時に家宝を追う構成は、異なる場所の出来事を並べ、読者に関係を読み取らせるコミックの特徴とも相性がよい。

この形式は、単に映像作品を絵へ置き換えるものではない。絵、せりふ、コマ間の省略を手掛かりに展開を組み立てること自体が、物語を味わう一部となる。

■発売形態と今後の展開

出版社の公式サイトでは、『Race for Jabba’s Bounty』の米国発売日を2026年10月6日としている。価格はハードカバーが19.99ドル、トレードペーパーバックが14.99ドル、デジタルPDF版が9.99ドルである。1ドル=156円で単純換算すると、それぞれ約3120円、約2340円、約1560円となるが、実際の購入価格は為替や販売店によって変わる。

Papercutzの直販は米国、カナダ、プエルトリコへの発送に対応し、米国内では25ドル以上の注文を送料無料としている。日本向けの正式な発売日、邦題、日本語版の刊行予定は確認できない。

Mad Cave StudiosとLucasfilm Publishingは、これとは別に、若き日のルーク・スカイウォーカーとビッグス・ダークライターを描く『Star Wars: Tales from the Outer Rim Vol. 1 — The Legend of Beggar’s Canyon』も予定している。Papercutzの公式サイトでは、同作の発売日は2027年3月9日と案内されている。

元記事: Star Wars Graphic Novel Turns Jabba’s Bounty Race Into Game-Theory Lesson

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