Grab、Atome Financialの株式60%を14.9億ドルで取得へ 東南アジアの消費者融資を強化

2026年9月16日 23:29

Grab Holdingsは、後払い決済(BNPL)や消費者向け融資を展開するAtome Financialの株式60%を、現金14億9000万ドル(約2310億円、1ドル=155円換算)で取得することで合意した。残る40%も第1段階の完了から約2年後に取得する計画で、AtomeのAI活用型融資基盤と加盟店網を取り込み、東南アジアで消費者向け金融サービスを拡大する。

■Atome Financialの株式60%を取得

Grab、Atome Financial、その親会社Advance Intelligence Group(AIGL)などは2026年9月15日、GrabがAtome Financialの支配株式60%を取得する最終契約を締結したと発表した。Atome Financialは、AIGL傘下でデジタル金融サービスを運営するNeuroncreditの事業ブランドである。

第1段階の取得額は現金14億9000万ドルで、このうち2億6000万ドルはAtome Financialへ投入する成長資金となる。Grabは既存の手元資金で取引を賄う方針で、進行中の自社株買いプログラムには影響しないとしている。

第1段階は、規制当局の承認など通常の取引完了条件を満たしたうえで、2027年第3四半期までに完了する見込みだ。完了後、GrabはAtome Financialを金融サービス部門の連結対象とする。Atome Financialの現経営陣は引き続き事業運営を担う。

Atome Financialはシンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイで事業を展開している。タイでは合弁会社の少数株式を保有する形で参加している。サービスにはBNPL、消費者向け現金融資、BNPLカード、デジタル融資が含まれる。

同社によると、累計取引ユーザーは2500万人で、3万を超えるブランドと提携している。ただし、このユーザー数はAtome Financialの未監査の管理会計に基づく。Grabは決済、デジタル銀行、パートナー向け融資、保険、消費者向け融資などを展開し、エコシステム全体で約5400万人の月間取引ユーザーを抱えている。

■AI活用型の融資基盤とGrabのデータを組み合わせる

今回の取引では、Atome FinancialのAI活用型融資基盤と、Grabのモビリティー、デリバリー、金融サービスから得られる知見を組み合わせる。両社は、与信判断の高度化や不正対策、過剰債務の防止につなげながら、正式な信用履歴を持たない消費者にも金融サービスを提供できる範囲を広げる考えだ。

Atome FinancialのCEOで、AIGLの会長兼CEOを務めるJefferson Chenは、同社が従来型の銀行取引履歴を持つ人だけでなく、誰もが責任ある信用供与と金融サービスを利用できるべきだという考えから設立されたと説明した。AIとデータを活用し、取引を重ねるごとに与信判断と商品の個別化を改善してきたとしている。

Grabの社長兼COOであるAlex Hungateは、Atome Financialが地域の数百万人を対象とするデジタル融資の与信審査にAIを活用しながら、リスクを管理してきたと説明した。買収により消費者向け融資能力を強化し、Atome Financialの加盟店網へ金融サービスを展開できるとしている。

両社は、融資審査に関する知見に加え、リスク管理、規制対応、債権回収の手法も共有する計画だ。一方、今回の取引によって、各市場で適用される免許、消費者保護、データプライバシー、責任ある融資に関する義務が変わることはない。

Atome Financialのグロス融資残高は、2026年6月30日時点で約10億ドルだった。この数値は未監査で、正常債権から延滞90日以内の債権までを含む融資商品の残高を、引当金控除前で集計したものである。Grabによると、借り手の各コホートにおける延滞率は改善または安定しており、事業拡大の過程でも損失に備えた引当金を計上してきたという。

■重複の少ない顧客層と商品を相互に活用

GrabとAtome Financialは、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイという共通する市場で金融サービスを展開しているが、主な顧客層と商品には違いがある。

Grabはこれまで、ドライバーパートナーや加盟店パートナー向けの融資を拡大してきた。一方、Atome Financialは消費者向けの分割払いと融資を中心に事業を構築している。このためGrabは、両社の商品や利用者層の重複が小さく、相互送客やクロスセルの余地があるとみている。

Grabの利用者に対しては、Atome Financialが持つ加盟店網を通じて柔軟な支払い手段を提供できる。Atome Financialは、Grabのモビリティー、デリバリー、金融サービスから成る地域エコシステムを新たな販売経路として利用できる。

Grabによると、2025年に同社を通じて融資を受けたドライバーパートナーの68%は、それが初めて利用した正式な信用供与だった。このうち半数は、高金利などの問題がある貸金業者を避けることを利用理由として挙げたという。

■残る40%は業績連動の評価方式で取得

Grabは、第1段階の完了から約2年後に、AIGLなどからAtome Financialの残る40%を取得することでも合意した。第2段階も、規制当局の承認など通常の取引完了条件を満たす必要がある。

残余株式の取得価格は固定されておらず、第1段階から第2段階までのAtome Financialの実績に連動する。第2段階の完了直前6カ月間を基に年換算した調整後EBITDAへ13倍、売上高へ2.5倍の倍率を適用し、それぞれ75%と25%の比重で株式価値を算定する。

この算定で用いるAtome Financial全体の株式価値には、20億ドルの下限と45億ドルの上限が設定されている。第2段階でGrabが実際に支払う対価は、この評価額を基に残る40%について計算され、少なくとも半分を現金で決済する。

この仕組みにより、残余株式の取得価格はAtome Financialの実際の業績を反映する。14億9000万ドルの第1段階と、第2段階で用いる最大45億ドルの株式評価額は性質の異なる数字であり、Grabの総支払額が45億ドルになるという意味ではない。

■2028年に融資残高60億ドル超を目標

GrabはAtome Financialを含む金融サービス部門について、2028年までにグロス融資残高60億ドル超、セグメント調整後EBITDA 5億ドルを目指す。これらは取引の完了時期などを前提とする会社目標で、将来の達成が保証されたものではない。

GrabのCFOであるPeter Oeyは、Atome Financialの買収によって、自社だけで消費者向け融資基盤を構築する場合よりも速く、効率的に金融サービス事業を拡大できるとの見方を示した。取引完了後は、グループ調整後EBITDAの増加に寄与すると見込んでいる。

Grabは今回の発表に合わせ、2028年のグループ調整後EBITDA目標を17億ドルへ引き上げた。2025年から2028年までのグループ売上高については、年平均30%超の成長を目標としている。

Grabは2026年に金融サービス事業への投資を相次いで進めてきた。5月には、デジタル銀行子会社GXS Bankへの株式移管を通じてインドネシアのSuperbankに対する直接・間接の持ち分を50%超へ引き上げ、同社を連結対象とすると発表した。

また2月には、米国のデジタル投資サービスStash Financialを段階的に取得する契約を発表した。Atome Financialの取得は、これらに続いて消費者向け融資を強化し、東南アジアにおける金融サービス事業の規模と収益性を高める取り組みとなる。

元記事: Grab Pays $1.49B for Atome’s AI: Lender That Banks Can’t Copy in Southeast Asia

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