ZF、トラックとトレーラーを高速通信で接続 360度の安全支援構想をIAAで披露

2026年9月15日 18:21

ZFは、ドイツ・ハノーバーで開催されるIAA Transportation 2026で、トラックとトレーラーを高速通信で接続する「Truck Trailer Link」を披露する。カメラ映像を含む大容量データを双方向にやり取りし、車両全体の安全支援や運用効率化につなげる構想だ。同社はこのほか、トラックやバス向けの運転支援、新型エアディスクブレーキ、電動駆動システム、ソフトウェア更新管理技術などを展示する。

■トラックとトレーラーを高速Ethernetで接続

大型トラックでは、キャブやミラー、車載カメラから見えにくい領域が生じやすく、右左折時や発進時に自転車利用者や歩行者を巻き込む事故が大きな課題となっている。欧州運輸安全評議会などが公表した資料では、大型貨物車が関係する事故で、歩行者や自転車利用者を含む交通弱者が大きな割合を占めることが示されている。

ZFのTruck Trailer Linkは、トラックとトレーラーの間を自動車向けEthernetで結ぶ高速通信のコンセプトである。カメラ映像などの大容量データを低遅延で送受信し、従来の電気コネクターやCAN通信を中心とした構成を、より統合された通信基盤へ発展させることを目指す。

トレーラー外部や荷室内のカメラ映像を運転席へ送り、ドライバーが周囲や積み荷の状態を確認できるほか、将来はリフトアクスル、ランディングレッグ、照明装置などのトレーラー機能をキャブ内から操作する用途も想定している。現在は構想段階で、既存のISO 12098コネクターなどを中期的に置き換え、長期的にはISO 7638やISO 11992に基づく機能の統合を目指している。

ZFはこれとは別に、トラックとトレーラーの周囲へレーダーやカメラを配置し、両方のセンサー情報を利用する次世代ADASアーキテクチャも示している。ADAS、ブレーキ、ステアリングを連携させることで、個別の警報機能から車両全体を対象とする360度の安全支援へ発展させる考えだ。

同社によると、低速走行時の右左折や発進では、車両側方や前方にいる歩行者、自転車利用者を検知し、警告や自動制動によって衝突リスクの低減を支援する。後退時には、トレーラー後方の障害物を検知してブレーキを作動させる機能も想定している。

■安全規制に対応する運転支援技術

EUの一般安全規則では、新型車への適用に続き、2024年7月から対象となるすべての新車に各種安全装備の搭載が段階的に義務付けられた。大型車では、発進時に車両前方の歩行者や自転車利用者を検知する発進情報システムや、側方の交通弱者を検知する死角情報システムなどが対象となっている。

2026年7月からは、運転者の注意散漫を検知して警告する高度運転者注意散漫警報も、EU市場へ投入される対象車両全体に適用されている。ZFはドライバーモニタリングシステムや周辺監視技術を、こうした規制要件に対応する製品群の一部として位置付ける。

ZFは、安全技術を個別に追加するだけでなく、レーダー、カメラ、電子制御ユニット、ブレーキ、ステアリングを段階的に統合できる構成を重視している。車両メーカーが既存プラットフォームを全面的に作り直さずに、用途や市場の要件に合わせて機能を拡張できるようにする狙いだ。

ZFの商用車ソリューション部門によると、2026年に入ってから獲得した案件の生涯受注額は50億ユーロを超え、顧客獲得案件に占める受注率は約90%となった。インド事業の成長率は2025年比で41%だったとしている。いずれも同社が発表した数値である。

■Euro 7対応を見据えた新型エアディスクブレーキ

ZFはIAA Transportation 2026で、商用車向けの新型エアディスクブレーキ「MAXX Uniper」を世界初公開する。単一ピストン構造を採用し、性能向上とブレーキ摩耗粒子の排出低減を目指した製品で、同社はEuro 7への対応を掲げている。

EUのEuro 7規則は、従来の排気ガス規制に加えて、ブレーキから発生する粒子やタイヤ摩耗などの非排気由来排出物も規制対象に含める。乗用車だけでなく、トラック、バス、大型トレーラーなども対象となり、車種や認可区分に応じて段階的に適用される。

MAXX Uniperがブレーキ粒子をどの程度減らすかについて、ZFが一般に公開している発表では具体的な削減率や詳細な試験条件は示されていない。このため、現時点では、単一ピストン構造を採用し、ブレーキ粒子の低減とEuro 7対応を目標に設計された製品と位置付けられる。

ZFはこのほか、電子エア処理ユニットやコンプレッサー事業の受注拡大も発表した。北米ではCumminsとの新たな長期契約を獲得し、2006年に発表した2段式コンプレッサーの累計生産台数は、2026年に100万台へ達する見通しだとしている。

■City Bus Assistで停留所への進入を支援

都市バス向けには、停留所への進入を支援する「City Bus Assist」を展示する。周辺認識センサーと自動操舵支援を利用してバスを縁石へ近づけ、エアサスペンションによるニーリング機能と連携させる概念実証システムである。

停留所へ斜めに進入すると、タイヤに横方向の力がかかり、摩耗や縁石との接触につながることがある。City Bus Assistは縁石の高さや車両との位置関係を検知し、横方向のタイヤの滑りを抑えながら、乗降口を適切な位置へ近づけることを目指す。

車体を下げるニーリング機能も進入動作と連動し、乗降時の段差や隙間を小さくする。車いすなどを利用する乗客の乗降を支援するとともに、タイヤや停留所設備の損傷を抑え、車両の稼働率や総保有コストの改善につなげるとしている。

ZFは、衝突被害軽減ブレーキに都市バス向けの制動特性を組み込み、立っている乗客への影響を考慮しながら衝突回避を支援する「City Bus CMS」も展開する。さらに、センサーや車載ネットワークの情報を利用してダンパー特性をリアルタイムに調整する「CDC Skyhook」を組み合わせ、車体の安定性や乗り心地の向上を図る。

■ソフトウェア更新を車両のライフサイクル全体で管理

商用車のソフトウェア化に対応する技術として、ZFは「SUMS Service Suite」を提供している。国連規則UN R156に沿って、車両のソフトウェア更新を安全かつ追跡可能な形で管理するためのツール、文書、研修、コンサルティングを組み合わせたサービスである。

中核となるクラウド型のSCALAR Software Managerは、ソフトウェアとハードウェアのバージョンを記録し、更新履歴や型式認可への影響を管理する。[pro]Diagnosticsと連携することで、整備工場における更新作業や関連文書の作成を支援する。ZFはトレーラー業界へ製品を供給するTier 1サプライヤーとして、ISO 24089の認証を取得したとしている。

UN R156への対応では、トレーラーメーカーがソフトウェア更新の承認、配信、記録、監査対応を車両の使用期間全体にわたって管理する必要がある。SUMS Service Suiteは、ZF製品だけでなく第三者製の電子制御ユニットを含む車両全体の更新管理に対応する設計となっている。

ZFは、ゾーン型の電気・電子アーキテクチャや集中型電子制御ユニットの開発も進める。車両の各部に分散した機能を通信ネットワークと中央演算基盤で連携させ、ハードウェアを交換せずにソフトウェア機能を追加、変更できる商用車を目指している。

■地域や用途に応じた電動化製品を展開

電動化分野では、中央配置型の電動ドライブ「CeTrax 2」「CeTrax 2 dual」、電動アクスル「AxTrax 2」シリーズ、ハイブリッド対応トランスミッション「TraXon 2 Hybrid」などを展開する。

ZFは、商用車の電動化が地域、用途、充電環境、車両の運行形態によって異なる速度で進むとみている。このため、単一の駆動方式に絞るのではなく、ハイブリッド、中央配置型モーター、電動アクスル、電動トレーラーなどを組み合わせ、既存の車両プラットフォームから段階的に移行できる製品構成を採る。

同社は、ソフトウェア定義商用車への移行についても、既存車両を一度に置き換えるのではなく、通信基盤、電子制御ユニット、センサー、ソフトウェアサービスを段階的に追加する方針を示している。Truck Trailer Linkは、トラックとトレーラーの間に高速で双方向のデータ経路を設け、こうした機能拡張を支える基盤の一つとなる。

IAA Transportation 2026は9月15日から20日までハノーバーで開催される。ZFの商用車ソリューション部門は、ホール21のブースB42で関連技術を展示する。

元記事: ZF Fuses Truck and Trailer Sensors at IAA, Targeting Blind Spots That Kill Cyclists

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