Pony.ai、ロボタクシーと制御基盤を共用するL4自動運転大型トラックをIAA 2026で公開
2026年9月15日 18:21
自動運転ロボタクシーなどを手掛ける中国の小馬智行(Pony.ai)は9月14日、ドイツ・ハノーバーで開催されるIAA Transportation 2026のプレスデーで、GAC商用車と共同開発したレベル4(L4)自動運転大型トラックを世界初公開した。GAC商用車のバッテリーEV大型トラック「T9」をベースとし、2026年内に量産を開始する計画だ。
新型車は長距離貨物輸送、専用物流ルート、港湾輸送への投入を想定する。Pony.aiは欧州と中東への進出も計画しているが、具体的な導入時期や運行地域は各国の試験制度や認可手続きに左右される。
■ロボタクシーとドメインコントローラーを共用
新型車はPony.aiの第4世代Robotruckに位置付けられ、同社の第7世代ロボタクシーと同じドメインコントローラーを採用する。ドメインコントローラーは、センサーから得た情報の処理や周辺環境の認識、走行経路の計画、車両制御など、自動運転に必要な演算を集約する中核装置である。
ロボタクシーと大型トラックで共通の計算基盤を利用することにより、部品の共通化や開発・検証の効率化を図った。Pony.aiによると、第4世代Robotruckの自動運転キットは、前世代と比べて部品表(BOM)コストを70%削減したという。
この70%という数値は自動運転キットを対象とした前世代比であり、トラックの車両価格全体が70%下がることを意味するものではない。比較に使った部品構成や金額などの詳細は公表されていない。
Pony.aiとGAC商用車は2026年4月16日に戦略的協業契約を締結した。両社は約5カ月で車両の試験と検証を進め、今回の公開に至った。ロボタクシーで使用している演算基盤を共用したことが、開発期間の短縮につながったとしている。
Pony.aiは2026年4月時点で、第7世代ロボタクシーを含む同社のロボタクシー保有台数が1400台を超えたと発表している。大型トラックとの基盤共用は、乗用車向けに量産している部品や技術を貨物輸送にも展開する戦略の一環となる。
■LiDARなど25個のセンサーを搭載
新型車の自動運転キットには、LiDARが9基、ミリ波レーダーが3基、カメラが13台搭載される。合計25個のセンサーを組み合わせ、車両の周囲360度を検知する構成だ。
LiDARはレーザー光を利用して周囲の物体までの距離や形状を三次元的に捉え、カメラは標識や信号、物体の外観などを認識するための情報を取得する。ミリ波レーダーは、車両や障害物までの距離と相対速度の把握に使われる。異なる特性を持つセンサーの情報を組み合わせることで、走行環境を多面的に認識する仕組みである。
車台には、電子信号によって操舵や制動を制御するドライブ・バイ・ワイヤー方式を採用した。GAC商用車によると、操舵、制動、通信、電源、コンピューティング、センシングの各システムに冗長構成を持たせている。一部の装置に障害が発生しても、安全な状態への移行に必要な機能を維持できるようにする設計だ。
T9の空気抵抗係数はCd値0.4とされる。Pony.aiは、同社のエネルギー効率化アルゴリズムと車体の空力性能を組み合わせることで、従来型トラックに比べてエネルギー消費を10%削減できると見込む。
■2026年内の量産開始を計画
Pony.aiは新型車の量産を2026年内に始める予定だ。投入先として、長距離貨物輸送、走行経路が定まった物流業務、港湾輸送を挙げている。
同社は、商用展開後にトンキロ当たりの輸送コストを30%削減できると予測している。トンキロは輸送した貨物の重量と距離を掛け合わせた指標で、貨物輸送の規模や効率を表す際に用いられる。
BOMコストの70%削減、エネルギー消費の10%削減、輸送コストの30%削減はいずれもPony.aiが発表した数値である。エネルギー消費と輸送コストについては、量産車を使った大規模な商用運行から得られた実績値ではなく、同社の予測となる。
Pony.aiの2026年第2四半期決算によると、同四半期のRobotruckサービス売上高は1330万ドル(約20億4800万円、1ドル=154円換算)で、前年同期比40%増加した。第1四半期の売上高は1020万ドル(約15億7100万円)だったため、2026年上期の合計は2350万ドル(約36億1900万円)となる。
同社はRobotruckサービスの増収について、Sinotransとの協業を含む貨物輸送サービスの拡大が主な要因だったと説明している。
■中国で約200台を運行
Pony.aiは2018年に自動運転トラックの開発を開始した。2025年11月時点の同社発表では、中国で約200台のトラックを運行し、累計輸送実績は10億トンキロを超えている。
報道によると、2026年9月時点でも中国で数百台規模のL4トラックが運行されており、完全無人で走行する車両と、安全要員が同乗する車両が含まれる。L4という技術上の区分と、実際に運転席を無人にして運行できるかどうかは、走行条件や地域の許可によって異なる。
Pony.aiは今後2~3年間に、中国の長距離輸送、ばら積み貨物輸送、港湾物流などへ、第4世代の自動運転大型トラックを500~1000台投入する目標を示している。また、小型のL4自動運転トラックについては、2030年までに10万台規模への拡大を目指している。
■L4は定められた運行条件内で機能
SAE J3016におけるL4自動運転では、あらかじめ定められた運行設計領域(ODD)の範囲内で、自動運転システムが継続的に動的運転タスクと作動継続が困難になった場合の対応を担う。
ODDには、対象地域や道路の種類、速度、天候、明るさ、交通状況などの条件を含められる。特定の高速道路や港湾内でL4として運行できるシステムであっても、その運行能力が条件の異なるすべての道路に及ぶとは限らない。
長距離の高速道路、発着地点が決まった物流ルート、港湾内や港湾周辺の輸送は、走行経路や運用条件を定めやすい。Pony.aiが新型車の用途として挙げる分野は、こうした限定されたODDを設定しやすい貨物輸送領域である。
一方、L4の技術を搭載していることだけで、各国の公道を無人走行できるわけではない。車両の認可に加え、走行地域の法制度や道路使用の許可、運行主体に対する要件などへの対応が必要となる。
■欧州と中東への進出を計画
Pony.aiは今後2年間に、Robotruck事業を欧州と中東の市場へ展開する方針を示した。ロイター通信によると、同社は欧州での走行試験を見据え、複数の港湾や政府関係者、顧客候補と協議している。
欧州連合では、完全自動運転車の自動運転システムに関する型式認可の手続きと技術仕様が、欧州委員会実施規則(EU)2022/1426などによって定められている。一方、公道試験や実際の運行に適用される制度は国や運用形態によって異なる。
このため、「2年以内」という計画はPony.aiが示した事業上の目標であり、欧州全域で無人運行を開始できる時期を確定したものではない。同社がどの国や地域で試験を始め、どのようなODDと運行形態を採用するかが、今後の焦点となる。
欧州ではトラックドライバーの不足も物流業界の課題となっている。国際道路運送連合(IRU)が2026年に公表した2025年調査によると、欧州のトラックドライバーの未充足ポストは約50万2000人で、推定需要の13%に相当する。
自動運転トラックは、夜間を含む長距離ルートや反復運行の多い区間で輸送能力を補う選択肢となり得る。ただし、実際の導入判断では、地域ごとの認可、安全性の検証、車両の稼働率、保守体制、既存の物流システムとの連携、運用コストなどを確認する必要がある。
■共通基盤による量産効果が焦点
今回の新型車の特徴は、ロボタクシーで量産しているドメインコントローラーを大型トラックにも展開した点にある。乗用車と商用車で求められる車両制御や運行環境は異なるが、認識、予測、経路計画、制御という自動運転の情報処理構造には共通部分がある。
Pony.aiはこの共通部分を利用し、部品コストと開発期間を抑えながら、Robotruckの量産を進める考えだ。今後は、同社が示すコスト削減効果が量産と商用運行でどこまで実現するかに加え、中国で蓄積した運用経験を欧州や中東の道路、物流制度、認可要件に適応できるかが問われる。
元記事: Pony.ai Debuts Gen-4 Autonomous Truck on Robotaxi Architecture at IAA 2026 Show