『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』謎の「ラトベリアの魔女」、衣装と原作からドゥームとの関係を考察

2026年9月15日 17:52

2026年12月18日に日米同時公開される『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』では、異なる3つの宇宙のヒーローたちが衝突の危機に直面する。公開前の展示で披露された「ラトベリアの魔女」の衣装も、ドクター・ドゥームと魔術の関係を示す新たな謎として注目されている。

衣装は緑、オレンジ系、紫の複数色で展示されたが、仮面の下にいる人物や劇中での役割は明かされていない。現段階で読み取れるのは、ドゥームと共通する意匠と、コミックで長く描かれてきた魔術や母シンシアとの関係である。

■3色の衣装に共通するドゥームの意匠

「ラトベリアの魔女」の衣装は、2026年7月のサンディエゴ・コミコンで公開された。フード付きのローブと金属製の仮面を基本とし、展示期間中には緑、オレンジ系、紫の異なる配色が披露された。

いずれの衣装にも、ドクター・ドゥームの仮面や装甲を連想させる金属的な意匠が使われている。顔全体を覆う仮面によって着用者の個性が隠され、色が変わっても基本的な形は共通している。この統一されたデザインは、魔女たちがドゥームの支配や権威の下に置かれた集団であるという印象を生む。

もっとも、衣装だけから魔女たちが拘束されているのか、自ら協力しているのかを確定することはできない。複数の色がそれぞれ別の登場人物を表すのか、単一人物の衣装違いなのかも現時点では不明だ。

ワンダ・マキシモフ、クレア、シルヴィなど既存のMCU登場人物と色を結び付ける説が出ているが、いずれもファンによる推測の域を出ていない。エリザベス・オルセンがワンダ役で出演するとの正式発表も確認されていない。

■原作コミックにあるドゥームと魔術の結び付き

衣装の背景を考える手掛かりになるのが、1989年に刊行されたグラフィックノベル『Doctor Strange & Doctor Doom: Triumph and Torment』である。ロジャー・スターンが脚本、マイク・ミニョーラが作画を担当し、ドクター・ストレンジとドゥームが、ドゥームの母シンシアの魂をメフィストの領域から救い出そうとする物語を描いた。

シンシアは、迫害を受けていたロマの共同体に属する魔術師として描かれる。人々を守る力を得るためメフィストと取引するが、その魔術は意図しない犠牲を生み、死後の魂もメフィストに捕らえられた。成長したヴィクター・フォン・ドゥームは、母の魂を取り戻すために魔術を学び、長年にわたってメフィストへの挑戦を続ける。

『Triumph and Torment』の結末を決めるのは、ドゥームが相手を力で圧倒することではない。シンシアは、他者を犠牲にして得る自由を拒み、その道徳的な選択が魂の解放につながる。支配によって目的を達成しようとする息子と、自らの意思によって束縛を退ける母の対比が、物語の中心に置かれている。

この原作を補助線にすると、ラトベリアの魔女の仮面と統一された衣装は、ドゥームが魔術を自らの秩序へ組み込もうとする姿勢を連想させる。魔女たちがシンシアと直接関係するのか、原作の物語が映画に取り入れられるのかは明らかでないが、ドゥームにとって科学と魔術が切り離された領域ではないことは、コミックで繰り返し描かれてきた。

■混沌魔術と確率というイメージ

現代のオカルティズムで「カオス・マジック」と呼ばれる実践は、ピーター・J・キャロルらによって1970年代以降に体系化された。その文献では、信念や意識を変化させることで望む結果へ近づこうとする発想が示され、量子力学やカオス理論の用語が比喩として用いられることもある。

こうした説明は物理学上の量子測定理論ではなく、オカルト思想による科学用語の援用である。観測者の意識が望む現実を選ぶという考えは、量子力学によって確立された仕組みではない。

一方、物語を読み解く比喩として見ると、「複数の可能性から一つの結果を選ぶ」という発想は、ワンダ・マキシモフの現実改変能力や、分岐する時間軸を扱うMCUのマルチバースと重ねやすい。使用者の意図を入力とし、現実の変化を出力とする情報処理の構造として捉えるなら、魔術の担い手をドゥームの計画に組み込むという考察にもつながる。

ただし、MCU作品では、ワンダの混沌魔術が既存の確率分布を操作する装置であることや、量子レベルの観測によって分岐を選んでいることまでは設定されていない。ラトベリアの魔女がマルチバースの分岐を選ぶという見方も、現段階では衣装と過去作品を組み合わせた解釈である。

■宇宙の衝突を連想させるブレーン宇宙論

『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』の公式な紹介では、異なる3つの宇宙のヒーローたちが衝突の危機に置かれる。MCUでは、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』において、2つの宇宙の境界が侵食され、双方が衝突する現象が「インカージョン」と説明された。

宇宙同士の衝突という映像的なイメージからは、理論宇宙論のエキピロティック・モデルを連想できる。ジャスティン・クーリー、バート・A・オヴルート、ポール・J・スタインハート、ニール・チュロックが提案したこのモデルでは、高次元空間にあるブレーンの衝突が、熱いビッグバン宇宙を生み出すシナリオとして検討された。2001年には査読誌『Physical Review D』に論文が掲載されている。

エキピロティック・モデルは、インフレーション宇宙論に代わる初期宇宙の理論的シナリオの一つであり、標準的な宇宙像として確定したものではない。また、MCUのインカージョンを説明するために採用されたとの公式情報もない。

それでも、通常は分離している世界が接近し、境界での相互作用が宇宙全体を変えるという構造は、映画のマルチバースを考える補助線になる。作品内の魔術を個人の意図と現実を結ぶインターフェース、インカージョンを宇宙同士の相互作用として捉えると、個人と宇宙という異なる規模を「境界の操作」という共通のイメージで結ぶことができる。

■ドゥームの支配と母をめぐる物語

原作コミックのドゥームは、科学技術と魔術の双方を操り、自らの意思で世界に秩序を与えようとする人物である。その支配への執着には、母を救えなかった経験や、故郷ラトベリアをめぐる過去が深く関わっている。

ラトベリアの魔女がドゥームの計画で重要な役割を担うなら、その意味は戦闘力の追加だけにはとどまらないだろう。仮面で個性を覆い、同じ意匠の下に複数の人物を配置する衣装は、他者の力を自らの体系へ組み込もうとするドゥームの人物像と響き合う。

そこにシンシアの物語が重なれば、ドゥームの計画は宇宙を征服するだけでなく、失われたものを自分の望む形で取り戻そうとする試みとしても読める。混沌とした現実を受け入れる代わりに、すべてを制御可能な秩序へ変えようとする姿勢である。

3色の衣装が誰を表し、魔女たちがどのような立場でドゥームに関わるのかは明らかになっていない。現時点で衣装から読み取れるのは、魔女たちがドゥームの視覚的な体系に組み込まれているということだ。その正体と役割は、『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』に残された重要な謎の一つとなっている。

元記事: Latverian Witches in Avengers: Doomsday Are Instruments of Probability Physics

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