米Jobyの電動エアタクシー、北テキサスで実証―商用運航に向けFAAがデータ活用

2026年9月13日 00:16

空飛ぶクルマ(エアタクシー)の開発を手掛ける米ジョビー・アビエーション(Joby Aviation)は9月10日、米テキサス州で、電動垂直離着陸機(eVTOL)の実証飛行キャンペーンを開始した。米連邦航空局(FAA)のeVTOL・先進航空モビリティ統合パイロットプログラム(eIPP)に基づく取り組みで、ダラス・フォートワース国際空港(DFW)への飛行を含む実際の運航環境からデータを収集する。

キャンペーンは9月14日まで実施される予定だ。実証で得られるデータや知見は、eVTOLを既存の航空交通へ安全に統合し、将来の大規模な商用運航に必要な制度や安全基準を整えるために活用される。

■北テキサスの実運航ルートで飛行

Jobyは、テキサス州ハスレットにあるペロー・フィールド・フォートワース・アライアンス空港を拠点に、ダラス・フォートワース地域で複数の飛行を計画している。今回のキャンペーンは、同社にとってeIPPに基づく初の飛行となる。

予定されているのは、参加メーカーによる共同飛行実証、DFW空港の企業航空向け施設への飛行、アーリントンやフォートワース・ストックヤーズ周辺を巡る往復飛行、プレイノにあるトヨタ・モーター・ノース・アメリカの本社キャンパスへ向かう計画ルートでの飛行だ。

米運輸省の9月10日の発表では、Jobyの機体によるペロー・フィールドとDFW空港の往復飛行は、9月12日に実施する計画とされている。交通量の多い空港周辺で、既存の航空管制やほかの航空機とどのように連携できるかを検証する。

今回の飛行は有償のエアタクシーサービスではない。eIPPは、一定の安全条件とFAAの監督の下で、型式証明の取得前から実際の空域における初期運航を可能にし、制度整備に必要な経験やデータを蓄積するためのプログラムである。

■パイロットと乗客4人を想定する電動航空機

飛行に使われるJobyの機体「S4」は、パイロット1人と乗客4人の搭乗を想定した電動航空機である。6基の電動モーターとプロペラを備え、垂直離着陸と固定翼を使った巡航飛行を組み合わせる。

離着陸時にはプロペラを上向きにして垂直方向の推力を発生させ、巡航時には前方へ傾けて機体を推進する。飛行モード間の移行は統合飛行制御システムが管理し、操縦士の操作負担を抑える設計となっている。

Jobyは、最高速度を時速200マイル、約322kmとしている。現在の同社資料では航続距離を最大100マイル、約161kmとしているが、実際の運航距離は飛行条件や搭載重量などの影響を受ける。

機体には4組のバッテリーパックと、三重化された飛行制御コンピューターなどが採用され、推進系や飛行制御系に冗長性を持たせている。JobyとNASAが行った騒音試験では、試作機が高度500m、速度100ノットで飛行した際に45.2dBA、計画した離着陸経路では飛行経路から100mの地点で65dBA未満を記録した。

北テキサスで予定される都市部周辺の飛行では、こうした機体の運航特性に加え、航空管制との連携、飛行ルート、騒音、地上施設との接続などを実環境で確認する。

■将来の制度づくりにデータを活用

eIPPは、2025年6月に署名された大統領令14307号を受けて創設された。米運輸省とFAAは2026年3月9日、30件を超える応募から8件の提案を選定したと発表している。対象プロジェクトは26州にまたがり、都市型エアタクシー、地域旅客輸送、貨物・物流、救急医療、自律飛行などを扱う。

FAAは、各プロジェクトから得られるデータや教訓を、大規模な運航に対応する政策や安全基準の検討に活用する。eIPPは型式証明などの認証要件を省略する制度ではなく、商用運航とは別の枠組みである。

有償の旅客サービスを始めるには、機体の型式証明に加え、運航形態に応じた航空運送事業者としての認可などが必要になる。このため、eIPPの実証飛行が始まったことは、そのまま一般利用者向けサービスの開始を意味しない。

テキサス州の取り組みは、テキサス州運輸局が主導する「Project Nexus」の一環である。ダラス・フォートワース、オースティン、サンアントニオ、ヒューストンなどを結ぶ地域ネットワークを視野に入れ、都市部、地方、州境をまたぐ空域での先進航空モビリティの統合を段階的に検討する。

米運輸省によると、テキサス州はeIPPの実証が始動した6番目の地域である。9月10日にペロー・フィールドで行われたテキサス州初の実証には、JobyのS4とBeta TechnologiesのALIAが参加した。

■NASAとのシミュレーションを実飛行へ

北テキサスでの取り組みには、これまでにFAA、NASA、Jobyなどが進めてきた航空交通管理の研究が生かされる。NASAとJobyは、NASAエイムズ研究センターの航空管制シミュレーション施設を使い、DFW空港とダラス・ラブフィールド空港周辺で多数の電動航空機を既存の航空交通に統合する方法を検討した。

この研究では、退職した航空管制官が参加し、既存の航空機と最大100機の都市航空モビリティ機が飛行する状況を再現した。通常の条件では、滑走路を横断する経路で毎時最大40回、横断しない経路で毎時最大55回の運航を中央ターミナル周辺で処理できる可能性が示された。

これは将来の実運航能力を保証する数値ではなく、一定の前提を置いたシミュレーション結果である。一方、交通量の多い空港周辺でのルート設計や通信手順、管制官の作業負荷を考えるための基礎資料となっている。今回の飛行キャンペーンは、こうした検討を実際の機体と空域で確かめる機会になる。

■型式証明は最終段階の評価を継続

JobyはeIPPへの参加と並行して、FAAの型式証明取得に向けた作業を進めている。同社初のFAA適合機は2026年3月11日に飛行試験を開始した。Jobyの操縦士による初期試験を経て、FAAの試験操縦士による型式検査承認に基づく飛行試験へ進む計画だ。

同社は2026年第2四半期の発表で、型式証明プロセスの第5段階でこれまでで最も大きな四半期進捗があったと説明した。また、5機が飛行し、さらに12機を生産中だとしている。これらは同社発表に基づく進捗であり、型式証明の取得時期や米国での有償旅客サービス開始日は確定していない。

Jobyは2026年中にeIPPで最初の乗客を乗せることを目標としている。これはeIPPの枠内で行う初期の旅客運航を指し、一般利用者が運賃を支払う商用サービスとは区別される。

トヨタはJobyへの投資と生産面での協力を続けており、両社は2026年6月、電動航空機の商用生産基盤を整えるための合弁事業の初期段階を開始した。Jobyによると、トヨタの累計投資額は8億9400万ドルに達する。

■自律飛行機「J208」も北米横断実証

Jobyは9月10日、自律飛行システムを搭載したセスナ208Bグランドキャラバン「J208」が、米国横断ツアーを開始したことも発表した。機体は9月8日にカリフォルニア州コンコードを出発し、テキサス州でのeIPP開始に合わせてペロー・フィールドを訪れる。

J208は、Jobyが2024年6月に取得したXwingの自律飛行部門の技術を利用する。地上走行、離陸、飛行、着陸を自動化するシステムで、安全監視のための操縦士を乗せた状態で米空軍の演習にも参加してきた。

2024年のAgile Flag演習では、カリフォルニア州とネバダ州の軍用基地や民間空港を結び、3900マイルを超える飛行を実施した。今回のツアーでは、商用貨物、医療輸送、災害対応、防衛物流などへの応用を想定し、複数の実運航環境で自律飛行システムを紹介する。

北テキサスで並行して行われるS4とJ208の実証は、有人の電動エアタクシーと自律航空物流という異なる用途について、既存の航空交通や地上インフラとの統合方法を検討する取り組みとなる。Jobyの飛行キャンペーンは9月14日まで続く予定で、得られたデータや運航経験は、将来の安全基準と運航体制を整えるための資料として活用される。

元記事: Joby Aviation Flies Electric Air Taxi Into DFW: Every Approach Writes US Commercial Rules

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