中国、自動運転中の違反はメーカーが処理へ 道交法改正案と2030年EV計画
2026年9月13日 00:16
中国政府は、電気自動車(EV)と自動運転車を含むスマートコネクテッド新エネルギー車産業について、2030年までの発展目標を定めた。国内の新車販売に占める新エネルギー乗用車の比率を70%、新エネルギー商用車を40%とし、自動運転機能を備えた車両の大規模な普及を目指す。
これとは別に、全国人民代表大会常務委員会で初回審議に入った道路交通安全法の修訂草案は、自動運転機能の作動中に発生した交通違反について、車両の生産企業または輸入企業が処理を受ける仕組みを提案している。現時点では成立済みの法律ではなく、事故の民事上・刑事上の責任を一律にメーカーへ移す制度でもない。
■9省庁が2030年までの産業計画を策定
中国工業情報化部、国家発展改革委員会、公安部、交通運輸部、商務部、自然資源部、住宅都市農村建設部、市場監督管理総局、国家インターネット情報弁公室の9機関は、「スマートコネクテッド新エネルギー車産業発展第15次5カ年計画」を共同で策定した。文書は2026年9月9日付で、翌10日に公表された。
計画は、2030年までに中国のスマートコネクテッド新エネルギー車産業の競争力を高め、国内市場の新車販売に占める新エネルギー乗用車の割合を70%、新エネルギー商用車を40%にする目標を掲げる。自動運転機能を搭載した車両についても、大規模な普及を目指す。
技術面では、乗用車の平均燃料消費量を100km当たり3.3リットル、バッテリーEV乗用車の平均電力消費量を100km当たり約11.5kWhにする。高速道路、都市高速道路、一部の都市道路などでは、高度自動運転の実用化を進める方針だ。
産業構造に関しては、業界の労働生産性を2025年比で15%高め、世界の販売台数上位10社に入る完成車メーカーと、世界上位100社に入る部品メーカーを複数育成する目標も示した。
■自動運転中の交通違反は企業が処理
自動運転車の法的な取り扱いについては、産業計画とは別に道路交通安全法の修訂作業が進んでいる。修訂草案は2026年8月25日、第14期全国人民代表大会常務委員会第24回会議で初回審議に入った。
草案には「自動運転車の特別規定」と題する章が設けられ、自動運転車と運転支援機能の定義、一般道路を走行するための条件、交通違反の処理、保険などに関する規定が盛り込まれている。
自動運転車は、道路交通規則への適合性試験を通過し、法令に基づく登録を終えた後でなければ公道を走行できない。自動運転機能が作動している状態で交通違反が発生した場合は、生産企業または輸入企業が処理を受け、具体的な方法は国務院の公安当局を中心に定めるとしている。
一方、自動運転機能が作動していない場合や、車両が運転支援機能だけを備えている場合は、通常の自動車と同様の規則が適用される。草案は、生産企業と輸入企業に対し、走行時の安全、サイバーセキュリティー、データセキュリティーを確保するとともに、自動運転機能を虚偽または誇張して宣伝しないよう求めている。
草案が定めるのは、主として自動運転機能の作動中に生じた交通違反の処理主体である。交通事故による損害賠償や刑事責任まで、あらゆる責任を自動的にメーカーへ負わせる内容とは区別する必要がある。
■安全性能と技術標準を市場導入の前提に
第15次5カ年計画は、自動運転システムを搭載した車両の安全性能を人間の運転者より大幅に高い水準に引き上げる方針を示した。自動運転機能の普及と並行し、強制規格、試験評価、製品認証、運行管理を含む制度の整備を進める。
計画では、高速道路、都市高速道路、一部の都市道路などで高度自動運転を実用化する一方、港湾、鉱山、物流、公共交通など、走行条件を限定しやすい分野でも導入を促す。
事故や故障が起きた際の調査に必要なデータを確保し、製品の設計、生産、販売、利用、保守を通じて安全を管理する仕組みも整備する。自動運転車の市場拡大には、車両性能だけでなく、責任主体と監督方法を明確にする法制度が不可欠になる。
■車両・道路・クラウドの連携を推進
中国は、自動車単体のセンサーと演算装置だけでなく、道路側設備や通信ネットワーク、クラウド基盤を連携させる「車両・道路・クラウド一体化」を進めている。
この仕組みでは、車両のカメラ、LiDAR、レーダーなどに加え、路側機や交通インフラから受け取る情報を利用する。車両から見えにくい場所の交通状況や信号情報を共有できれば、認識範囲の拡大や交通管理の効率化につながる。
第15次5カ年計画は、都市や主要道路で関連インフラの整備を進め、車両、道路、クラウドの協調制御に必要な通信・データ基盤や標準体系を強化する方針を示した。ただし、自動運転機能の安全性は道路側設備の有無だけで決まるものではなく、車両側のシステムや利用条件を含めた総合的な評価が必要になる。
■電池、充電網、リサイクルも重点分野
計画は、動力電池の安全性、充電性能、低温環境への対応、耐久性などを高めるため、基礎研究と重要技術の開発を進める。電池材料や製造技術に加え、次世代電池を含むエネルギー関連技術も研究開発の対象となる。
充電インフラについては、大出力充電設備を適切に配置し、農村部に残る整備の遅れを補う。車両から電力網へ電力を供給するV2G、電池交換、長距離輸送に対応する大型商用車向けの補給網についても、利用環境に応じて展開する。
電池の製造、車載利用、再利用、リサイクルを通じた情報管理も強化する。電池のデジタル管理制度を整備し、履歴を追跡できるようにすることで、安全管理や資源循環、リサイクル規制の実効性を高める狙いがある。
■「AI+自動車」で開発と利用を高度化
計画は「人工知能+自動車」発展行動を重点施策の一つに位置付けた。AIを製品開発、生産、運行、アフターサービスなどへ取り入れ、自動車産業全体のデジタル化を進める。
車両では、エネルギー管理、運動制御、車内インターフェース、故障予測などへのAI活用を促す。自動車をスマートホームやロボットなどの機器と連携させ、新たなサービスや利用方法を開拓することも盛り込んだ。
その一方で、コネクテッドカーと自動運転車は、位置情報や走行状況、車外環境など大量のデータを扱う。計画は、サイバーセキュリティー、データセキュリティー、個人情報保護を産業発展の前提に置き、車両や関連サービスの全工程で安全管理を強化する方針だ。
■過当競争を抑え、産業再編を促進
中国の新計画は、市場拡大だけでなく、過剰な生産能力や激しい価格競争への対応にも重点を置く。新たな独立系新エネルギー車メーカーの参入条件を厳格化し、完成車メーカーの合併や再編を促す。
動力電池についても、生産能力を適切に管理し、低水準の重複投資を抑える。独占禁止法や価格関連法規の執行を強め、過度な値下げによって企業の収益や製品品質が損なわれる「内巻式競争」の是正を図る。
地方政府に対しては、法令や国の政策に沿わない補助金、税制優遇、土地供給などによって企業誘致を競わないよう求める。国内外の企業を政府調達で平等に扱い、公平で透明性の高い市場環境を整える方針も掲げた。
■法整備と産業政策を並行して進める中国
中国の第15次5カ年計画は、NEVの販売比率、エネルギー効率、自動運転、産業再編、充電網、データ管理を一つの長期戦略にまとめた。9機関による共同計画であり、今後は各分野で具体的な規則、標準、支援策が策定されることになる。
道路交通安全法の修訂草案は、自動運転機能の作動中に発生した交通違反を企業側が処理するという、新たな責任分担を提案している。ただし、草案は初回審議の段階にあり、内容がそのまま成立・施行されると決まったわけではない。
2030年に向けた目標の実現には、自動運転システムの安全性を確認する試験制度、事故発生時の調査方法、企業と利用者の責任分担、通信インフラ、サイバーセキュリティーを一体として整備する必要がある。中国は、産業の普及目標と法制度の構築を並行させることで、自動運転車を実証段階から大規模な利用へ移行させようとしている。
元記事: China Makes Automakers Liable for Self-Driving Crashes in New National EV Policy