「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」S4第8話、GO-24が問う命令と責任

2026年9月12日 13:25

2026年9月10日にParamount+で配信された「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」シーズン4第8話「Orders of Magnitude」は、宇宙艦隊の「一般命令24号(GO-24)」を物語の中心に据えた。500万人の連邦入植者を殺害した遮蔽艦を追うリーガー提督は、その艦をかくまっている可能性があるとして、約5000人が暮らすアーガスIIの全生命を破壊するよう命じる。ジェームズ・T・カーク中佐は、正規の指揮系統と多数の生命を守る責任の間で選択を迫られる。

本話は、上官から認証済みの命令を受けたとき、個人はどこまで自ら判断すべきなのかという問題を描く。同時に、遮蔽された宇宙船の放射を追跡する発想や、地下環境で通信が遮られる設定など、現実の科学を連想させる要素も物語に組み込んでいる。

■GO-24が突き付ける集団処罰の問題

GO-24は、宇宙艦隊の艦長に惑星上の全生命を破壊する権限を与える命令として描かれる。今回、リーガーは遮蔽艦の正確な位置も、アーガスIIの住民がその艦に協力しているかどうかも確認できない状態で、惑星全体を標的にする。

現実の国際人道法には、個人の行為を理由に、その責任を負わない集団を処罰することを禁じる原則がある。ジュネーブ第四条約第33条は、保護される者を本人が犯していない行為について処罰することや、集団罰を科すことを禁止している。集団処罰の禁止は、国際的・非国際的な武力紛争に適用される慣習国際人道法の規則としても位置付けられている。

架空の惑星間社会に現代の条約をそのまま適用できるわけではないが、住民への報復を目的として惑星全体を破壊するGO-24の構造には、集団処罰の禁止と重なる問題がある。さらに、軍事目標を特定せず、民間人を含む惑星全体を攻撃する命令として見れば、攻撃対象を区別する原則とも衝突する。

GO-24が初めて言及されたのは、1967年の「宇宙大作戦」第23話「A Taste of Armageddon」だった。カークは、エンタープライズの乗員を処刑しようとするエミニア7に対し、拘束された一行が解放されなければ惑星を破壊すると通告した。このとき命令は実行されず、相手を交渉に引き戻すための威嚇として機能した。

「Orders of Magnitude」では、その命令が報復のための実行指示として使われる。リーガーにとって、アーガスIIの約5000人は、すでに奪われた500万人の生命と、将来起こり得る攻撃を前にした数字にすぎない。しかし、住民一人ひとりの関与を問わず惑星全体を処罰する判断は、数の比較だけでは正当化できないというのが本話の中心的な対立である。

■上官命令と個人の責任

本話で強い印象を残すのは、リーガーの命令だけではない。パイク船長ら上陸班は通信不能の洞窟に取り残され、カークは艦橋で孤立する。他の士官たちはリーガーの命令に疑問を抱きながらも、標的設定の準備を進めていく。

この構図は、上官の命令に従ったという事実だけでは国際法上の責任を免れないとするニュルンベルク原則IVを連想させる。同原則は、道徳的な選択が実際に可能だった場合、政府や上官の命令は免責の理由にならないと定めている。

もっとも、本話の乗組員が現実の国際法上の犯罪責任を負うと判定できるわけではない。ここで重なるのは、権威ある命令、組織内の同調、職務上の危険、個人の無力感が重なったとき、破局的な行為が通常の手続きとして進んでしまうという構造である。

カークの抵抗も、単純な反抗としては描かれない。リーガーには、バーダン虐殺で家族を含む500万人の入植者を失ったという背景があり、遮蔽艦による新たな被害を防ぎたいという目的もある。それでもカークは、住民を巻き込む命令を受け入れず、正規の指揮系統に逆らって第三の解決策を探す。

題名の「Orders of Magnitude」は、科学では10倍、100倍、1000倍といった数量の桁の違いを意味する一方、「命令」を表すordersとの掛け言葉にもなっている。500万人と5000人という数字の差だけでなく、命令に従うことと、その命令がもたらす結果に責任を持つことの隔たりを示す題名となっている。

■遮蔽艦を放射から追う発想

作中では、視覚や通常のセンサーから姿を消した遮蔽艦が、ガンマ線の痕跡を残していることが追跡の手掛かりになる。これは、物体そのものを直接捉えるのではなく、動力源や推進系が環境に残す放射から存在を推定するという発想である。

現実の宇宙船がどのような高エネルギー放射を出すかは、エネルギー源や推進方式によって異なる。物質と反物質の消滅ではガンマ線を含む高エネルギー粒子が生じ得る一方、核融合で発生する放射の種類や量は反応方式や装置の構造に左右される。そのため、強力な宇宙船が必ず追跡可能なガンマ線を放つとは限らない。

それでも、外部から入る特定の電磁波を回り込ませる遮蔽と、艦内で発生したエネルギーや廃熱が外へ出るのを防ぐことは別の問題である。稼働中の装置は最終的に熱を排出する必要があり、その放射は探知の手掛かりになり得る。作中のガンマ線追跡は、宇宙空間で動力を使いながら完全に存在を隠す難しさを示す補助線になる。

現実のメタマテリアル研究では、人工的に設計した構造によって、特定の方向や限られた周波数帯の電磁波を物体の周囲へ導く実験が行われてきた。マイクロ波領域で散乱を減らした例もあるが、その性能は周波数、方向、物体の大きさなどの条件に依存する。本話の遮蔽技術には、どの波長から隠すのかによって探知方法が変わるという現実の研究と共通する発想がある。

一方、ガンマ線の痕跡が時間とともに物理的に「減衰する」という説明は、慎重に受け取る必要がある。真空中を進む光子は、物質との相互作用がなければ時間だけを理由に消失するわけではない。点状の放射源から広がる放射の強度は距離の二乗に反比例して低下するため、遠ざかるほど検出しにくくなる。作中の切迫感は、痕跡そのものの消滅というより、放射が広がり、背景信号との区別や位置の推定が難しくなる状況として捉えると分かりやすい。

■コルドラジンが変える判断能力

ムベンガ医師は、架空の薬剤コルドラジンをリーガーのコーヒーに混ぜ、過量投与による精神症状を引き起こす。コルドラジンは「宇宙大作戦」の「The City on the Edge of Forever」にも登場し、過量投与を受けたマッコイが錯乱する展開に使われた薬剤である。

コルドラジンを実在する特定の薬物群と同一視することはできないが、同じ薬剤でも投与量によって治療作用と有害作用が変わるという構造は、現実の薬理学に通じる。エピネフリンやノルエピネフリンなどのカテコールアミンは救急医療で用いられる一方、過剰なアドレナリン作動性刺激は頻脈、高血圧、不整脈、興奮、錯乱などを引き起こし得る。

ただし、薬物によって現れた言動を、その人物が以前から抱えていた本心や精神状態の直接的な証拠とみなすことはできない。薬物は判断力、知覚、感情の制御そのものを変化させるからだ。本話で重要なのは、リーガーの「隠された本心」が医学的に暴かれたことではなく、カークとムベンガが危険な手段を使ってでも指揮権を止めようとした点にある。

二人の行動は、多数の住民を救うための策である一方、本人の同意なく薬物を投与し、判断能力を失わせる行為でもある。命令への服従を拒んだ側も、目的のために倫理的に問題のある手段を選ぶ。本話は、カークを完全に潔白な英雄として描くのではなく、時間のない状況で不完全な選択を迫られる指揮官として描いている。

■洞窟が通信を遮る仕組み

上陸班が閉じ込められた洞窟では、結晶質の岩盤によって通信と転送装置のロックが妨げられる。現実でも、地下では岩石や土壌による吸収、反射、散乱に加え、トンネルの形状や障害物によって電波が大きく減衰する。鉱山などの地下施設で通信網や中継設備が必要になるのも、このためである。

ただし、結晶を多く含む岩盤が、それだけで導電性の囲いであるファラデーケージのように振る舞うとは限らない。信号の減衰は、鉱物の電気伝

元記事: Strange New Worlds S4E8: General Order 24 Is, Under Geneva Law, War Crime Authorization

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