NASA、アルテミスII船長らをエメリタスに 有人月飛行で得た知見を次期ミッションへ

2026年9月12日 09:33

NASAは9月9日、アルテミスIIで船長を務めたリード・ワイズマン氏と、操縦士を務めたビクター・グローバー氏が、同月中にテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターでエメリタスに移行すると発表した。両氏は現役の宇宙飛行士から退く一方、有人月飛行と宇宙船オリオンの運用で得た経験を、後続ミッションに携わる宇宙飛行士、管制官、技術者へ引き継ぐ。

■アルテミスIIの経験を組織に継承

アルテミスIIは2026年4月1日に打ち上げられ、月の裏側を回る有人飛行を経て、4月10日に米カリフォルニア州沖へ着水した。有人宇宙船が月付近を飛行したのは、1972年12月に帰還したアポロ17号以来、約53年ぶりだった。

乗組員はワイズマン氏、グローバー氏、NASAのクリスティーナ・コック氏、カナダ宇宙庁のジェレミー・ハンセン氏の4人で、スペース・ローンチ・システム(SLS)とオリオンによる初の有人飛行を実施した。約10日間のミッションでは、深宇宙環境でオリオンのシステムや生命維持機能、航法、通信などを検証した。

NASAのエメリタス制度では、高度な技術的・専門的知識を持つ元職員が、専門コンサルタントとして時間を提供し、現役職員の訓練や指導を支援する。参加者はNASAとの関係を維持しながら、外部で別の活動に取り組むこともできる。

NASA長官のジャレッド・アイザックマン氏は、両氏が困難な有人宇宙飛行ミッションに取り組み、米国を再び月周辺へ送り届けることに貢献したと評価した。そのうえで、2027年のアルテミスIIIとそれ以降のミッションに向け、両氏が宇宙飛行士、管制官、技術者に経験を共有し続けることへの期待を示した。

■ワイズマン氏はアルテミスIIIを支援

ワイズマン氏は、特にアルテミスIIIに向けて自身の飛行経験を共有する。アルテミスIIIは2027年に地球低軌道で実施する計画で、オリオンと米国企業が開発中の有人月着陸システムとのランデブーおよびドッキング能力を実証する。

アルテミスIIIの乗組員には、船長のランディ・ブレスニク氏、操縦士で欧州宇宙機関所属のルカ・パルミターノ氏、ミッションスペシャリストのアンドレ・ダグラス氏とフランク・ルビオ氏が選ばれている。ボブ・ハインズ氏がバックアップ要員を務める。

ミッションでは、SLSで4人を乗せたオリオンを地球低軌道へ打ち上げ、機体の点検後、Blue OriginとSpaceXが開発する着陸船の試験機の一方または両方との接近・ドッキングを試す。システム間の接続、ソフトウェア、推進、通信などを統合した状態で検証し、月面着陸を計画するアルテミスIVに先立って技術上、運用上のリスクを減らす狙いがある。

ワイズマン氏は、「この機関以上に働くのにふさわしい場所はなく、ここで働く人々以上にすばらしい仲間はいない」と述べ、エメリタス制度を通じて将来のミッションや計画への貢献を続けられることを喜んだ。

■グローバー氏はオリオンの知識を次世代へ

グローバー氏は、オリオンとその宇宙船システムに関する知識を、将来のアルテミス計画へ引き継ぐ。また、航空宇宙、リーダーシップ、公共奉仕に関する活動をNASAの内外で支援する。

グローバー氏は9月1日付で、母校であるカリフォルニア・ポリテクニック州立大学サンルイスオビスポ校の常勤の管理職に就いた。大学の学長や幹部に助言し、長期戦略、研究・教育分野の連携、外部とのパートナーシップなどに取り組むほか、科学・技術・工学・数学分野を目指す学生を後押しする役割も担う。

グローバー氏は同日付で米海軍を退役した。大学での職務と並行して、NASAのエメリタスとして宇宙飛行に関する知識の継承を続ける。

同氏は、「新たな役割へ進むなかでも、NASAと宇宙飛行は、奉仕を続けてきた私の歩みにおいて意味のある一部であり続ける」と述べ、仲間たちが月を目指す取り組みを支援していく考えを示した。

■月面着陸を目指すアルテミスIVへ

アルテミスIIIで予定される地球低軌道での実証は、2028年初頭を目標とするアルテミスIVに向けた準備となる。アルテミスIVでは、4人の宇宙飛行士がオリオンで月軌道へ向かい、うち2人が有人着陸システムに乗り移って月の南極域へ降下する計画である。

ワイズマン氏とグローバー氏の役割は、アルテミスIIで得られた実際の有人飛行経験を、こうした後続ミッションの訓練や運用設計へつなげることにある。シミュレーションや無人試験で蓄積した技術情報に加え、乗組員が深宇宙でオリオンを運用した際の判断や経験を共有することで、NASAはミッション間の知識の連続性を確保する。

ジョンソン宇宙センターの宇宙飛行士室長スコット・ティングル氏は、両氏のプロ意識、冷静なリーダーシップ、NASAへの献身が組織を強くしてきたと述べた。エメリタスへの移行後も、両氏が築いた運用面での実績は宇宙飛行士部隊に影響を与え続けるとしている。

元記事: NASA Names Wiseman, Glover Emeritus: Only Orion Deep-Space Crew Since Apollo Joins Artemis III

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