JPモルガン、メタ株を「強気」に引き上げ AIエージェント「Muse」を評価
2026年9月11日 10:01
米金融大手JPモルガンは、米メタ・プラットフォームズの投資判断を「中立(ニュートラル)」から「強気(オーバーウェイト)」に引き上げ、目標株価を820ドルとした。広告事業を支えてきたAI技術が新たな事業の創出にもつながると評価する一方、AIインフラへの巨額投資がキャッシュフローを圧迫する可能性も指摘した。
JPモルガンが10日付のリポートで投資判断を引き上げたと、CNBCなどが報じた。820ドルの目標株価は、メタ株の9日終値653.69ドルを約25%上回る水準である。
今回の判断には、メタが相次いで発表したAI製品が影響した。同社は8日、個人向けAIエージェントアプリ「Muse」を発表した。Museは同社のAIモデル群「Muse Spark」を基盤としている。
メタは前週、基盤モデルの最新版「Muse Spark 1.3」も公開した。JPモルガンのダグ・アンムス・アナリストは、これらの動きを、メタがより幅広いAI製品戦略を展開する初期段階とみている。
アンムス・アナリストはリポートで、「メタは最先端モデルや広告以外のAI製品を投入する初期段階にあり、特にAIエージェントのMuseとMeta Model APIへのアクセスには、なお大きな上昇余地があると考えている」と述べた。
Museに対する利用者の初期反応もJPモルガンの注目を集めた。アンムス・アナリストによると、Museは提供開始翌日に米アップストアで一時3位に上昇した。初期の利用水準は、開発時の学習対象グループの10倍に達しているという。
Museは質問に回答するだけでなく、利用者に代わって作業を実行する個人向けAIエージェントとして設計された。メタによると、電子メールの送信や旅行の予約、フォームへの入力などに対応し、利用者の許可が必要になるまでアプリを閉じた後も作業を続けられる。
こうした機能により、メタは、複数の手順を伴うデジタル作業を自律的に処理する「エージェント型AI」の競争に本格的に参入することになる。
アンムス・アナリストによると、メタは現時点でMuseの収益化を優先していないが、無料と有料のサブスクリプションを用意している。JPモルガンは、AIエージェントがデジタル経済を支える主要な基盤になれば、長期的に巨大な事業機会が生まれるとみている。アンムス・アナリストは、潜在的な市場規模が将来的に数十兆ドルに達する可能性があると推計した。
一方、この事業機会には巨額の支出が伴う。メタのAI製品が普及するほど、モデルの学習や推論処理、将来的に数億人規模となる可能性がある利用者へのサービス提供に必要なコンピューティング能力も増大する。
JPモルガンは、AIインフラと計算能力への投資により、メタのフリーキャッシュフローが2027年と2028年にそれぞれ年間650億〜750億ドル(約10兆~約11兆5000億円)の赤字に陥る可能性があると予想した。ただし、この予想には、メタが開発中のAI製品から得る可能性のある収益は含まれていない。
MuseやAPIアクセス、そのほかのAIサービスが大きな売上高を生み出せば、財務状況は大きく変わる可能性がある。
メタは、AIの収益貢献を得るために、必ずしも新規事業を確立する必要はない。同社がフェイスブックとインスタグラムを中心に築いた広告事業も、AIによるコンテンツ推薦の改善や利用時間の拡大、広告システムの効率向上から引き続き恩恵を受ける可能性がある。
アンムス・アナリストは「コンテンツ推薦と利用者の関与度の改善、広告のターゲティングと検索精度の向上、AIによるコンテンツ制作など、AIを活用した取り組みによって、主力の広告事業にも依然として大きな成長余地があると考えている」と述べた。