テスラの運転支援「FSD Supervised」がEU6カ国に拡大 10月にも域内承認を判断

2026年9月10日 12:55

スロベニアで、米テスラの運転支援システム「Full Self-Driving(Supervised)」(FSD Supervised)が承認された。EU加盟国ではオランダ、リトアニア、エストニア、デンマーク、ベルギーに続く6カ国目となる。テスラはスロベニアでの提供を近く始めるとしている。

一方、EU全域での承認を巡っては、法定速度を上回る走行を許容する機能や運転者監視のあり方について、加盟国間で見解が分かれている。EUの自動車技術委員会(TCMV)による判断は2026年10月に見込まれているが、具体的な投票日や結果は確定していない。

■オランダの暫定承認を基礎に6カ国へ拡大

欧州での展開の起点となったのは、オランダの車両認可当局RDWが4月10日に出した暫定的な型式認可である。EU規則2018/858の第39条は、既存の規則に適合しない新技術について、少なくとも同等の安全性と環境保護を示すことを条件に、欧州委員会の承認を求める手続きを定めている。

欧州委員会による判断が出るまで、認可した加盟国は自国内で暫定的に使用を認めることができ、ほかの加盟国もその認可を自国で承認できる。リトアニア、エストニア、デンマーク、ベルギー、スロベニアは、この仕組みに基づいてオランダの認可を受け入れた。

RDWによると、FSD Supervisedの認可に先立ち、1年半を超える評価が行われた。RDWはテストコースと公道で3000時間以上、1000回を超える試験を実施し、FSD Supervisedを搭載した車両が欧州で走行した180万km分のデータも評価したとしている。試験には都市部の複雑な交通、さまざまな道路、厳しい気象条件が含まれたという。

FSD Supervisedは、操舵、加減速、車線変更など複数の運転操作を支援するが、車両を自律走行させるシステムではない。利用中も運転者が周囲を監視し、必要に応じて直ちに操作を引き継ぐ責任を負う。車内のセンサーは運転者の視線や引き継ぎ態勢を監視し、注意が不十分な場合には警告を出す。

スロベニアでは承認が発表された段階であり、利用者への提供は今後始まる予定だ。承認国の中には地理的につながっていない国もあり、未承認国を通過する間はFSD Supervisedを利用できない。

■安全性を巡るデータはテスラとRDWが提示

RDWは、テスラから提出されたデータの収集方法と統計分析を確認するとともに、独自の試験データを用いて評価したとしている。その結果、FSD Supervisedが適用される要件を満たすと判断し、オランダ国内で暫定的に有効な型式認可を付与した。

テスラも、安全性を説明するためのデータや評価方法を公開している。同社は、FSD Supervised使用中の走行と、同システムを使用しないテスラ車の手動運転を比較し、衝突率や自動緊急ブレーキの作動率などを示している。

もっとも、こうした比較値はテスラが収集・集計した自社車両のデータに基づく。走行した道路の種類、運転者、車両の年式、走行環境などが比較対象間で完全に同じとは限らないため、単純に人間の運転全般との差を示すものではない。安全性を評価する際には、集計方法や比較対象、衝突の定義も合わせて見る必要がある。

RDWは認可後も路上での性能を監視し、テスラに定期的な報告を求めるとしている。EU域内で利用国が増えれば、異なる道路や気象条件におけるデータも蓄積されることになる。

■速度超過を許容する設定にスウェーデンが反対

EU全域での承認を巡る具体的な争点の一つが、FSD Supervisedの「Speed Offset」である。この機能は、運転者が設定した範囲で、システムの上限速度を標識上の制限速度より高くできる。

スウェーデン運輸局は4月30日付でTCMVに送った書簡で、自動化されたシステムが法定速度を継続的に超えることを許せば、法制度と車両自動化に期待される安全上の効果を損なうおそれがあると指摘した。同局は、テスラが速度超過機能を削除しない場合、EU全域への導入に反対するよう勧告している。

スウェーデン運輸局の担当者は6月、同国が賛成するには速度超過機能の削除が必要との認識を示した。ただし、TCMVでスウェーデンを代表する別の当局は当時、協議を継続し、正式な立場を検討中だとしていた。

フィンランド運輸通信庁Traficomも、オランダの暫定認可を基に独自の評価を進めている。Traficomは、特にフィンランドの道路・気象条件における安全性を検討し、テスラやオランダ当局などと協議しているが、承認の可否はまだ決めていない。

■フランスは速度と運転者監視を問題視

フランスのフィリップ・タバロ運輸相は7月、FSD Supervisedには技術的な進歩があると評価する一方、現状のまま承認するには安全面の条件が十分ではないとの考えを示した。

フランスが挙げた懸念は、周囲の交通の流れに合わせて法定速度を上回る可能性があることと、都市部の複雑な場面で運転者の注意を十分に確保できるかという点である。交差点、ラウンドアバウト、車線変更などが具体例として示された。

フランスはオランダやほかの加盟国、テスラとの技術協議を続けているが、EU全域での承認に賛成するとは表明していない。イーロン・マスクはフランスの判断を受け、承認の遅れは人命の損失につながると主張したが、これはテスラ側の見解である。

■EU全域での承認には特定多数が必要

EU規則に基づく承認には、加盟27カ国のうち少なくとも15カ国が賛成し、賛成国の人口がEU総人口の65%以上を占める特定多数が必要となる。スロベニアを含む現在の承認国だけでは、この人口要件に達しない。

EU全域で承認されれば、第39条に基づく適用除外が全加盟国で有効になる。一方、承認が得られなければ、オランダが出した暫定認可は所定の期間後に失効する可能性があり、それを基礎として認めている各国の扱いにも影響する。このため、否決後も現在の国内承認が無期限に維持されるとは限らない。

審議では、FSD Supervisedの運転支援性能そのものに加え、法定速度を守る設計、運転者の注意を維持する仕組み、各国固有の道路・気象条件への対応が検討対象となる。10月に見込まれるEUレベルの判断に向け、テスラが速度設定を修正するか、各国の懸念にどのような追加資料を示すかが焦点となる。

元記事: Tesla Full Self-Driving Clears Six EU Nations: Speed-Offset Fight Could Kill October Vote

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